大所帯
アントンに耳打ちをする。
「勝手に子供を街から連れ去って問題はないの?」
「親のいない子供なので問題はないかと。孤児院に身を寄せていたわけではないようですし、ローゼリアの街の住民と登録されていないと思います」
「そうなのか……ありがとう」
まぁ、文字の読み書きができるだけでも何か仕事は与えられるだろう。
子供たちに視線を合わせ尋ねる。
「これから行くのはド田舎なんだけど。商売とか商人とかとりあえず二の次よ。街で過ごしたほうが、正直いろいろと働き口の機会はあると思うのだけど」
「なんでもする! ソフィとアイシャも言って」
緑の髪の子の後ろで隠れていた一回り小さい子たちが顔出す。
「する!」
「しゅる!」
あーあ、可愛いな。心の中でため息をつく。仕方ない。
「分かったわ。とりあえず衣食住は約束しましょう」
「はい!」
三人の子供たちが喜びながら手を上げる。
「それで、あなたたちの名前はなんていうの?」
「私はシャーロットです。シャルと呼んでください。それで、こっちがソフィアとアイシャです」
緑の髪のシャーロットは他の二人よりも数年お姉さんだ。ソフィアは大人しそうなこげ茶の髪色の子で、アイシャも同じ髪色の女の子だった。二人と目が合う。ああ、この二人、双子なのか。よく似ている。
「シャル、ソフィア、それとアイシャね。私はルナヴィル子爵よ。自己紹介もしたところで、馬車に乗る前に綺麗にするわね」
ディーネに頼み、三人の全身洗濯をしてもらう。シャーロットは驚きながらもうれしそうだったが、双子は涙目になったので心が少々傷んだ。
シャーロットによると、双子の母親は女児の双子を産んだことで家を追い出され、細々と生活していたが少し前に亡くなったという。
「それでシャルが引き取っていたの?」
「孤児院に連れて行ったら、双子は別々に引き離すっていわれたから……」
平民の一部はまず経済的に余裕がない。聞けば、双子は不運の迷信を信じている者たちは女児の双子は捨てることもあるという。孤児院はきっと双子を別々に育てて引き取り手を探したかったのかもしれない。
ティアに耳打ちをする。
「双子の男の子だった場合どうなるの?」
「片方を里子に出すみたいですね」
ティアが言葉を選んだので、ストレートに尋ねる。
「金銭で?」
「……はい」
借金と犯罪以外の奴隷は禁止されたんじゃなかったの? 名目上は里子になるから目を逸らされているのかもしれない。良家に引き取ってもらえるならいいけど、労働のためだけの奴隷扱いだとつらい。
その晩、私、カル、ティアと子供四人で馬車の中で睡眠をとった。
夜中一人目覚め、辺りを見回しながら独り言を漏らす。
「私、領主になりに辺境に行くのよね? なんでこんな子持ちになっているのか……」
子供は好きでも嫌いでもない。責任はもちろん持つけど……美香時代ではアラサー独身だったのに、今は十八にもなっていない時点で大所帯の柱だ。
「まぁ、これも運命なのかも……」
悪役令嬢が辺境で子供たちとスローライフって……選択肢とは一番いいわね。
ああ、眠い……。
あくびをしてからすぐに眠りについた。




