(298) クルミちゃん自由になる
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
時刻は朝8時10分
オレは、教室の自席に座り、
瞑想しているところ。
今日はテスト最終日。
午後は堀北さんのジムへ行き
明日の試合に向けて、練習の
お手伝いをしに行くつもり。
それを理由に堀北さんの座席へと行き
会話したい。
同じ部活メンバーでクラスメイトでも
あるにも関わらず、
堀北さんの所が遠く感じる。
堀北さん、ノノン、レンの3人が
仲良く会話してる光景が眩しい。
オレも輪に加えさせてくれ!
突然、オレの背中に悪寒が走る。
それは鬼軍曹の登場。
オレは急いで英語の教科書を手元に出し、
勉強するふりを始める。
しかし、軍曹殿は相変わらず機嫌が悪そう。
怒られないようにしなくては。
オレは何もしてねぇ。
なぜ、こいつに気を使わねばならんのだ。
意味分からん。
ここでガツンと言って、
立場をはっきりさせておかないと。
卒業まで鬼軍曹に怯えて生きることとなる。
彼女へと視線をもって行く。
「何?」
オレの視線に気づいたのか、睨みつけてきた。
ガツンと言ってやるぞ!
・・・
オレは無言で視線を英語の教科書へと戻す。
「キモ!」
帰りたい。
こんな世界消えればいいのに。
あ!
センター長の面談があるんだ。
消そうと思えば消せるね。
って、面談のことを思い出したら
お腹いたくなってきた。
早く帰って、マイナスイオンを
注入しないと精神が崩壊する。
◇◇◇ 廊下 ◇◇◇
午前中のテストが完了し帰宅の時間。
オレは教室の前の廊下に立っている。
そして、部活メンバーが出て来るのを待っている。
「細倉くん」
最初に現れたのは堀北さんだ。
早くジムに行くため飛び出して来たのだろう。
明日から試合だというのに
今週はテスト期間もあって、ろくに練習ができてない。
今日の午後で、どこまで調整できるかってところだろう。
「ジム行くんでしょ?
早く行って!
みんなには伝えておくから」
「細倉くん、ありがとう。助かる」
「お昼食べたら、オレもジムいきますから」
「無理しなくていいからね」
そう言って、堀北さんは去って行く。
彼女の後姿はカッコいい。
明日の試合には堀北さんをライバルと
宣言した藤沢選手も出場する予定だ。
いわば全国大会の前哨戦って言っていいだろう。
怪我からの復帰による初試合でもある。
そんな状況で逃げずに進み続ける
堀北さんが好きだ。
彼女の背中には希望しか感じられない。
オレもそんな背中を
見せられる男になりたい。
その後は、カイ、ノノン、レンと
いつものメンバーが集結。
彼らは鈴木君を含めた4人で
カラオケにてテスト終了祝いをするんだって。
まぁ、理由は何でもいいのだ。
彼らは集まって、騒ぎたいだけなのだから。
ということで、
オレは1人で帰宅することとなった。
◇◇◇ 白川宅 ◇◇◇
「おかえり」
いつものように玄関で
嫁が出迎えしてくれる。
はやく、オレを充電してくれ。
靴を抜き、急いで廊下に上がる。
そして、お待ちかねの充電タイム。
「ねぇねぇ、タイマー鳴ったよ」
フライ返しを持ったエプロン姿の
クルミちゃんが廊下に顔を出す。
んだよ。出て来んじゃねぇ。
察しろ!
「今行く、ひっくり返しておいて」
「はぁ~い」
ということで、充電は御預けとなった。
リビングに入ると料理が並べられてある。
何だ、これ?
見たことない料理だらけ。
「本日のメニューは、お好み焼き、ナムル、
トマトとモッツァレラのカプレーゼ、
中華スープとなっております。
全部、クルミが作ったんだよ」
「クルミちゃん、凄いね。
見栄えがいい。美味しそう」
関心するのは嫁の方だけどね。
どんだけレパートリーあるんだよ。
テーブルに料理が揃い。
「いただきます」
オレ、嫁、そしてクルミちゃんの3人で
仲良く昼食をとることに。
ノノンの分は作ってない。
学校からいらないと連絡してあったから。
クルミちゃんはスープから飲む。
「美味しい。クルミ天才」
ハイハイ、あなたは天才です。
そして、話題はノノンのことに。
「ノノン姉ぇの彼氏ってどんな人?」
レンは彼氏なのか?
「クルミちゃん、見たことあるよ。
先週のコンサートにも居たし」
「えぇ、どの人?」
「レンって人、覚えてない?」
「レン?金髪の人?」
それはカイだよ。
「一番背が高かった人」
「イケメンの人だ!
いいな、いいな、
クルミも彼氏が欲しい」
そういう話は女子会でやってくれ。
♪ピコ
スマホにメールが届く。
オフィス前田の認証システムからであった。
確認すると、クルミちゃんの認証登録が完了し、
自由に発着室マンションから
出入りできるとの連絡であった。
前田の奴、仕事が早いな。
完成は来週だったはず。
めずらしくオレが怒ったから
焦って作業を急がせたのだろう。
「クルミちゃん、自由にニーナに乗り移れる
ようになったって。
今、連絡が届いた」
「やったぁ。好きに外出していいの?」
「いいけど門限は20時まで。
オレ、ノノン、瑞樹のだれかと
一緒なら門限は無しとします。
ただし、お母さんが見舞いに来てる日は利用禁止ね。
これを守れるなら自由に使って構わない」
「守れます守れます。何でも守ります」
ほんとうかぁ?
「今日、やり方を教えるから
夜一緒にやってみよう」
「分かりました」




