私がしたのです
急いで一階へと降り、取り乱すアルカディアの面々を宥める。
「落ち着いて! 大丈夫だから!」
「子爵、光が、家が、これは一体、何が!」
ザイルが指差す天井を見れば、空いていた屋根がちょうど閉じる瞬間だった。
ここまで慌てるザイルを見るのは初めてだ。護衛の間はいつも冷静沈着だった。
「ザイル、落ち着いて」
「落ち着いてとは――待て、なぜ子爵様はそんなに冷静なのだ?」
妖精の話は極力したくない。それなら言い訳は一つしかない。
「私が家を修理しました」
「いや、しかし――」
「私が! 家を修理しました」
「は、はい……」
ザイルは納得していないが、これ以上は尋ねない判断をしたようだ。
念のために懐から金貨を取り出すと、アルカディアの一人一人の手に握らせ圧を掛ける。
「他言無用で。外部の人に漏らしたら、追いかけて問い詰めますからね。どこへでも……」
「そんなに脅さずとも、依頼人の秘密を漏らすことはない」
ザイルが金貨を返そうとするが、断る。
「途中、護衛対象も増えた分よ。これはその追加も兼ねていると思ってちょうだい」
「それなら、ありがたく」
外に出ると、ティアたち全員が呆然と立っていた。それもそうだ、領主の館は先ほどとは全くの別物に見えるのだから。ドクロのような外見から一転、立派な石造りの佇まいになったものを見上げる。まだほんのり淡く光っていて幻想的だ。
正気に戻ったティアが、駆け寄ってくると小声で尋ねる。
「妖精様ですか?」
「妖精様ですね……」
カルとティア以外には、私の仕業なので安心してほしいと伝える。
アントンとマイルズを一瞥する。たぶん、この中で一番納得していないのが二人だと思う。二人はオリビアが魔力の少ない貴族だと陰口を学園で叩かれていたのを知っているはずだから。
しばらくはアントンとマイルズに妖精の存在を明かすつもりはない。二人の今回の旅路の働きは完璧だったと思う。それでもティアやカルと比べれば繋がりと信頼度が違う。これから培い、時が来たら知らせられるといいと考えている。
両手をパンと叩き、全員の注目を集める。
「さて、家も住めるようになったので、今日は中で休むことにしましょう。家具はあまりないので、とりあえず一番大きな部屋に全員で泊まりましょう」
次々とみんなが領主邸に入っていく中、アルカディアが外で野営の準備を始めた。
「我々は万一の事態を期し、本日は野営する」
護衛の期間は領主邸に到着してからも数日雇うという話だった。
「よろしくお願いするわ。あと、無事に領地まで送り届けてくれてありがとう」
「……はい。こちらも感謝しています」
きっと他の貴族は礼などしないのだろう。子爵になり領主になったからこそ、礼節を重んじる人間でありたい。相手が経緯を払う相手であれば……だけど。
その日は、一番広いリビングルームで雑魚寝した。アントンとマイルズはそんなことをしたら私の貞操が疑われると頑なに拒んだので、一階にある小さな部屋に移動した。




