売り込み
ザイルと目を合わせ、もう一度子供たちの寝顔を確認する。
「ローゼリアの街にいたストリートチルドレンよ」
「どこかで忍び込んだようだな」
アントンが青い顔をしながら頭を下げる。
「子爵、申し訳ありません。私が確認を怠ったせいで」
「明らかに巧妙に隠されていたハッチだから、気にしないで」
ハッチの中には手錠が埋め込まれていた。たぶん誘拐した人を閉じ込めていたのだと思う。まったく、面倒な馬車を押し付けられた……。
ザイルが困った顔で尋ねる。
「この子供たちはどう対処する?」
「困ったわね。今からローゼリアに戻るのは無理ね」
時間もお金も掛かる。領地までまだあと十日以上もある。
馬車を一つ増やしたことで、アントン、マイルズ、それかティアへの負担は大きくなっている。そんな中、一週間のロスになるローゼリアに戻る選択肢はない。あと、私の体力がたぶん持たない。
眠ったままの子供たちを見つめる。一緒に入っている麻袋には、大量のパンとほぼ空の革の水筒が入っていた。
しかし三人ともよく寝ている。普通、これだけ人に見られていたら目が覚めない?
ザイルが子供の肩を揺らす。
「おい、起きろ」
「ん――あ……見つかったか」
緑の髪の子供が舌打ちをすると、他の子も目を擦りながら起きた。
「見つかったか、じゃないでしょ……あなたたちは何を考えているの?」
「頭を使って這い上がれと言われた。だから、あの街から出てお姉さんについていくのが一番、その近道だと思ったんだ」
「よくも知らない人間にそう簡単に自分の身を委ねるのはやめなさい。こんな何もない場所に捨てて置かれたら子供三人でどうするの?」
「でも、《《子爵様》》はそんなことしないでしょ? 私たちだってちゃんと調べたんだ」
へぇ、確かに調べはついているようだ。
この子供を何もない荒野にポイ捨てすれば、死亡コースであり……そんなことはできない。この子供、結構侮れない。
この見通りの髪の子は、自分の情報網を使い、私の泊まっている宿を見つけたという。そこから二日ほど私を見張ったという。その中で、私が子爵だということ、領地に向かっているということを調べあげたようだ。
私がエリアスという子供を連れていることと、使用人に対して家族のように接していることから、こっそりと旅に同行しても途中で打ち捨てられないことを確信したという。荷馬車には出発の前日の深夜から乗り込んだそうだ。
窮屈な場所に閉じ込められていたにしては、子供たちからは特に異臭などしない。
「トイレとかどうしていたの?」
「ああ、この下がトイレ用に開くんだ。これは昔の奴隷用の荷馬車に似せて作られていたからすぐに分かったんだ」
「なんでそんなに詳しいのよ……」
聞けば、緑色の髪の少女は、元は王都に商会をもつ商人の娘だったという。親は両方とも強盗に襲われ同時期に亡くなったという。その後、遺言がなく叔父夫婦が商会を引き継ぐと、少女は馬車馬のように働かされたので、家出をしてローゼリアの街まで辿り着きストリートチルドレンになったそうだ。
商売のことは親に数年習っていたらしく、読み書きもできるとのこと。馬車のハッチのことも、父親が一度仕入れたアンティーク馬車についていたのを覚えていたという。
どうするか考え込んでいると、少女が自分を売り込み始める。
「私は役に立つと思う。読み書きもできるし、商売の基本も知っている。この二人にも今読み書きを教えている」
少しの沈黙の後にティアとカルを見れば、言葉を発さないものの子供たちを心配しているように見えた。
クルクルと飛び回るディーネたちに尋ねる。
(ディーネとダンは始めからこの子たちが馬車に乗っているのを知っていたのよね? どうして何も言わなかったの?)
(捨て置いても問題ないチビどもじゃ)
(その子たちかくれんぼうって言っていたから! オリビアに教えたらズルになるでしょ?)
妖精と人の感覚を同じと考えたらダメだね。




