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(295) レミその後

◇◇◇ 病院 ◇◇◇


レミというアイドルが事務所の

ダンススタジオで倒れた。

診断結果は起立性低血圧。

疲労、水分不足、食事不足から

起きるとされている。

彼女の場合、主な原因は食事不足であった。

てっきりダイエットなのかと

思っていたら違うようだ。

お金がなくて、ここ2日間、

食事が取れなかったという。

その原因は


「詐欺に引っかかりました」


話を聞くとカード詐欺に遭ったのだそうだ。

それは身に覚えのない50万円の請求。

指輪の購入だとさ。


請求先のお店を調べたら実在しており

詐欺店ではないとのこと。

だが、そのお店には一度も入店したこともなければ

ネット通販で購入したこともないという。


なるほど、状況は理解した。

さて、どうしたものか。


カード会社には既に連絡済みだが、

購入履歴があり売買は成立しているとのこと。

現在調査中ではあるが、

銀行から引き落としはされてしまった。

それによって、先日現金が底を突いたという。

明後日には事務所から給与が支払われるので、

ここ2日間は水のみでガマンしていたようだ。


大食いの子だという印象は

まったくの勘違いであった。

差し入れを持ち帰って

食費を節約していたのだ。


笑顔で元気な彼女の印象から

そんな被害に遭っていたなど

微塵も感じなかった。

アイドルだからなのか、

夢を見せるアイドルとしては

プロ根性を見せつけられた気分。


「それなら事務所に隠す必要はないだろう?

 むしろ相談すれば守ってもらえる」

「心配掛けたくなかったんです。

 カード会社のミスかもしれないし。

 詐欺かどうかも確定してませんから」


身に覚えがないなら詐欺だろう。

人が好過ぎる。


「身に覚えがないのだろ?」

「そうなんですけど。

 大ごとにしたくなかったんです。

 これが世間に知れたらアンチから

 なんて言われるか怖いです」


確かに。

今のオレなら理解できる。

ファンは応援してくれるだろうが

世間はどう見るか予想できない。

嫁もSNSのアカウントが乗っ取られて

叩かれてたからなぁ。


カード会社で不正が確認されれば

お金は戻って来る。

ただ、このケースだと

不正が立証されるのは難しいぞ。

カード会社からしたら正しい取引だ。

むしろ彼女が嘘を付いてると

疑われてるかも知れない。


「その高額の取引日に別の店で

 カードは使ってないのか?」

「その日は現金のみで

 カードは使ってません」


なるほど。

探しようもないな。


「状況からしてカードがスキミング

 された可能性が高い」

「念のため、カードの利用は停止させました」


それは賢明だ。


「誰かにカードを貸したとか

 心当たりはないのか?」

「貸したことはないです。

 カードはほとんどネット通販でしか

 使わないんです。

 ご飯屋さんとかで、たまに

 使いましたけどチェーン店ですよ。

 チェーン店以外だと自由が丘の

 アクセサリー屋さんで買い物はしました」


それは怪しい。


「自由が丘では、いつ使ったの?」

「50万購入日の二日前」


メッチャ怪しい。


「何てお店?」


彼女はスマホでお店の

ホームページを見せる。


「ここです。ちゃんとしたお店ですよ。

 前からありますし、

 今も普通に営業してます」


確かにパッと見、不正をする

お店には見えない。


「先々月のカード明細って自宅にあります?」

「スマホで見られます」

「もし良かったら、3カ月分の

 明細書をダウンロードして

 オジサンに送ってもらえないかなぁ」


「どうされるのですか?」

「知り合いに、調査できる専門家がいるので

 調べてもらおうかと。

 もしよろしかったら、だけど。」

「なら是非、お願いします」


ということで、この後、

彼女とLineを交換し明細を入手。

何か情報を掴んだたら直接伝えることにした。

このことは事務所には内緒。

他言しないと約束を交わしたのである。


そして席を外し、アーツの事務所に連絡。

診察結果を報告したのだ。


「マネージャーに迎えに来てもらう

 ことになったから。

 それまで、ここで休んでよう」

「ご迷惑をお掛けしました。

 もう事務所の方ではないのですよね?」


「今日までだから、これが最後の仕事です。

 犯人を見つけられるか分からないけど」

「病院に運んでくれただけで十分です」


オレは、財布から1万円を取り出し、

彼女に差し出す。


「これで、ちゃんとした食事を取りなさい」

「ダメですよ。受け取れません」


彼女は拒否する。

だろうね。

出したお金は引っ込みづらい。

さて、どうしたものか。

『貸すから返して』と言ったら使わないだろう。


「なら1つだけ私の仕事を受けてくれ」

「どんな仕事ですか?」


>> あ~!博士、浮気してる


うわぁ~、幽霊!

斜め上空に幽霊が現れた。

ノノンである。


「どうされました?」


顔色が急変したオレを心配し、

レミが尋ねる。


「何でもない。

 ちょっと席を外します」


そう言ってオレは、診察室を抜け出し

病院内の人気の少ない場所へと移動する。


「幽霊で脅かすな」

>> 天使です


「で?なんだよ」

>>なんだよ、じゃないよ。

 夕飯、一緒に食べに行くんでしょ?

 来ないからどこに居るのか

 見に来たんじゃない


「ならスマホで電話してこいよ」

>>そっか

「そっかじゃねぇ」


>>まさか浮気ですか?

 瑞樹(みずき)ちゃんに言っちゃおう

「まて、ここは病院だ。

 周囲をよく見ろ!」


オレはノノンに状況を説明するのであった。

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