(271) Day2スタート前①
◇◇◇ 武道館 ◇◇◇
時刻は16時半。
ここは武道館前の集合場所。
17時に集合となっていて、
オレは30分前に到着したのである。
どうやら一番乗りのようだ。
ちょっと早すぎたかな。
大盛社長との会食の後、発着室へと戻り
オレはハルキに入れ替わってから、
ここへと来てる。
早すぎると言っても嫁は近くにいる。
先ほど駅を降りたのを確認したのだから。
そろそろ姿が見えるはず。
なんせGPSでお互いの位置が
把握できるようにしてあるのだ。
そして待つこと5分。
嫁とクルミちゃんの姿が見えた。
そこにノノンはいない。
チケットを持っていないとは言え
集合場所には来ると思ったんたが。
2人がオレの元に来ると、
最初に口を開いたのがクルミちゃん。
「ハルキさん、コンサート楽しみです。
今日、宜しくお願いします」
「おう!」
え!思わず動揺が声に出てしまった。
オレとクルミちゃんは初対面じゃなかったけ?
やばい、誰と対面してたか混乱してきた。
戸惑うオレにクルミちゃんは追い打ちをかける。
「田中さんですよね?」
あれ?
『田中=ハルキ』がバレてたっけ?
増々、混乱してきた。
「ハルキごめん。私が教えてたの」
嫁の割り込みで、ようやく状況を把握できた。
嫁かノノンのどちらかが、
クルミちゃんに全て説明したのだと。
「あぁ、そういうこと。
クルミちゃんと、どこで出会ったか
考えちゃったよ。
この姿では、田中と呼ばないで
くれるとありがたい」
クルミちゃんに説明すると。
「なんか変な感じ。
田中さんが同級生に感じる」
だから田中じゃねぇって!
「見た目はね。
クルミちゃんの身体は19才なので、
この中では外見的に一番年上になる」
「そうだったの?」
精神的には一番若いのにね。
クルミちゃんを見てると、
設定年齢がオレより年上だから
お姉さんのような錯覚に陥る。
確かに変な感じだ。
「ノノンは?」
念のため、嫁に聞いてみる。
「家に帰るって」
「あっそう」
聞くまでもなかった。
「渋谷は楽しかった?」
「はい」
クルミちゃんは満面の笑みだ。
本当に楽しかったのだろう。
「聞いて聞いて!」
ここからはクルミちゃんのトークショーが始まる。
オレと嫁が会話すると
クルミちゃんも入り辛いだろうから
時間潰しにはちょうどいい。
時刻は17時5分前。
「ハル、お待たせ!」
オレの背後からカイが声を掛けてきた。
カイ、レン、鈴木の3人組が登場。
「ハルキは何の病気で学校休んでた?」
クラスメイトのレンと目が合うと唐突に質問された。
そう言えば1週間休んでいた。
昨日、堀北さんに何って説明したっけ?
やべぇ、覚えてない。
「そんなのどうでもいい。
それよりもこっちだよ。
コンニチワ。Call me Kai!」
カイが、クルミちゃんへ自己紹介する。
いつものが始まった訳だ。
「カイ!見た目は外人だけど日本人だぞ」
「初めまして、クルミです。
皆さん、今日はよろしくお願いします」
「おぉ!」
流ちょうな日本語に野郎3人が驚く。
「両親は外国人なの?ヨーロッパ系?」
「よし、みんなで当てようぜ。
オレは、お母さんがジョージア人」
鈴木のやつが余計なことを言い出し、
カイが便乗する。
どうしよう。
これ、答え辛いだろう。
「ちょっと待った!
クルミちゃんの家庭事情については
触れないで欲しい。
この見た目で日本語しか話せないんだ。
察しろ!」
これでどう?
いろいろと解釈できると思うが。
「聞いて悪りぃ。ごめん、ごめん」
相変わらずカイのやつは軽い。
「先週はお疲れ様でした。
とっても楽しかったです」
嫁が、鈴木に声を掛ける。
文化祭の演奏についてのようだ。
あれからまだ1週間しか経ってないのに
遥か昔のような感じがする。
「全員集まったようだし、並ぼうぜ!」
相変わらずカイが主導権を握ろうとする。
会場は指定席。
早く並ぼうが遅く並ぼうが変わらないが、
オレ的には早く会場に入って感動してもらいたい。
カイ!
お前は聞いてるか知らんが、
お前のお父さんも関わってるんだぞ。
「いやぁ、キミ達かわいいね」
「ほんとだよ」
カイとレンは調子にのっている。
よくもまぁ、そんなこと言えるよと関心する、
しかし、嫁とニーナは目立つ。
特に嫁はTikTokで有名人だ。
周囲に注目が浴びているのを感じてる。
声を掛けたそうな雰囲気。
野郎3人組がいてくれてホント助かる。
抑止力になっているんでね。
オレは後方で、そんな皆の姿を眺めてると。
「ハル、まだ会場に入ってないの?」
「あぁ!」
突然、オレの斜め上空に女の子が現れた。
「幽霊!」
「天使です」
ノノンだ!




