(287) ガイヤ消滅の日
◇◇◇ 発着室 ◇◇◇
1年前のこと。
オレは、棺のある部屋から外の街並みを眺めている。
特に理由はない。
単に、この風景を目に焼き付けたいから。
しかし、見渡す限りに立ち並ぶビル群に
圧倒させられる。
何度見ても感動できる。
人類はよくまぁ、ここまで作り上げた
ものだと感心させられる。
もうすぐ、この星が。
いや、この宇宙が消滅しようとしている。
残念である。
だがオレにはどうしようもできない。
この宇宙は、オレの研究施設で作られた世界。
第一実験室で生まれ、
耐久年数を終えて廃炉を迎えようとしてる。
まさに今、時間を2000兆倍に加速させて
消滅させているころだろう。
本来ならばとっくに帰還していなければならない。
理由は、2000兆倍の加速に脳が耐えられるか
分からないからだ。
このまま研究室に戻ったら
灰人になっているかも知れない。
そんなリスクを背負ってまで
ガイヤ(地球)に留まっている。
バカだなオレは。
なっ!
なんだ?
急に、めまいがオレを襲う。
周囲が歪んで見える。
立ってられない。
踏ん張ろうとするも意識を失ってしまった。
◇◇◇ 研究室 ◇◇◇
次に気付いた時は、周囲がピカピカと光る
計測機器に囲まれた場所に居た。
オレはベッドで寝てて仰向けになっていた。
見るからに発着室ではない。
病院か?
だが見覚えがある。ダイブ室だ。
そう、オレの研究室内であることに気付く。
意識が研究室へ戻って来たのだ。
ゴーグルを外し、
周囲を見渡すと男女2名の姿を確認する。
彼らはオレの部下だ。
意識ははっきりしている。
記憶もある。
どうやら強制切断されて戻ってきたようだ。
オレの脳に異常はあるのか?
とりあえず、研究室のことも、
ガイヤでの思い出も記憶に残ってる。
自身の手の平を見つめ、グーとパーを繰り返す。
問題ない。どこにも異常はない。
ラッキーだ。
障害が無いまま生還できた。
オレはベッドから降りダイブ室を出ると、
男性研究員がオレに気付く。
「博士!大丈夫でしたか?
廃炉が開始されましたよ」
「あぁ、問題ない」
「もっと早く戻って来れなかったの?
もう心配させないでよ」
いつもは無関心な女研究員が半ギレだ。
オレの身を心配してのことだ。
「すまん。
やらなければならない事があって
戻るのがギリギリになってしまった」
「消滅するのに残る意味あります?
しかもギリギリじゃなくて、
思いっきりオーバーですよ」
確かにな。
「我々からしたら
ガイヤに残るのは無意味だろう。
時間加速させるとはいえ、
こことガイヤの進む時間が異なるだけで
向こうの世界では何も変わらない日常が進む。
お世話になった人もいるんだ。
投げ出すことはできなかった」
「そうだったんだ。
てっきり、ガイヤで恋人作って
帰りたくなくなったんだと思ってました」
「バカな事を言うんじゃない」
「痛っ!」
オレは、男研究員の頭をこつんと叩く。
「しかし、残念ですよね。
あんな星、2度と見つからないですよ」
そうかもな。
「あそこまで文明が発達して
これからなのに」
まったくだ。
「1度でいいからガイヤの
地に立ってみたかった」
「最後の日くらい慰安旅行でみんなと
行ってればよかったなぁ」
男研究員と会話を続けていたら
女研究員が割り込む。
「経済研からメッセージです」
どうやら、隣の研究室に来てくれ
との内容であった。
◇◇◇ 前田研 ◇◇◇
「よう、身体に異常はないか?」
何事かと、お隣の研究室に入ると
前田博士が声を掛けてきた。
オレと一緒にガイヤに留まった
もう1人のバカである。
こいつもこの場に居ると言うことは
強制的に帰還されたということだ。
「見ての通りだ。
お前も問題なさそうだな」
お互い無事でよかった。
で?
オレを呼んだ理由はなんだ?
「まさか、身体の異常を確認するために
ここに呼んだんじゃないよな?」
「第一実験室はほぼ冷え切っている」
そんなことは知っている。
既に確認済みだ。
もう、宇宙は死んでいる。
元には戻せない。
「そんな事を伝えるために
オレを呼んだのか?」
「ガイヤを復活させたくないか?」
はぁ?
「まったく笑えない冗談だ。
バカ話をするなら帰るぞ」
「落ち着け、真面目な話だ。
考えて見ろ。
どうしてオレ達は脳に障害が
残らないまま戻って来れたと思う?」
なぞなぞ?
「運が良かっただけだろ!」
「違うんだな」
バカにしているのか。
なるほど。
時間加速が開始される直前で
前田研の連中が通信を強制的に
遮断したってことか。
だから正常のまま戻れたってことね。
そんなことを伝えるために
オレをわざわざ呼んだのか。
感謝、しろってか。
「ガイヤを含む200億光年を取り出した。
時間停止させて保存してある」
はい?




