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(281) 獄中生活になるかも

◇◇◇ MAEDAコンサル ◇◇◇

時刻は18時


オレは電話で前田に呼ばれ、

彼のオフィスへとやって来た。


奴がオレをオフィスに呼び出すときは

悪い話ししかない。

正直、来たくなかったのだが

奴から資金や技術の支援を

受けているので無視はできない。


エレベータでオフィスの最上階に上がり、

到着して扉が開くと、秘書と目が合う。


「田中様、お待ちしておりました」


秘書は立ち上がり

オレを社長室まで案内する。


「よう!久しぶり」

「先月会ったばかりだろう」


社長室に入ると前田が立ってて

笑顔で出迎える。

もう嫌な予感しかしない。


「まぁ、座れや」


言われるがままオレはソファへと座る。


「低体温法、うまくいってよかったな」


嫁のことである。

前田の技術班に装置開発を依頼したので

こいつは全てを把握しているのだ。


「いつもありがとうな」

「オイオイ、どうした?

 気持ち悪いぞ」


初めて御礼を言った。

超~低いテンションだが。


「そうか?」


白川さんが居なくなったのもあるが、

どうせ変な仕事を押し付けられるのは

目に見えている。

テンションはダダ下がりだ。


「そんな落ち込むなって。

 生きているんだから希望はある。

 彼女の復活はオレも望んでる。

 嘘ではないぞ」


嫁が復活すれば、オレがなんでも

言う事を聞くからだろ?


「全力でサポートするから。

 今、全世界の医師会に病気の

 解決策を検討してもらってる」


早いなぁ。

頼んでもないのに勝手に動いてるよ。

協力してくれるならバンバン動いてくれ!


「助かるよ」


顔が死んでて、覇気がないのは

自分でも分かってる。


「重症だな。そんなお前見たことない」


だろうな。

オレもこんなに落ち込むとは

想像してなかった。

愛する人が居なくなるって辛いんだな。


「いつガイヤ(地球)に戻って来たんだ?」

「つい3時間前かな」


今日戻って来たのか。

そう言えば頼まれてたのを思い出した。


「神楽の大盛社長が連絡くれって言ってたぞ」

「あぁ、忘れてたわ。

 後で連絡を入れとく」


オレとは対照的に前田は元気である。

何が楽しいのか、

いつ会ってもニコニコしてやがる。

今更だが気持ち悪りぃ、こいつ。


「そうだ。頼まれていた

 ホムンクルス1体の管理先だが、

 2階に移動するよう工事依頼しといたから。

 今週完了予定だから来週には使えるぞ」


ニーナの件だ。

ニーナだけ10階から2階に移動させ

られないか相談しただけなのに

手配したのかよ。


「病院の子、何て名前だっけ?」

「クルミちゃんか?」

「そうそう、その子。

 2階まで自由に出入りできるよう

 権限付与は既に完了してる」


発着室のマンションの話だ。

オレが居なくてもクルミちゃんが、

2階までは自由に出入りできるように

してくれたということだ。

これも相談しただけなのに。


「仕事が早いな。助かる」


なんか怖い。

凄く怖い。


「それと引き換えに相談があるんだが」


ほら来た!

これが目的か。

何をやらされるんだ?


「ごめん、今は何もやる気がおきない」

「それは困った。

 相談と言うよりも、お知らせなんだが」


イヤイヤ、騙されない。

話を聞いたら最後だ


「いいのか?

 ジュンの彼女が死ぬことになるぞ」


そんな卑劣な行動にでるのかよ。


「オイ!

 オレの彼女を人質にする気か?

 ふざけんな。場合によっては・・」

「ちょっと待った!」


オレは初めて前田に怒りをぶつけた。

それを見て焦ったのだろう。

前田はオレの言葉をさえぎる。


「すまん。言い方が悪かった。

 我々のガイヤが消滅するって話だ」


え!どういうこと?

意味がわからん。

ガイヤを人質にするってこと?


「我々が、この宇宙を第二実験室に

 移動させたのが研究所のセンター長に

 気付かれてしまった」


えっ、マジ?


「なぜ?」


前田の話によると、他の研究チームが

第二実験室の一部の宇宙がおかしい。

計算と合わないと騒ぎ出したのが

きっかけのようだ。

大騒ぎとなり、研究施設全体で大問題となったが、

それは単なる計算ミスだったことが発覚し、

騒ぎは沈静化した。


だが、別の問題が発覚したという。

騒ぎの原因調査で運用チームがログを

解析していたところ、前田とオレのチームが

第2宇宙を触った形跡があるのを

発見されてしまった。


それは紛れもない事実である。

第一実験室が老朽化を迎え、

破棄されるということで

一部の宇宙を第二実験室へ

密かに動かしたのだから。

その一部というのが、

ガイヤを含む200億光年の宇宙。

そう、この世界だ。


「それで、その後どうなったんだ?

 宇宙を触ったとなったら大問題だぞ」

「あぁ、その通り。

 もし、そのことを公表したら

 全プロジェクトが停止となり

 国際問題に発展する。

 研究どころの騒ぎではない。

 幸いなことに、ログからは我々が

 何をしたのかまでは把握されてない。

 なので、センター長は公表の前に

 事実確認するため、オレとお前に

 事情聴取をすることとなった」


「オレの聴取は終わって、

 ここへ戻って来たところだ。

 次はジュンの番になる」


オレのところに来るのかよ。

最悪だ。

触ったのは事実。

しかも証拠もバッチリ残っている。

こりゃぁ、詰んだな。

オレの回答次第では、第二実験室は破棄される。

嫁どころか、この世界が無くなるってことか。


「前田は何て弁明したんだ?」

「ジュンが勝手に端末を触ったから

 我々は知らないと回答した」

「ふざけんな!」


「ごめん。

 反論する材料が何も浮かばなかった」


そりゃそうだろ。

証拠があるんだから。


「たのむ!何とか切り抜けてくれ。

 何でもする。

 彼女の治療に多額の投資をさせて頂く」

「当たり前だ」


どうやって切り抜けろというんだ。

無理だろ。

オレ、捕まるのか?

そしたらもうガイヤに来れない。

その前に消滅させられる。

終わったな。

なんか、どうでもよくなって来た。


「2,3日考えさせてくれ。

 今、戻ったところでセンター長は

 全体会議の時間だろ?

 急いで帰る必要はない」

「すまん」


前田はオレに深く頭を下げる。

責任をオレに押し付けたが、

案を出して前田に依頼したのはオレだ。

オレにも責任はある。

しかも、言い出しっぺだ。


あのセンター長を説得できるか?

無理だろ。

このまま、オレと嫁が死ねば

天国で会えるかもな。


「ごめん、自首するかも。

 その時は、オレが全責任を取るよ。

 心配するな」

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