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(265) コンサート初日終了①

◇◇◇ 武道館メインホール ◇◇◇

ステージ裏では疲労で倒れていたアイミーとリリカ。

2人はそれを微塵も感じさせず、

ステージ上で歌って踊っている。

当然、笑顔ででだ。

観客はそんなことは知らない。


オレは驚きを隠せない。

あの情熱はどこから来るのだろうか。

急きょMCに変更したスタッフの判断はただしい。

そして、一曲飛ばそうとしたに違いない。


だが、どうだ?

飛ばさずに歌われている。

彼女らのパフォーマンスを見てオレは理解した。

アイミーとリリカが『やりたい』と

強く熱望したのだと。


2人ともアイドル希望ではない。

むしろアイドル活動を好んでいない。

にも関わらずだ、どうしてそこまで無茶できる?

堀北さんの時もそうだ。

下手をすると身体を壊し、

一生を棒にふるかも知れないんだ。


オレには理解できない。

だけど、それがうらやましい。

そこまで情熱を注げることに。


オープニングからハラハラして見てて、

純粋に客として楽しめてなかったが、

今は違う。

頬に熱いものが伝わり、

猛烈に感動している。

人が全力で打ち込んでる姿はいい。

目が離せない。

これがコンサートの楽しみ方ってやつか。


そして、2人は何事もなく無事歌い終える。

オレは、心の中で盛大に拍手を送る。


だが、オレの不安はまだ治まらない。

だって、次の曲はリハーサルで喧嘩していた2人が、

同じステージに上がるのだから。


4人組のユニットで、グループ間の垣根を超えた

シャッフルメンバーによる新曲だ。

その中に喧嘩した2人が登場する。

だれだよ、この組み合わせ考えたの?


アホじゃねぇか!


♪♪~♪


曲のイントロが流れる。

いよいよだ。

頼むからステージ上で喧嘩するのだけは止めてくれよ。


彼女らが登場して、しばらく様子を見るも。

手を繋いだり、見つめ合ったりして仲が良さそう。

どういうこと?

和解したの?

しょっちゅう喧嘩してると聞いてますけど。


「ピンクと黄色の子、仲いいね?」


オレはさりげなく嫁に探りを入れる。


「あの2人、仲はいいよ。

 ファンの間では有名だもん」


え!そうなの?

世間の声に驚愕する。

真実は真逆なんですけど。


「同い年だし。

 10代の時は確か同じ高校に通ってて、

 しかも同じクラスだったらしいよ。

 そりゃあ、仲いいよね?」


同じクラスだから仲いいとは限らんだろう。

なのにだ。

2人で指を合わせLOVEサインしたりと、

オレには絶対真似のできない行動をしている。

ファンもその光景に大興奮。

身震いを感じる。

これがプロなのだと実感した。

結果、何事もなく終了。


その後も曲は続き。

ついにラストの曲まで辿り着く。


締めくくるはエルピース。

アイミーとリリカの再登場だ。


♪次が最後の曲となります


彼女らの体調が心配なのは変わらない。

こちらはダンスがなくスローテンポな曲

なので少しは安心して見れそう。


会場全体が暗くなり、青い衣装を着た2人に

スポットライトが当たる。

更に装着したブレスレットが

白でゆっくりと点滅する。

その点滅は連動しておらず、

各人でバラバラなので遠くから見ると、

1つ星のように見え、

宇宙空間にいるかのような錯覚に陥る。


サビではブレスレットがウルトラオレンジへと

変わり光り続ける。

なんて綺麗な光景なのだろうか。


ふと、古き言い伝えを思い出す。

『そのもの青き衣をまといて

 金色の野に降り立つべし』

これは大地を浄化してくれる救世主の話だ。

この伝承はどこで聞いたのだろう?


曲が終わると。

アイミーとリリカは手を振って

仲良くステージから去る。

そして、会場の照明が全開となりコンサートが

終わりを告げるかのような雰囲気に包まれる。

これはお約束である。

ファンには、それが分かっている。


「アンコール、アンコール、アンコール」


全体が1つとなって、場内にこだまする。

5分くらい待っただろうか。


パチパチパチ


アイミーとリリカの2人がステージ上に現れる。


♪アンコール、ありがとうございます


2人とも衣装からコンサート限定Tシャツと

短パンに着替えての登場だ。


そして、デビュー曲を歌い上げる。

歌が終わると、次の曲で本当に最後となる。


♪楽しい時間はあっという間だよね?

 つぎの曲が最後になります


「えぇーー」


♪ほんとうだよ。

 もう一度最初からやっちゃう?


パチパチパチ


♪エミリン、それ、本気で言ってます?

 私はシンドイけど。


「ハハハ」


ファンにはギャグにしか聞こえないようだ。


♪みんな、おいで!


リリカの掛け声で、残りの全メンバーが

呼び込まれ、ステージに登場する。

メンバー全員、アイミーと同じ格好である。


♪名残惜しいですが、最後です。

 みんなで一緒に歌いましょう。

 セイブ・ザ・ワールド


最後は、会場の全員で合唱して幕を閉じる。

予定よりも20分オーバーしたが

無事に終えられた。


最高だった。



◇◇◇ ステージ裏 ◇◇◇

アイドル達がステージ裏へと戻って来る。


パチパチパチ


スタッフ達は、彼女らを拍手で出迎える。

アイドル達の半数が涙を流していた。

それは、ここ数日の張り詰めた緊張から

解き放たれたものだったり、

コンサートを全力でやり切った充実感だったりと。

感情は人それぞれ。

共通して言えることは、

自分たちが楽しめたということ。


体力的にきつかったのはエルピースだけでない。

そこまで動けたのは、ファンの声援と笑顔が

見れたからである。


今日だけは、グループとか、年齢、芸歴に関係なく、

戦い合った者同士、抱き合って称え合うのであった。

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