スウィート・ホーム
深夜2時、俺と田中は板橋区の住宅街にあるマサユキの実家の前にいた。俺たち二人の後ろには金子が編成した6人のコマンド部隊が待機している。それに加えてなぜかさやかもいた。
「おそらくこの家の中には人間や動物を問わずマサユキが実験で作ったゾンビがウヨウヨいるだろう。動くものがいたら容赦なくM16をぶっ放せ。」
田中は軽い訓示が終わるとドアの方へ踵を返した。
「鍵開けなんてその道のプロがいるんだから問題ないだろうが、たまには俺の魔法を見せてやるよ。」
そう言って「アンロック」と唱えた。ドアは「カチャ」と音を立て、解錠された。6人のコマンド部隊に続いて俺たちが室内に入る。2人ずつバディを組み、各部屋を制圧していく。
「一階便所、クリア」
「リビング、人型一匹、獣型一匹、鳥型一匹、制圧。」
「風呂場、クラゲ型、制圧。」
インカムで次々と情報が入る。俺たちは風呂場に入った。むせ返る様な湿気と獣臭に吐き気がした。クラゲ型と言われたゾンビは、浴槽の中でスライムの様に潰れていた。それを確認した田中が呟いた。
「これはこっちの世界のものじゃないぞ。異世界のモンスターだ。あいつ、こっちの世界にいながら逆転送に成功してやがる!」
「それはマズいのか?」
「ああ、激ヤバだ。詳細は省くが、向こうの世界で言うところの化外だ。一階には化外はコレだけだが、2階は用心したほうがいい。」
「うわぁぁ!」
田中が言葉を終える前に、インカムから悲鳴が聴こえた。2階に向かった第一班のものだ。ここである考えが俺に浮かんだ。
「相手が化外ってことは、俺がバニシングを使って元の異世界に戻すことは正しいことだよな?」
田中は少し考え込んだ。そして小さく頷いた。
「むしろ善行と言っても過言じゃないよな?女神に褒められるよな?」
「いや、調子乗るなよ。使ってもいいけど、マサユキには絶対当てるなよ!」
「わかった。」
俺たちは残り2班と共に2階へ向かった。階段からしてモンスターだらけだった。ゾンビに混ざって、向こうの世界で見かけたモンスターもいる。そいつらにはあまり銃が通らないようでコマンド達は苦戦していた。
「じゃあ俺らの出番だな。」
ゾンビはコマンドに任せ、田中は即死魔法で、俺はバニシングで化外達を殺し、消していった。大分数が少なくなったところで、奥の部屋が「バン!」と音を立てて開いた。遂にラスボスの登場か?
「その魔力、そのバニシングは鈴木のものだな?」
声は紛うことなきマサユキだ。マサユキと思われる肉塊は、腐敗した脂肪と体液を滴らせながら、ゆっくりとこちらに向かってきた。死後の腐敗が進行し、体内の細菌がガスを生成することで膨れ上がっていた。ガスが体内に溜まり、皮膚は張り裂けんばかりに膨張していた。体液は分解され、皮膚や筋肉が腐敗して垂れ下がり、歩くたびにその腐った肉片が揺れ動いた。彼の目は濁り、口からは腐敗した息が漏れ出し、周囲に不快な臭いを漂わせていた。その姿はまさに悪夢のようで、見る者の心に深い恐怖を刻み込んだ。
「おい、鈴木ぃ。俺を元の世界に戻せぇぇ。」
異世界で獣系や虫系のモンスターは見慣れていたが、アンデッド系とは対峙したことはなかった。映画で見たゾンビとは似て非なるものだった。死体清掃業務で死体もたくさん見たが、これほどドロドロのものはなかったし、ましてや動いている。しかも俺を目指して向かってくる。マサユキが一歩一歩近づくたびに、その恐怖は増していき、逃げ場のない絶望感が押し寄せてきた。
「いや~!」
俺は女が襲われた時のような悲鳴を上げて逃げようとしたが、その刹那背中に銃口を突き付けられた。
「お前、情けない真似するなよ。」
さやかだった。
「え?え?」
狼狽する俺をよそに、さやかが俺のズボンを下した。そして、尻穴に銃口をねじ込んでマサユキに啖呵を切った。
「おいゾンビ。お前こいつに恨みがあるんだな。そうなんだな。」
「あ、なんだてめえ。ぶっ殺すぞ。」
「お前、こんな小物に執着してバカじゃないか?ただのオッサンだぞ?いや、ゴミみたいなやつだ。ゾンビのお前の方がハリウッドみたいでカッコイイじゃないか。見ろよ、こいつのこの情けない姿。」
「は?カッコイイ?」
マサユキは若い女に思いもよらない言葉を投げかけられ、呆気に取られていた。しかも目の前にはチンポを丸出しにした情けない俺の姿がある。マサユキは動きを止めた。
「お前こいつが必要なんだろ?この変態男が。尻穴に銃口ねじ込まれて、いつ鉛玉撃ち込まれるのか分からないのに喘ぎ声上げてるんだぞ。お前のことなんて眼中にないんだ。こいつにとって大事なものは、今この瞬間の快楽なんだ。」
俺の身体は、さやかが言う通り、自動反応していた。未知のゾンビを前にしてもなお、ケツにぶち込まれた銃口に前立腺が自動反応していた。腰が自動的に動き、ケツアナに挿入されたの異物を求めていた。いつの間にかフニャチンはフルボッキし、カウパーが溢れていた。
俺がアヘっている姿と、女の言葉と、この状況にマサユキは完全に混乱していた。
「田中ぁ、準備できたか!?今だ、やれ!」
その瞬間、さやかの後ろから田中が飛び出した。手には魔王の砦で手に入れた派手な杖を持っていた。
「ホーリーライトニング!」
刹那、光の柱が天井を突き抜け、マサユキを貫通し、一階の床まで破壊した。地面に焦げ跡が残った。
ビームの貫通によって縦に穴が開いたマサユキは完全に動きを停止、続いてドロドロとすべての腐肉や骨が崩れ落ちた。マサユキは、死んだ。
ケツアナでアヘアへ言っていた俺も銃を引き抜かれ、我に返った。そして、田中の魔法の威力に戦慄した。




