第3話 はぐれもの
「ルシアス様は、どうしてこんな時間に、こんな場所に?」
可愛らしく首を傾げ、彼女はそう尋ねる。
「剣の鍛錬に来てんだよ。」
「剣、ですか?」
今度は不思議そうに首を傾げる彼女。
魔法学園の生徒なのに、剣を鍛える俺が謎なのだろう。
「授業は魔法ばっかで、つまんないだろ。」
「確かに……そうかもしれませんね。基礎的で簡単なことばかりですし。」
自分と同じような感想を持っていた生徒がいたことに嬉しくなり、思わず頬が緩む。
「お前は、なんでここに?お友達に会いにか?」
「それもありますけど。主には魔法の練習に。授業だけでは物足りないので。」
彼女はにこやかに、少し皮肉めいた顔で微笑む。
散々学校で魔法まみれなのに、物足りないなんて相当な物好きなのだろう。
せっかく同士だと思ったのに、さっきの共感を返せ、というようにぶっきらぼうに言葉をはきだす。
「昼にやりゃいいだろ、寮の庭とかで。」
寮の庭は広く、放課後はそこで魔法の訓練をする生徒も多いはずだ。
「人目が気になるんですよ。すごい魔法持ってるって知られたら、恨まれそうで。」
彼女は淡々とそう述べる。
決して自意識過剰ではなく、自分の力を的確に把握した結果なのだろう。
「ただでさえ、男爵令嬢ってだけで目をつけられているので、あまり目立ちたくないんです。」
これもまた、淡々と述べる。
身分差の意識がはっきりしている学園では、肩身の狭い思いをしているのだろう。
悲観的ではなく、ただ事実としてそれを受け入れている様子は、やはり子どもらしくなく、素直に強い奴だな、と思った。
「めんどくさいな、お互い。」
彼女の置かれている状況が、どこか自分と似ているようで、思わずそう呟く。
すると彼女は小さく笑みをこぼしながら、悪戯っぽく言葉を返した。
「はぐれもの同士ですね、お互い。」
彼女の叩いた軽口に、少し驚きを覚えた。
一応王子である俺に対して、ここまでまっすぐに、はぐれものだと言ってきた人はこれまでいなかっただろう。
陰でこそこそ言われるのが当たり前だったからか、彼女の放った正直な言葉が不思議と嬉しく感じた。
「言うじゃねーか、おい。」
「事実でしょう?」
「一応王子だぞ、こちとら。」
「ふふっ、失礼しました、王子様。」
こちらをからかうように笑う彼女は可愛らしく、楽しそうだった。
俺自身も、きっと楽しかった。
彼女との会話は、思いの外心地のよいもので、もっと彼女を知りたいと、素直にそう思った。




