(286) 調査
◇◇◇ 研究室 ◇◇◇
男研究員が言うには管理室から
朝一に電話があり、オレを呼び出したそうだ。
例の件だな。それしかない
博士は休暇中である旨を説明したそうだが
とりあえず、この研究室に伺うという。
来るのかよ。
「状況を理解した」
センター長は現在、定例会議中。
時刻を確認するとあと10分で会議が終わる。
鼓動が高鳴る。もう来てしまう。
落ち着け!落ち着くんだオレ。
会議は、だいたい延長する。
早くて20~30分後になるだろう。
先手を打っておかないと。
「センター長にメッセージを
送ってくれないか?」
「嫌ですよ。どうして僕なんですか。
博士が送ってくださいよ」
ならばと女研究員に視線を移すと
目線を避けられた。
「今は休暇中だ。
オレが送る訳にはいかない」
「メッセージ送るくらい、やりなさいよ」
女研究員がオレをアシストしてくれた。
まぁ、自分が送りたくないからだけどね。
「あの人苦手なんですよ」
安心しろ。全員同じ気持ちだ。
「頼む、お前しかいない。
メッセージだってオレからの
伝言を送るだけだ。
大した話ではないだろ?」
「分かりましたよ」
ということで、男研究員がイヤイヤ
代行してくれることとなった。
センター長に会う時間を伸ばそう。
部活メンバーとお別れしたいから。
ガイヤの予定を思い返す。
週末は堀北さんの試合があった。
みんな集まるだろうから
会場でお別れが言えるし、
堀北さんの試合も観戦できる。
最高の締めくくりだな。
ガイヤの日付は火曜の夜。
試合は日曜日だから、
ざっくり5日ってところか。
となると、あちらの時間は、
『5日×24時間×60分』となる。
100分の1で、こちら側時間の時間にしたら
70分ってところか。
よし、それでいこう。
「70分後に空いている会議室を
予約してくれ」
男研究員は言われるがまま調べる。
「30名、部屋が空いてます。
ここで良いですか?」
広すぎる。そこに2人かよ。
いや、大勢来る可能性もある。
その時は、吊るし上げだな。
「もっと狭いところない?
2人部屋がベストなんだが」
「全て埋まってます。
30人部屋しか空いてないですね」
「じゃぁ、そこでいい」
「予約しました」
ということでメッセージの内容を考える。
『ジュン博士に連絡し、状況を説明したところ
70分後に研究室へ来ると返答されました
のでお知らせ致します。
会議室を取ってくれとのことで
1303会議室を予約しました。
70分後に1303会議室へ来て頂けば幸いです』
「この文面でいいですか?」
「OK」
「送りますよ?」
「いいよ」
「送りました」
よし。これで70分猶予ができた。
出来る事はやっておこう。
「ちょっと隣に行って来る」
そう言って、
オレは研究室を出たのである。
◇◇◇ 前田研究室 ◇◇◇
お隣は前田研究室。
研究員同士、仲が良い。
歩いて20歩くらいだろうか。
直ぐに到着。
前田研の入り口前に立つと、
認証カメラがオレの眼球を捕らえピントを合わせる。
♪プシュー
オレを待っていたかのように扉が開いた。
「ジュン博士殿!どうされました?」
研究員の1人がオレに近づく。
室内には2名しかいない。
「ちょっと調べたい事があって、
空いてる端末を使わせて欲しい」
他の研究チームが作業端末を
借りるなど通常はありえない。
この施設は世界各国から集結した
1000もの研究チームが、
極秘の研究を行ってる所。
例え研究室が隣だろうと何の研究を
しているかは明かさない。
だが、オレと前田は、ガイヤ(地球)を
ターゲットにして共同研究しているため
その点、お互い筒抜けなのだ。
室内を見渡すと、空いてる作業場所は6つある。
どこでもいいだろうと思いつつ。
「では、こちらをお使いください」
座り易く椅子を引いて、作業場所を示された。
「すまない。お借りする」
「調べものですか?」
それ聞く?
オレが、ここに来た時点で
何をしに来たか分かってるだろに。
「ガイヤの移動ログを採取しようかと」
「それなら既にまとめてあります」
おや?
おたくら仕事早いね。
「すごいですね。
どうやって採取されました?
ログの取得も監視されるけど」
まぁ、オレは今から
それをやろうとしてたんだけどね。
「ガイヤの移動作業中に、
裏で採取してました。
ログは、その時のものです」
「すばらしい」
いつの間に。
前田研の連中は優秀だな。
見ると、以下のデータがまとめられていた。
・操作ログ
・実験機の状態ログ
・実験機へのアクセスログ
・アラートログ
ログを確認すると、確かに一号機と二号機を
この研究室からアクセスしているのが記録されてる。
ログは消すことができない。
消したところで既に手遅れである。
特に、現行使われている二号機実験室が問題だ。
アクセスしてはいけない初期化時に
触ってるログが思いっきり記録されている。
しかも、この時はアクセス権限を持っていない。
なのに触っている。
終わった。オレの人生が終わった。
刑務所暮らしか。
「ジュン博士殿、どうされました?」
オレがモニタではなく、
何もない壁を見ていたから
心配で声を掛けてたのである。
「ヤバいね?」
ログを見た感想だ。
「ですよね」
共感してくれた。
「センター長には、どう説明されたのです?」
「これから面談するので、
状況確認しに来ました」
「なるほど」
そんな顔するな!
全てオレが悪いような雰囲気だけど
お前達も同罪だぞ。
オレが捕まったらキミ達も捕まる。
理解されてますぅ?




