パンツの穴と空飛ぶベッド
また異世界に放り出された。ここは、、化外の村だ。こっちの時間で40年は経過している。多少なりとも村の作りが変わっている。俺が送り込んだ今井などはもう死んでいるか?それを考えると改めて復讐してよかったと思った。
早速自分にバニシングをかけてみる。こんな世界はまっぴらごめんだからな。トンズラここう。「バニシング」。。。効果がない。服すら消えない。「バニシング」。もう一度かけてみる。無駄だった。頭を空っぽにしてみた。バニシング。効果なし。
「おい井上聞こえるか?逃亡は失敗したようだな。」
途方に暮れていると、俺の行動を全て見透かしていたような田中からの念話が入った。こっちの世界では隠す必要がないからモールス信号ではない。こちらからの通信も可能なようだ。
「田中ぁ。俺は何すればいいんだよ。時空の歪み?なんてどうやって探せばいいんだよ。ダウジングでもして探せってことなのかよ。」
「自由度の高いオープンワールドのRPGだぞ。もっと喜べよ。」
「ヒントくれる村人Aもいないんだろ?ムリゲーじゃねえかよ。いや、クソゲーか。」
「化外使いは引ひきつけ合う。」
「なんじゃそりゃ。漫画かよ。」
「いや、お前の直感で構わないからいろいろなところをウロウロしてみろ。きっとお前なら結界の解れを発見できるはずだ。」
「時空なのか結界なのかどっちかはっきりしてくれよ。」
「とにかくパンツに空いた穴を塞いでくれればいいんだよ。同行者もつけているから何とかしてくれよ。」
田中からの念話が途絶えた。結局ノーヒント。このオープンワールドをあてもなくさまよわなければならないのか。絶望に暮れていたら後ろから声を掛けられた。
「久しぶり。」
「その声は、ロリババア!」
「40年ぶりなのにひどい物言いじゃの。」
エルフの長老は以前分かれた時の姿そっくりそのままだった。さすが長命のエルフ族である。
「ここ40年のこの世界の発展は素晴らしいぞ。聖人様は居なくなってしまわれたが、その代わり良質な人材が次々と送り込まれての。どの村も街も笑顔が絶えず、皆幸せに暮らしておる。」
俺が暗殺した奴らだ。やはりもともと高レベルだけあって相当優秀なんだ。俺以前は自然死した奴を女神が適当にピックアップしていただけで、選別していなかったのか。女神は無能なんじゃないか?いや、それよりも元いた世界の観点で考えると、奴らを失ったことは社会として相当な損失なのでは?日本は大丈夫なのか?
「ん、また考え事か。何か企んでおるのか。」
長老に声をかけられてはっとした。
「いや、こっちの話だ。それより長老はこれからどういう冒険しなきゃならないか聞いているのか?」
「あらかた聞いている。あてもない、終わりなき旅じゃろ?高ければ高い壁の方が上った時気持ちいいぞ?」
「なんじゃそりゃ。J-POPかよ。パンツの穴を塞げだとよ。なんかヒントとかもらっていないのかよ。」
「なにもないよ。まあ、わしはお前の寿命が尽きても生きているからな。行旅死亡人見届け役ってところかな。とりあえず知り合いのところをあらかた聞いて回ったらどうじゃ?」
「そうだなぁ。時空に穴をあけるのは相当な魔力を必要とするからな。魔力が大きいというと、魔王かな。あいつ元気なの?」
「条約はまだ生きている。この40年間何の変化もない。今はエマニュエーレ公と名乗って大人しく自国領に閉じこもっておるよ。」
「じゃ、とりあえず第一目的地は魔王の城だね。徒歩だと骨がおれるな。」
「バニシング使えばいいじゃん。」
「それがこの世界から逃げようとして自分にかけてみたんだけど、無理でさ。」
「そこをハックするのがお主の真骨頂じゃろう。試しにこの石に身体を結び付けてバニシングしてみろ。」
長老にロープを手渡された。無駄だろうな、と思ってやってみた。石に引っ張られて、身体が浮き上がった。
「田中の無効化能力も結構ガバガバじゃねーか。これを応用して魔王城まで行こう。おい、ロリババア、良いベッドはないか。」
「お前、ロリババアって普通に使うな!年上のお姉さんと言え!」
長老は持っている杖でポカポカと叩いてきた。ロリボイスと合わさって、これはこれでアリだな。
「ところで何でベッドなんだ?」
「そんなの決まってるだろ。寝っ転がって楽して行きたいじゃん。」
長老は俺の心を読んでいる顔をした。
「何嘘ついてるんじゃ。お前は元の世界で煩悩に支配されてしまったようじゃの。」
「いや、ベッドに一緒に横になるだけだから。添い寝するだけだから!何もしないから!ソフレになってください!」




