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(267) いつもの朝

◇◇◇ 自室 ◇◇◇

時刻は朝7時。


目を覚ますと見慣れた天井が視界に入る。

オレの部屋だ。当然か。


首を傾け、隣を見る。

嫁と目が合った。


「おはよう」

「おはよう」


なんだよ。起きてたのかよ。

くっそ。

カワイイ寝顔が見たかったのに。


「もしかして、ずっと起きてました?」

「わたしも今起きたところ」


ベッドに横たわる嫁の顔を眺める。

その笑顔が眩しい。


「なぁに?」

「カワイイ」

「本当にそう思ってます?」


もちろんだよ。

オレの嫁は宇宙一カワイイ。


「朝ご飯作りに戻らないと」


起き上がる嫁。

えぇ~、もうちょっと、まったりしません?

と言いたいところだが、

今日もいろいろと忙しい。


「オレも手伝うよ」

「ありがとう」


ということで、着替えて8階へ。


◇◇◇ マンション前 ◇◇◇

その後は、寝ているノノンを起こして

朝ご飯を3人で食べたのである。


9時までには発着室に行かなければならない。

クルミちゃんを外出させるためだ。


食べ終えると、

オレは部屋へ戻り、支度をする。

待ち合わせは昨日と同じ

マンションを出たところ。


オレは着替えるだけなので

準備が一番早い。

さっさと家を飛び出し、

PMC車の後部座席で

嫁が出て来るのを待つ。


これも一つの楽しみではある。

嫁がどんな格好で現れるのか

ワクワク感が止まらない。


待つこと10分。


マンション1階の自動扉が開き

モデルのような人が外に出て来た。

その人は背が高く、手足の細い女性。

そう、オレの嫁だ。


今日のファッションも最高。

オレを喜ばそうとしているな。

全体的にグレーを基調にしたミニスカート。

もうたまらん。

早くその太ももを触らせろ。


え!

嫁の真後ろにもう1人の女性の影が。

ノノンだ。

どうした?見送りか?


後部座席が開く。


「待ったぁ?」

「いや、まだ1分も経ってない」

「ノノンちゃんも一緒に行くって」


え!来るの?


「博士、私も来ちゃった」


来ちゃったじゃねぇよ。

白川さんに続けてノノンも乗り込む。


お前が居ると太もも触れんだろうがぁ!

後部座席が3人になり、

乗り込んだ順で嫁が真ん中に座ることに。

そして、車は発着室を目指して発進する。


移動中、嫁とノノンが

女子トークで盛り上がる。

しかし、この2人は仲が良い。


どうやら、クルミちゃんと3人で

渋谷でショッピングするようだ。

そういえば、クルミちゃんとノノンは

初対面だったか。

ノノンとも気が合いそう。

3人とも性格が似てるような気がする。


ショッピングの後は、嫁とクルミちゃんは

コンサート会場へ直行するだろうけど、

ノノンはどうする気だ?

チケットがない。

家に戻るのかな?

聞くのが怖い。

触れないでおこう。


◇◇◇ 発着室 ◇◇◇

7つの棺が置かれた部屋。

その1つの扉が開く。


♪ウィーン


棺の中に格納されていた

30代の男性が起き上がる。

田中である。

発着室に来て、オレはハルキから

田中へ入れ替わったのである。


「何度見ても違和感しかない。

 分かってても

 ハルキって感じがしない」


嫁の第一声である。

まぁ、見た目が違うのだから当然だろ。


「今は田中だ。

 無理に同一人物だと思わなくていい」

「いつか実物のハルキを見てみたい」


あぁ、オレだって現実で嫁に会いたいよ。


「それはお勧めできないなぁ。

 きっと幻滅しちゃうよ」


ノノン!

乙女の空想をぶち壊すな。


「ふざけんな!

 実物はダンディーでカッコいいわ」

「えぇ、自分でそれ言っちゃう?」


しかし、ノノンの奴、

最近オレをいじってくる。

部下が上司に言う言葉か?

良いんだか悪いんだか。


「ノノンちゃんがうらやましい」


急にどうした?

カワイイ嫁ちゃんよ。


「だって現実世界のハルキを

 知ってるんだもん。

 いつだって会えるし」


オレと同じように、こちら側から

オレ達の世界に行けたらいいんだが。

論理的に実現不可能だ。


仮に実現できたとして、

こちら側の人間がオレ達の世界に来たら

時間が100倍速く進む。

1年も生きて居られないだろう。

戻れたところで浦島太郎になるだけだ。


・・・


「ちょっと!

 私の前でイチャイチャするの止めて」


目と目で会話する嫁とオレを見かねて

ノノンが口を出す。


♪ツゥルル、ツゥルル


着信音だ!

仕事用のスマホが鳴る。

発信者はクルミちゃんである。


「はい、田中です。

 すまない。

 今、接続するからそのままにしてて」

「クルミちゃんから?

 なんだって?」


電話を切るなり、ノノンが問い掛ける。


「催促の電話だった。

 早くこっちに来たいらしい」


そりゃそうか。

オレは急いでニーナの棺側面へと

移動し、操作パネルをタッチする。


♪ウィーン


棺のフタが開く。

そして、中にいる女性が目覚めた。

上半身を起こして、オレと目が合うなり


「もう、遅い!」


キレ気味のご様子。

オレは携帯で現在時刻を確認する。

8時54分。


「まだ6分前ですけど」

「クルミは1時間前から

 待ってるんですぅ」


オイオイ、理不尽だろう。

せめて、予定時刻を過ぎてから言ってくれ。

ここは大人の対応をするしかない。


「それは・・・済まなかった」

「お姉ちゃん」


オレの謝罪にクルミちゃんが被せて発言。

オイ!

謝罪してるんだから最後まで聞けよ。


「えーっと」


クルミちゃんはノノンを見て動揺する。

だれ?、この人!って感じだ。


「初めましてクルミちゃん。

 ノノンです」

「私のお友達、一緒に住んでるの」


ノノンは笑顔で挨拶して、

嫁がフォローする。


「お友達になりましょ?」


立ち上がろうとするクルミちゃんに

ノノンが手を差し伸べる。

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