(292) どこから浮気?
◇◇◇ 発着室 ◇◇◇
時刻は朝7時半
ここは発着室。
昨夜は嫁、ノノン、オレの3人でホテルにそのまま宿泊。
部屋割は、オレが1人部屋、
嫁とノノンで相部屋となった。
まぁ、当然の流れだろう。
だが、深夜に嫁がまくらを抱えてオレの部屋へ。
その仕草、表情が言葉に表せられないカワイイさ。
ビーナスとは彼女のことを指すのだろう。
そんな姿を見せつけられたら受け入れるしかない。
結果、嫁は朝までオレの部屋で過ごしたのである。
これって浮気にカウントされるのか?
相手はAI、言い換えればラブドールのようなものだ。
後ろめたい気持ちはある。ってことはアウト?
AIはズルいよ。拒絶できんだろう。
既にオレの中では本物という認識だ。
はぁ~。
オレは携帯で時間を確認し、棺のパネルを操作する。
♪ウィーン
棺のフタが開き、金髪の美少女が目を開く。
「今日は時間通り。良い心掛けよね」
なんで、こいつこんなに上からなんだ?
そう、この少女はクルミちゃん。
ニーナの身体を使うので迎えに来たのである。
こいつを外出させるのに、いちいちオレが
ここへ来なければならないのは超面倒くさい。
「へぇ~」
クルミちゃんはオレを舐め回すように見る。
なになに?
ズボンのチャック、開いてます?
見られてると確認できん。
「学生なんだね?」
あぁ、オレの制服姿の反応かよ。
「制服カワイイ」
そうか?男子には不人気なんだが。
「朝からバカなこと言ってるんじゃない」
クルミちゃんは上半身を起こし
キョロキョロと周囲を見渡す。
どうした?
「あれ?ズッキー姉は?」
嫁を探してたのね。
「下(1階)で待ってる」
そう言うと、
クルミちゃんはオレの顔をマジマジと見る。
え!
鼻毛、出てます?
「意外とカッコいいね。
オジサンより、こっちの方がいいよ」
ふぅ~、焦らせるな。
「いいから早く着替えてこい」
「はぁ~い」
彼女は立ち上がり、仮眠室へと向かう。
◇◇◇ マンション前 ◇◇◇
マンション前にはいつものように
PMC車が待機していた。
ホテルから乗ってきたものだ。
オレとクルミちゃんは、マンション入り口から
外に出ると、それを確認したかのように
車の後部座席の扉が開く。
姿を現したのはノノン。
「おはよう、クルミちゃん」
ノノンは車から出て正面に立つ。
「ノノン姉ぇ、おはようございます」
クルミちゃんが頭を深く下げる。
挨拶してるよ。
こいつ、オレ以外にはちゃんとしてるなぁ。
「制服カワイイです。
ハルキと同じ学校なんですね?」
どうしてオレは呼び捨てなんだよ。
「でしょ?ノノンも気に入ってるの」
ノノンは後部座席の扉が閉まらぬよう
手で押さえ、車内へと案内する。
「クルミちゃん、乗って乗って」
言われるがまま、クルミちゃんが乗り込むと。
「おはよう」
「ズッキー姉ぇ、おはようございます」
後部座席の奥に嫁が座っていた。
「ノノンちゃんも乗るから真ん中に座って」
クルミちゃんは素直に従い
後部座席の中央へと座る。
それを確認し、ノノンも乗り込む。
「あれ?ノノン姉ぇも一緒?」
「違う違う、学校まで」
オレも助手席へと乗り込み
車は学校へ向かって走り出すのであった。
◇◇◇ 車中 ◇◇◇
「ノノン姉ぇの学校行くの?
どんな学校が見てみたい」
「たいした学校じゃないよ」
ノノンさん?
知らんだろうが、たいした学校なんですよ。
「クルミちゃんも学校通いたい?」
そうだよな。
ノノンの問いに気付かされた。
病気でほとんど学校に行ってない。
友達作って、学校帰りにカラオケとかに行きたいよな。
「じゃあ、クルミちゃんも学校行く?」
ノノン!お前にそんな権限ないだろ。
「いいです、いいです」
「博士が何でも叶えてくれるよ」
オレに振るな!
「ほんと、大丈夫です」
「遠慮しなくていいんだよ」
本当だよ。
行きたいならオジサン頑張っちゃうよ。
「クルミ、勉強嫌いだからいいです」
そんな理由かよ。
「あとコミュ障だし」
それはない。
「クルミちゃん、化粧してないでしょ?」
「してないよ。
若いんだから、しなくてよくない?」
嫁の問いだ。
オレもしなくていいと思う。
クルミちゃんのキャバ嬢姿を見たくない。
「メイクは可愛く見せるだけでなくて、
紫外線から肌を守ったり、
カサカサにならないようにする
役目もあるんだよ。
特に10代のスキンケアは大事」
「へぇ~」
ノノン!お前が関心してどうする。
「今日は化粧品買いに行こうか?
お姉さんがいろいろ教えてあげる」
「先生、お願いします」
どうやら今日の予定が決まったようだ。
「料理も教わるといいよ。
瑞樹ちゃんの手料理凄く美味しいから」
「ズッキー姉ぇが作ったの食べてみたい」
「じゃあ、お昼ご飯一緒に作ろうか?」
ということで、嫁とクルミちゃんで
昼ご飯を作ることとなった。
「ハルキはお昼どうする?
食べないで帰って来るなら用意しとくけど」
嫁の手料理を待ち焦がれている。
二度と食べれないかもって
覚悟していたところはある。
「もちろん、
学校終わったら飛んで来るよ」
「わたしも」
ノノンも直帰するらしい。
こりゃ、学校帰りが楽しみだ。




