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(296) 恥ずかしい動画

◇◇◇ ホテル ◇◇◇

時刻は20時


PMCの車でホテル前へと到着。

ホテルの入り口には1人の女性が立っていた。

嫁だ。

PMC車に気付き嫁が後部座席へと近づく。

扉を開けると。


「おかえりなさい」

「ただいま」


ちょっとひんやりする。


「外、寒いでしょ?

 中で待ってればいいのに」

「私も今来たところ」


笑顔が可愛すぎる。

このシチュエーション。

もう少女マンガじゃん。

オレと嫁はスマホでお互いの位置を把握できる。

そろそろ到着するから外に出たのだろう。


「ノノンちゃんから聞いたよ。

 病院に行ってたんだって」


しまった。

ノノン奴、嫁にどこまで説明してる?

アイドルと2人きりだったのは確実に言ってるよな。

浮気はしてませんから。

あなた以外で好きになる人なんて

存在しませんから。


アーツファクトリでの仕事が最後だったこと。

そこでレッスン中のアイドルが倒れたこと。

オレが病院へ運んであげたこと。

事務所のマネージャーが来るまで

看病していたこと。

オレは必死に説明する。


嫁はオレの言葉を疑うと思われたが、

クスクスと笑っている。

真逆の反応で、かえって怖い。


「そんな細かく説明しなくても。

 ハルキがまた危ない目にあったんじゃないかって

 心配しただけ」


オレの身を心配してくれたのかよ。

胸が締め付けられる。

ヤバい、泣きそう。

オレは表情を見られまいと嫁に抱き着く。

そして、耳元でささやく。


「心配してくれてありがとう。

 白川さんが心配するようなことは

 もうしないよ」


嫁も強く抱き返す。

思い返すと嫁には心配ばかりかけてた。

病院でオレが連行されて3日間連絡が

取れなかった時、どんな心境だったのだろう。

今になってあの頃のことが申し訳なくなった。


「もう1人にはしないから」


今の彼女はAIだ。

この瞬間の出来事は本物には記憶されない。

それでもいい。

例えAIだとしても白川さんを幸せにする。

これがオレの目的だから。

そして、本物が目覚めたときは

1から恋愛をやり直すんだ。


ふと、ボディーガードと目が合う。

気まずい。恥ずかしい。

急に現実に戻された。


「部屋に行こうか」


嫁は身体を密着させ腕組みをする。

ロビーに出ると周囲がオレ達を注目する。

メッチャメッチャ恥ずかしいんだが、

嫁が自ら見せつけているのだ

止める訳にはいかない。


エレベーターで最上階に行き

いつものスイートルームへと入る。


「どう?セクシー?」

「あははは、それヤバいって」


クルミちゃん?

パンツ見えてますよ。


部屋に入ると、リビングで

ノノンとクルミちゃんがはしゃいでいる。

どうやら日中に買った服で

ファッションショーをしてるようだ。


「博士、お帰り」

「おう」


ノノンには素直になれないオレ。

テーブルにはピザやらお寿司の

食べ残しが並べてある。

どうやら夕飯はルームサービスらしい。


♪グルグルグル


食べ物を見たら急にお腹が空いてきた。


「これ余ってるの?食べていい?」

「ハルキ、夕飯食べてないの?」

「食べる時間がなかった」


ノノンが割り込む。


「私達、お腹いっぱいだから

 全部食べちゃって」


ノノンの確認は不要。

寿司から食い始めると。


「クルミちゃん、デザートどうする?」

「メニュー見たぁい」

「抹茶のパンケーキ美味しそうだよ」


お腹いっぱいじゃねぇのかよ。


瑞樹(みずき)ちゃんは何にする?」

「私はもういいです」


そうだよ。嫁を見習え!

お前ら絶対デブるぞ。


♪ピコ


スマホにメッセージが届く。

PMCからのようだ。

詐欺事件の件で、

どうやら犯人を特定したとのこと。

仕事が早いな。

もう見つけたのかよ。


オレは病院で、

カード明細をPMCに送っていたのだ。

そして先々月、その店を出入りする人物を

チェックさせたところ要注意人物として

データベースに登録してあった

人物が引っかかったという。


名前は不明だが女性だ。

続けて、監視カメラに映る鮮明な

彼女の横顔が送られて来た。


杉本!

オレは彼女を知っている。

というか過去にオレも騙された1人。

こんなところで出会うとは。

面白くなってきた。


彼女が現在どこにいるか確認させたところ

埼玉方面だという。

PMCの監視は都内限定。

都内から抜けられたら見つけられない。


念のため、レミに確認してもらうよう

Line で杉本の写真を転送する。

すると返答は、自由が丘のお店で

この店員が会計したとのこと。


ビンゴ!


間違いない。こいつが犯人だ。

PMCへ彼女をマークするよう伝える。

都内に入ったら御対面だ。

田中の姿で彼女の前に現れたら

どんな顔をするか楽しみになってきた。


「博士、さっきからスマホで

 何してるんです?」


ノノン!

嫁が居る前で変な事言い出すな。


「仕事だよ」

「本当?怪しい。

 ニヤニヤしてたけど」


「本当に仕事だ」

「じゃぁ画面見せてよ」


やばい。

レミとのLineを見られたら疑われる。

速攻でLineアプリを閉じて

写真フォルダを開く。

そして、適当なファイルを開く。

その間、コンマ数秒。

神業と言っていい。

オレって別の才能あるんじゃね?


ノノンに画面を見せる。


♪瑞樹ちゃん、朝でちゅよぉ~


スマホからオレの音声が流れる。

どういうこと?

嫁とクルミちゃんは、スマホ画面を見て

ハニカミの様子。

どうやら開いたファイルは

写真じゃなくて動画だったらしい。

画面を確認すると、嫁の寝顔映像。


あの時のかぁ。

最悪。


「はいはい、ラブラブですね」


ノノン、せめて笑いにしてくれ!

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