(299) 堀北さんサポート
◇◇◇ ジム ◇◇◇
時刻は14時。
オレは、七瀬ボルダリングジムの
入り口前に立っている。
ここは堀北さんが通うジムである。
そう堀北さんのサポートに来たのだ。
試合は明日。
糞の役にも立たないオレだが、
応援団長として何もしない訳にはいかない。
何よりも堀北さんへ『手伝いに行く』
と宣言したのだ。
オレがここに居る最大の理由である。
ジムに来たのはオレ1人だけ。
嫁とクルミちゃんは家で
TikTokを撮影するんだとさ。
おそらくオレに気を使ったのだろう。
本来なら嫁も『一緒に行く』と言ってたはず。
だが、今日は見学ではない。
なのでTikTok撮影すると言い出したのだ。
オレは顔を見上げ、看板を改めて拝見する。
なんだか懐かしい。
ここがハルキの原点だったような気がする。
夏休みの前の出来事が懐かしい。
さて、中へと入りますか。
ドアを開け、中へと入ると。
後輩2人が並んで立ってて、
オレに気付き目が合う。
向こうからの挨拶はない。
えーっと。
オレも声を掛けられない。
だって、『何しに来た?』
って目で攻撃してるのだから。
その後輩とは、オレを敵視する美沙と優香。
この2人とは一生仲良くなれない自信がある。
彼女らが見ていた先には、壁の頂点。
そこに堀北さんがいた。
堀北さんもオレに気付き降りて来る。
こちらは笑顔。
オレのモヤモヤが晴れる瞬間である。
オレは後輩を居ない者として
堀北さんへ挨拶する、
「手伝いにきました」
「細倉くん、ありがとう」
「凛心先輩は私達がサポートします。
そっちで見学しててください」
美沙が割り込む。
オレに関わらせたくないのは理解できる。
それが先輩に対する言葉か?
まぁいいけどよ。オレは寛大だ。
そんな言葉で動揺はしない。
オレは、背負っているリュックから
タブレットを取り出し、3人に見せる。
「前回、撮影した堀北さんの練習風景を
これに保存してきました」
「だから何なのよ」
美沙が意味あるの?と挑発する。
いいアシストだ。
「アプリを作ってきました。
今回の練習を撮影すると、前回との動きを
AIが比較して指や腕、足など身体の細かな動きの
違いを検出してアドバイスするというものです」
どうだ?
オレは、美沙にドヤ顔でマウントをとる。
「他の選手のデータも保存してきたので
比較できます」
オレが見据えているのは、
ライバルである藤沢選手との格差。
堀北さんは怪我でここ1年全力を出せてない。
更に、夏休み中のほとんどを手術の
リハビリに費やしている。
その間、技術が伸びてないよりも
劣化している可能性がある。
オレは試合で藤沢選手と互角に戦って欲しい。
というかそれを見たい。
そこで考えたのがAIで補うというもの。
身体の動きをAIで分析させ
過去の自分、他の選手との違いを
アドバイスさせるという方法を考えたのだ。
今のオレには金がある。
なんでもできる。
「細倉くんすごい。それ使ってみたい」
だろ?
堀北さんがそう言ってますけど!
お二人さん、オレを排除できます?
「2人も遊んでないで自分のことやりなさい」
後輩ちゃんの方が用済みだとさ。
勝った!
メッチャメッチャ嬉しい。
「彼女達のデータもないの?
一緒に分析できないかなぁ」
明日が試合だというのに後輩の心配かよ。
そんな堀北さんだからオレは好きなんだ。
後輩が堀北さんを慕う理由も理解できる。
「もちろんデータはあります」
しょうがねぇな。
可哀想だからキミ達にも使ってやるよ。
「キミ達も撮ります。
今後に役に立ててくれたら嬉しい」
後輩ちゃんと目が合うと。
「エッチ!」
だとさ。
あぁ、面倒くせぇ。
その後は、
彼女らの練習風景を動画に取りAIで分析。
AIの指摘結果を元に調整していくのであった。
ただし、AIの結果は鵜呑みにできない。
だって個人差があるから。
特に堀北さんは、選手としては亜種だ。
他の選手には真似ができない。
だから堀北さんは他の選手の参考に
しづらいし、逆もしかり。
なので、堀北さんは過去の自分との比較をして
調整する方向で進めた。
♪ピコ
スマホにメッセージが届く。
確認すると詐欺師の件である。
例の詐欺師が練馬に出現したとの報告。
素晴らしい。
都内に入ればこっちのもの。
オレは監視を続けるよう返信する。
逃がさん。
念のため、レミのスケジュールをLineで確認。
レミを詐欺師に会わせて、詐欺を認めさせ
レミの分の金を奪い返そうという計画だ。
Lineが既読になり、即レスが来る。
本日の18時以降はオフだという。
素晴らしい。
レミと詐欺師が会えるタイミングは少ない。
今日、会わせられるなら決行したいところ。
オレは、レミに詐欺師を見つけたことを報告。
18時にオレと合流できないか相談。
OKをもらった。
ついでに夕飯でも食わせてやるか。




