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(264) コンサート開始②

◇◇◇ 武道館メインホール ◇◇◇

ステージ中央に降り注ぐ霧が徐々に細くなり、

やがて認識できないほどまでに薄れると

場内は一瞬暗闇に包まれる。


♪ドン、ドン、ドン


コンサート開始を伝える導入曲と共に

観客が装着したブレスレットが白に一斉に点灯する。

まるでブレスレッド自身が音を感じ取ってるかのように

ドンドンドンというリズムに合わせて発光している。

これから始まる期待感が観客の

テンションを上げていた。


場内が明るくなると、ステージ上には

5名のアイドルが立っている。


♪ずっと待ってたよ この瞬間を

 胸の奥まで 響くビートは


そして、1曲目を歌い出したのである。


ステージの真上には、ドローンにって支える

垂れ幕のLEDが四方に浮かび、

ゆっくりと360度回転しながら

彼女らの表情をアップで映し出す。

3階席からでも彼女らは今年デビューした

アイドルグループであると把握できたのだ。


開場が総立ちとなる。


つかみはOK。完璧だ。


始まりから終わりまで、何が起こるのか全てを知っている。

うまく行くのか冷や冷やしながら見守っている。

そう、純粋に観客として見られないのだ。


ステージ中央に空洞ができ、

次に新しく結成されたグループが

リフトアップしての登場。


♪手を振るたびに 返ってくる光

 ひとりじゃないって 教えてくれる


歌割が登場グループに変わる。

ここでファンは理解したはずだ。

最後に登場するのはエルピースだと。


この後、更に2グループが登場し

ステージ上には16名がパフォーマンスしてる。


いよいよサビだ。

次はアイミーの出番である。


♪光の中 私は輝き続ける


「エミリン」

「リリカ」


アイミーとリリカが背中合わせで

中央からリフトアップされて登場。


♪みんなぁ、合いたかったよぉ

 エルピースファーストコンサート

 day1スタートです


「ハイ、ハイ、ハイ」


早くも開場のボルテージはマックスに達する。

芸能事務所アーツファクトリ、

所属アイドル総勢18名による

コンサート開始が宣言されたのである。


サイリウムを振る白川さん。

なんて幸せそうなのだろうか。

彼女の幸せが、オレの幸せだなのだ。

正直、ステージよりも白川さんの

表情を見てる方が感動する。

泣きそうだよ。


1曲目は全グループが登場し、

歌い終えると2曲目からは各グループの

持ち歌が1曲ずつ披露される。

開幕6曲がノンストップで駆け抜けた。

その間、白川さんはサイリウム持つ右手で

振り続ける。


アイミーが歌い終えると、会場は全体的に明るくなる。

観客は小休止を感じ取り着席。

そして、その場に残ったアイミーとリリカによる

MCパートへ突入するのであった。


♪みなさん、どうでしたか?

 楽しんでますぅ?

♪パチパチパチ


♪結成して2年。

 念願の初コンサートが叶いました。

 これもファンの皆さんによる

 応援のおかげです。

♪パチパチパチ


ステージ上の2人は四方へ、

それぞれ深々と頭を下げる。


5分ほど近況を報告して


♪そろそろ準備が出来たようなので

 次の曲にまいります。スターシップ

 ♪~♪~


「ハイ、ハイ、ハイ」


彼女らの表情は楽しそう。

会場は満席。

約8千人もの観客に見守られている。

気持ちがいいのだろうか?


オレには理解できん。

クラスの30名に注目されただけでも

ゲロ吐きそうなのに。


サイリウムを振る隣の白川さんは

目が輝いている。

自分も、あのステージに立ってみたい

と考えてたりするのだろうか。


もしそうなら立たせてあげたい。

白川さんなら東京ドームを用意するよ。

しかもソロコンサートだ。

5万人が見守る白川さんを見たら

きっと号泣するだろうな。


◇◇◇ 武道館ステージ裏 ◇◇◇

「おつかれぇ」

「はぁ、はぁ、はぁ」


アイミーとリリカが3曲を歌い終え

ステージ裏へと戻ってくる。

2人はヘトヘトのご様子。

3曲目は歌というより激しいダンスが

メインだったから仕方ない。


ステージ上では決して見せない

死んだような表情。

パイプ椅子に座り、頭を下げ、

肩で息をしている。

2人とも全身に力が入ってない。


スタッフ達は、彼女らをうちわで仰ぎ、

全身の熱を冷まそうと必死だ。


「15分空きがあるから、

 そのまま休んでなさい」


スタッフの言葉が届いているのだろうか。

返答がなくジッとしているのであった。


◇◇◇ 武道館メインホール ◇◇◇


曲が終わり歌ってたアイドルが消えると

2人の別アイドルが現れた。


♪はるニャンとまなっちだよ。

 みなんなぁ、楽しんでますか?


「おー」


♪ん?聞こえない

 もう一度、聞くね。

 みなんなぁ、楽しんでますか?


「おぉぉー」


MCパートのようだ。

おや?

ここはMCでなく、アイミーとリリカが歌うハズ。

どういうこと?


オレは携帯で関係者用アプリを立ち上げる。

するとステージ裏から制御エリアへ緊急通知が

飛んでるのを確認。

どうやらアイミーとリリカがバテており、

MCを割り込ませたいとの内容であった。


え?

あと30分残ってますけど。

予定では、激し目な曲を歌っていたハズであった。

その後の出番は、スローテンポが1曲。

全グループ合同が1曲。

アンコールで、デビュー曲が1曲。

全グループ合同が1曲。


計5曲の登場を予定してある。

MCに変えて、激し目な曲は中止したのか?

アンコール前の合同の曲は最悪出なくていい。

どうしいよう。

何か指示を出した方がいいのだろうか。


「どうしたの?仕事?」


携帯を真剣に眺めるオレに

白川さんが心配そうに尋ねる。


「なんでもない」


オレは携帯をケツポケットへしまう。


「大丈夫なの?」


せっかっくのコンサートなのに

白川さんを不安にさせてはダメだ。


「仕事じゃないよ。迷惑メール」

「そっ」


信じてくれただろうか?

白川さんはオレの嘘を見破る。

気を使って、信じたふりを

してくれたかも知れない。

もう、携帯を見るのは止めよう。

スタッフを信じる。


♪そろそろ次の曲が始まります。

 まだまだ行けるよね?


「おー」


♪全力で応援できますか?


「おぉぉ」


♪♪~♪~


えっ!このイントロ、エルピースだ。


「Doki・Doki・サマーサスピション。

 私、この曲好き」


だよね。激し目な曲だ。

やるの?

嘘だろ。


♪キィーーン、ズッキュン、ドッキュン


アイミーとリリカの2人が走って

ステージへと上がる。


「ハイハイハイ」


静まりかえっていた会場のボルテージが

MAXとなる。


♪あなた、わたし。わたし、あなた。


息を切らさず笑顔で歌う2人。

とてもステージ裏で倒れていたとは思えない。


プロだ。これがプロなんだ。

スクリーンにアップで映る表情は

汗でびしょ濡れである。

なのに爽やかな顔。

動きも、とても疲れているとは思えないキレキレ。


オレの方が動揺する。

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