(269) 接待
◇◇◇ 車内 ◇◇◇
♪続きまして、次の話題はアイドルになります。
エルピースという2人組のアイドルグループが
現在ファーストコンサートを開催している
のですが、視聴者の皆さんご覧ください。
この会場を!
どこの場所で開催していると思います?
実は、日本武道館なんです。
日本最新鋭の舞台装置を使って8000人
ものファンを魅了しました。
・・・
オレは、車内でスマホを片手にニュースを見てる。
内容が、ちょうどアイミーのコンサート風景が
上げられていたから見ている。
これは偶然などではない。
だって、このニュースはオレの仕業だから。
コンサートにテレビ関係者を招待して、
大々的に報道させるよう仕向けたのだ。
今日でアイミーはアイドルを失業する。
これは、今後のための広告費用なのだ。
あと、うちの会社の宣伝にもつながるので
一石二鳥って訳だ。
◇◇◇ 料亭 ◇◇◇
時刻は13時。
オレはゲーム会社での用事を済ませ。
とある料亭へと伺った。
のれんをくぐり、お店に足を踏み入れると。
「田中様、お待ちしておりました」
女将がオレと目が合うなり声を掛ける。
この店は何度か来ている。
どうやら顔を覚えられたようだ。
マナーが分からんから、
こういう店は苦手なんですけど。
と思いつつ
「お世話になります」
返答する。
これが正解だったのだろうか。
まぁどちらでもいい、二度と来ないので。
と言いつつ、これで何度目だ?
ここは、神楽芸能の大盛社長が好む店で、
大事な打合せは必ずここが使われる。
もしかして社長が経営する店だったり。
そうこれから、
あの女社長との接待が待ち受けている。
オレの能力を評価しているか
男として魅力を感じているのかは
分からんが、相当気に入られている。
怖いくらいだ。
女将の後を付いて行き、いつもの
奥儀の間へと案内される。
女将が正座をして、両手を廊下に添え
「大盛様。お連れ様が参りました」
一呼吸おいて、両手で障子を開ける。
社長の姿が現れたとたん。
「これは田中様、お待ちしておりましたわ」
個室の中には1人しかいない。
もしかして今日は2人きっり?
うわぁ、入りたくねぇ。
正直、ヤクザの事務所に入るより怖い。
「どうぞ中へ」
女将が後押しする。
ということで、遠慮なく中へ。
毎回思うが、女将にお布施を渡した方が
いいのだろうか?
分からん。
「どうも失礼します」
この部屋は座布団が引いてある和室。
オレは社長の対面にあぐらで座る。
正座で座った方がいいのだろうが、
絶対に立てなくなるからしない。
さて、久しぶりに2人だけ。
何から話して良いが分からん。
とりあえず、目的を済ませてさっさと退散だ。
「本日はお忙しい中、時間を割いて、
この場を設けて頂き感謝致します」
っていうか、電話で5分で終わる話なのに
どうして料亭にまで来なきゃならんのだ。
意味わからん。
「そんなかしこまらずに、
いつもの田中様でいてください」
「そうはいきません。
まずは謝罪させてください」
「ジャパンエキスポの作業が遅れる件ですよね?
現時点でスケジュールがカツカツで
これ以上遅れたら間に合わないですものね。
でも、私は全然あせってはおりませんわ」
この人、何を言い出すんだ?
神楽がタイへの進出に踏み出す
最大のチャンスなのだ。
失敗するかも知れないんだぞ。
社長の発言として、それダメでしょ。
「どうせ田中さんのことだから、
既に策を練られているのでしょ?」
オレは、現在開催中の武道館コンサート
の舞台設備を使い回すことを提案した。
プログラムを修正すれば、
会場に合わせてドローンやLEDパネルを
動かすことができる。
問題は、設備の輸送および技術スタッフの派遣。
これはオレが全て費用を出すとも伝えた。
「すばらしいです。
昨日20分ほどですが、仕事の合間に
コンサート拝見いたしましたのよ」
え?居たの?
「私は別件の仕事がありまして
現場には行けてないのですが、
評判が良いとは聞いてます」
「えぇ、あの舞台装置をタイの人達に
見て頂けるのはハイテク日本を
アピールするのに最適ですわ。
流石は田中様」
いやぁ。そう言われると悪い気はしない。
「コンサートのニュースを
流してるのもそうなのでしょ?
知ってますのよ。
テレビ局の知り合いは沢山おりますから」
「全てお見通しですか。
いやぁ、大盛社長には叶わない」
ほんと、怖ぇ~よ。この人。
まさか、ストーカーじゃないよな。
「うちの専属アドバイザーになりませんか?
それだったら非常勤でいいですから
気楽でいいしょ?
考えて頂けませんか?」
非常勤は前田の依頼で十分。
オレは周囲を巻き込む仕事が苦手なんだよ。
1人でこつこつとデータ取っている方が
向いている。
「ちょっと考えさせてください」
バカバカ、オレのバカ。
どうしてキッパリと断らないんだ。
くっそ。
この社長とのつながりはでかい。
芸能関連の仕事を続けるには、
無下にできないんだよな。
「良い返事を待ってます。
ところで今日は武道館の方に
いらっしゃるのですよね?」
もしかして、一緒にコンサート
行きませんかって誘う気?
「いえ、今日も別件の仕事がありまして
行けません。見たいんですけどね」
ハルキに切り替わって、部活メンバーと
コンサートを見るのが別件の仕事です。
「田中さんが現場に居なくて大丈夫なのです?」
「私の仕事はプロデューサーなので
お金集めとスケジュール調整がメインです。
後は、技術スタッフに任せてあるので、
私の出る幕はありません」




