(277) カウントダウン
◇◇◇ 自宅 ◇◇◇
クルミちゃんを発着室で見送ってから
オレは自宅へと戻り、シャワー浴びたりと
面倒臭いことは全て終わらせて、
今ベッドに倒れ天井を眺めているところ。
先ほどの事を振り返っている。
コンサートが終わった後は
カフェで語りたいモードだったが、
ハルキは貧乏学生という設定なので
その提案はできなかった。
結果、みんなで帰る流れだ。
帰りの電車でも彼らの興奮は止まらず
コンサートの話題が尽きなかった。
全てオレ1人で考えたとは言わないが、
プロデューサーとして嬉しい限り。
さっそく、アイミーのコンサートが
ニュースにもなっているし。
SNSでも話題だ。
その話題の中心が、エルピース解散ではなく
コンサートの演出についてなのが残念である。
重大発表も話題に上がっているのは
願ったり叶ったりだ。
アイミーとリリカの今後が宣伝になるのだから。
クルミちゃんはというと、帰り道
ずーっとはっちゃけていた。
心を許したのか、扉を開いたのか知らんが
キャラ変してたのが特徴的だ。
すっかり、カイやレン達と意気投合して
うるさかった。
特にカイは、どさくさまぎれて
クルミちゃんとデートしようと遠回して
遊びに行く予定をしてたな。
オレが阻止してやったが。
そんなんで当初、彼らにクルミちゃんを
合わせるのはどうかと心配してたが、
無用だったようだ。
むしろ、オレより距離が接近してて
ちょっと嫉妬している。
まぁ、オレ側に問題があるんだけどね。
自覚はしている。
クルミちゃんのような性格に生まれたかった。
そうだ!
アイミーにLineしとかないと。
あっぶねぇ、忘れるところだった。
Line> Day2も客席から見ました。
最初から最後まで鳥肌ものでしたよ。
アンコール2曲、最高でした。
悔しいですが賭けは僕の負けです。
Lineはアイミーとの勝負結果の報告である。
コンサートでオレが最後まで見てたらアイミーの勝ち。
つまらなくて途中で退出したらアイミーの負けと。
Line> 罰ゲームとして、何でも1つ言う事を聞きます。
ちなみに、出来る範囲でお願いします。
しかし、あの重大発表はなんですか。
今後が楽しみ過ぎなんですけど。
これくらいにしておくか。
送信と。
・・・
既読にならない。
最終日だし、打ち上げでもしているのかな?
この時、オレは知らなかった、
アイミーとリリカは疲労で
近くのホテルにもう一泊してたことを。
女性スタッフが付き添いで見守る中、
2人は次の日の昼まで爆睡したそうだ。
おそらく疲労だけではなく、
緊張やプレッシャーなど、いろいろなものが
重なっていたんだと思われる。
♪ピンポーン
おっと!嫁が来た。
オレはベッドから飛び起き駆け足で玄関へ。
♪ガチャ
「お帰り」
「ただいま、そんなに急がなくても」
どうやらオレが廊下を走る音が聞こえたらしい。
恥ずっ。
フフっとオレを見つめて笑う嫁。
カワイイ。
もう部屋までガマンできん。
裸足のまま玄関を飛び出し
思いっきり嫁を抱きしめる。
嫁もそれに応える。
あぁ、シャンプーの良い香り。
癒される。
マイナスイオンがオレに注入される。
・・・
「中、入っていい?」
おっと、いかんいかん。
ここは3階の廊下、外から丸見えだ。
マンション住民にも見られたら大変。
とりあえず、2人して扉の内側に
入ったはいいが、どうしよう?
裸足のまま飛び出したから
足の裏が真っ黒だ。多分ね。
嫁は靴を脱いで廊下に上がる。
嫁にウェットティッシュを
取ってくるよう頼むと
『子供だね』と言って
笑みを浮かべながら持って来る。
そんなオレを怒らないところが好きなんだよなぁ。
ロングコートを脱ぐと、
昨日と同じパジャマ姿。
はい、今日もお泊り決定!
パチパチパチと心の中で拍手する。
そして、2人でベッドへ。
オレは仰向けで、嫁はオレを抱き枕の
ように両手両足を絡める。
顔は、オレの胸に埋めている。
明日は、嫁の凍結の日。
正直、中止にしたい。
だが嫁は決行を望むだろう。
口には出さないが、それを感じてる。
「初めて会った日のこと、覚えてる?」
「覚えてるよ。
なんでこの人、エミリンと知り合いなの?
って驚いた。しかもカイくんと、
いつも一緒にいる人だから、知ってたし」
「驚いたのはこっちもだよ。
まさか同じ学校の子だとは思わなかった」
確か幕張のイベントで出会ったんだっけか。
あれから二カ月しか経ってないんだよなぁ。
学校でボッチだった白川さんを想像すると
泣きそうになる。
家に居ても一人だったし。
唯一の支えだったのがアイミーの存在。
それもSNSの乗っ取り事件でどん底となり
最後は死んでしまった。
ホムンクルスで蘇ったとはいえ、
難病が進行している。
可哀そう過ぎるだろ。
半分はオレのせいだ。
彼女が生きててよかったと思わせたい。
それを考えると挫折しそうだよ。
明日の凍結を中止したい。
「もっといろいろな場所に行ってさ。
沢山思い出、作りたいなぁ。
海外とかさ、どう?」
これがオレが言える精一杯。
「私も行きたいとこ、沢山ある。
沖縄も、もう一度行きたいなぁ」
嫁が話に乗って来た。
よし、明日は沖縄行こう。
冷凍は中止だ。中止。
「じゃあ・・・」
「18年後の楽しみに取っておきます」
オレの言葉にかぶして来た。
そう言われたら何も言えない。
何がなんでも、明日決行したいんだな。
病気が更に進行してるんだろ?
オレに隠してるんだろうけど、
時たま腕が動かなくなっているのを
オレは知っている。
そんな姿をオレに見せたくないんだろうな。
くっそ!




