(283) 学生って最高!
◇◇◇ 学校 ◇◇◇
時刻は8時10分。
「一緒に登校するのって新鮮」
「そうか?
たったの一週間ぶりだぞ」
オレとノノンは、一緒に並んで
学校の校門をくぐる。
友人にしてはノノンとの距離が近い。
仲良く会話する2人の姿は第三者からしたら、
まるでカップルかのように映るだろう。
オレもノノンもそんなことは気にしない。
むしろ時間差で車を降りて
登校時間をずらす方が面倒だ。
「家政婦さん雇えないかなぁ?」
どうした突然。
飯、作るの面倒なのか?
「白川さんから料理教わったんだろ?
自分で作れよ」
「作りますぅ。
料理じゃなくて掃除とか洗濯の話し」
「それくらい自分でやれよ」
「ずるい。
博士はヘルパーさん頼んでるじゃん。
ノノンの部屋は広いんだよ」
「広くない」
「えぇ~」
なんか学生って、いいな。
社会人は責任が重すぎる。
コミュニケーション1つで
仕事が左右される世界。
その重圧から解放され、今は肩が軽い。
なんという解放感だろうか。
学生最高!
卒業まで学生ってのもありだな。
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
「細倉!
美人の彼女がいるのに二股かぁ?」
教室に入るなり、オレとノノンを見て
クラスメイトの男子が茶化す。
そう言えば、オレと嫁のことは
全校生徒に知れ渡ってるんだったか。
忘れてたわ。
「バカじゃないの!
彼氏じゃありませぇーん」
ノノンが見下すように反論する。
強ぇなぁ。
対するはオレは、ダンマリのまま席に着く。
ああいうのは無視が効果的。
今週はテスト期間である。
教室内を見渡すと、みな自席で教科書や
ノートを広げ勉強している。
友達同士で話す者はいない。
オレは、特に勉強する気はない。
5分、10分勉強したところで
何も変わらないからだ。
ん?
背中を棒でつつかれる感触。
振り向くと、真後ろの須藤さんが
ペンの裏でオレを呼んでいた。
「細倉くん、微分教えて。
数学得意でしょ?」
彼女は数学の教科書を開いている。
だから数分勉強したところで無駄だって。
「なんで私、
理系選択しちゃったんだろう」
知らんわ。
数学はオレの得意分野。
しょうがない。
「微分は理屈を考えず
6パターンの法則を覚えとけば簡単に解ける」
「sin x を微分すると cos x になるとか」
「そうそう、それ。書き出してみ」
「流石!やってみる」
クラスメイトの男子4人がオレを囲む。
なに?なに?
「細倉ぁ!」
ハイ!何かしたでしょうか?
「お前の彼女、今週TikTokアップ
してないけど、どうしたんだよ」
「そうだよ。エロいコスプレ
楽しみにしてるんだから」
「おれも」
面倒臭ぇ。
「まさか、細倉が独り占めしてるんじゃ
ねぇだろうなぁ?」
「そうだよ。オレ達にも見せろ!」
こいつら、どうしたらいい?
「オレ達のズッキーちゃんとは
どこまで進んでるんだ?」
お前のじゃねぇ、オレのだよ。
「正直に言ってみろ!」
「まさか、もうやっちゃってるって
ことはないよな?」
可哀そうに。
現実を突きつけてやるか。
「うるさい!」
怒鳴られた。
声の主を確認すると、鬼軍曹が仁王立ちで立っている。
かなり、お怒りのご様子。
こいつの存在忘れてた。
ちょうど今、教室に入ってきたところらしい。
「そういうの。外でやってくれない?」
鬼軍曹はオレをにらんでる。
ちょっと待て!
オレは被害者です。
周囲の野郎どもは、なかったかのように
四方へと散らばり自席へと戻る。
「最低!」
と鬼軍曹が言い放ち
席に着くのであった。
帰りたい。
もう学校やだ。
オレは明日からニートになる。
ここに宣言する。
とはいうものの。
今を乗り切らないと。
さぁどうしよう。気まずい。
隣の視線が痛い。
きっと犯罪者を見るかのような
視線を送り続けてるはず。
オレは耐え切れず立ち上がる。
そして、堀北さんの元へ逃げるようにして移動。
真横にくると。
「細倉くん、おはよう」
堀北さんと目が合うなり、
掛けられた言葉だ。
鬼軍曹とはえらい違い。
癒される。
思い出したよ。
オレが望んだ学園生活がこれだ。
「ハルキ、
どうして昨日休んだんだ?」
堀北さんの前に座るレンが
振り向きざまに尋ねる。
「ずる休み」
真っ先にノノンが回答。
ノノンはレンの隣である。
「そうなの?」
堀北さんが驚き
「テスト中なのに勇気あるなぁ」
レンが感心する。
「ちょっと待て!
家の事情で休まざるを得なかったんだ」
話題を変えなくちゃ。
「いいな、ここの席。
オレもこの辺に引っ越したい。
誰か変わってくれない?」
堀北さんはクスクスと笑う。
オレの心境を察してるようだ。
「ハルキ!女子に囲まれて
ハーレムなんだから贅沢いうな」
レイの皮肉が炸裂する。
「バカ!声がでかい」
ちらっと自席に視線を向けると
鬼軍曹がオレをにらんでる。
だからオレじゃないって。
怖い。席に戻りたくない。
これなら社会人の方がましだ。
「どうしたの?
何か用があったんじゃない?」
堀北さんが、自分のところに来た理由を尋ねる。
軍曹から逃げて来ましたとは言えないな。
「今日は部活は無いんだっけ?」
「テスト期間中はないよ。
次は来週だね」
そうか。
来週までは学校行く必要あるのか。
トホホ。
「今週末、土日、堀北さん試合なの知ってる?
ハルキ、応援団だから試合見に行くよな?」
レンからの突然のお知らせである。
え!
もう、試合できるの?
手首大丈夫?
堀北さんと目が合う。
「部室では、みんなに伝えたんだけど。
細倉くんには言ってなかったね」
あの感動がまた味わえるのかよ。
「行きます。もちろんですよ。
応援団全員、強制参加にさせますから」
応援団はオレ1人だけどね。
堀北さんはクスクスと笑う。
座席が隣だったころを思い出す。
次の席替えはいつだ?
「今日、ジム行きますよ。
手伝います」
「ゴメン、テスト期間中はジム禁止なの」
だよね。そうだった。
テストは金曜日まで。
「金曜日の午後はジム行くでしょ?」
「もちろん」
「では金曜日、お手伝いします」
「ありがとう、彼女さんも連れてきたら?」
いやぁ、それは。




