コンプラの価値観
「お前、敵前逃亡を企てたよな?お前の役割はマサユキを食い止めることだって言ったよな?五木さんがいたから良いものを・・」
俺は田中から説教を受けていた。受けている最中も拳銃を突っ込まれたケツ穴がジンジン痛む。時折ケツの穴を押さえようとすると、田中から「喝!」と言われた。俺は禅寺修行してるわけじゃないんだけど。
「はい。聖人様のおっしゃる通りでございます。」
俺が立たされて田中の説教を受けている間も、金子とさやかは同席していた。奴らにとっては異世界の話だからどうでもいいのだろう。ソファに座って適当に聴いていた。さやかなんかはスマホをいじっている。
田中の魔法の威力を目の当たりにして、完全に俺はパワハラ上司に従わざるを得ない社畜に成り下がっていた。
「女神様には、マサユキが片付いた報告と同時にお前の事も報告しといたから。で、女神様からは一度こっちに帰って来いとのお達しだ。」
田中のその言葉を聴いて、金子がソファから立ち上がった。
「田中様、井上さんはまだこっちでやってもらう仕事が沢山あります。ちょっと、今すぐ行かれてしまってはこちらとしても困ります。」
金子ぉー。ありがとう!こっちの世界のコンプラはパワハラが許されるはずないよな?俺を守ってくれるよな?しかし、田中が金子の言葉を遮った。
「金子さん、金子さんには井上を有効活用してもらって本当に感謝しています。ですが、実は今回の事件で新たな事実が発覚したのです。化外問題とでも言いましょうか。あのゾンビマサユキが異世界の魔物をこちらの世界に召喚していたのです。これに我々は早急に対処しなければなりません。」
「それはこちらにはあまり関係ないことでは?」
頑張れ、金子!
「いや、大アリですよ。異世界魔物がこちらに来たら普通に社会は大混乱します。それはあなた方の仕事には関係ないかもしれませんが、異世界魔物がその姿のままこちらに来られるということは、今までにあなた方が送り込んだ魂たちが、肉体が無くてもこちらに帰ってこられるということです。それはマズいですよね?」
金子は返す言葉がなかった。論破されてしまったか。田中は続ける。
「それに、向こうの世界の時間の進みはものすごく遅い。井上を連れて行っても、こちらの時間ではものの数時間でこちらに戻せますよ。」
それを聞き、金子はニカっと笑った。それとは対照的に、さやかは非常に不機嫌な顔をしていた。
とにかく俺はまた女神の所に連行だ。生きて帰ってこれる保証は田中がしてくれたが、信じられない。ああ、人生。もっとしたいことがあったよ。オフィスの階段でのセックスとか。。




