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263/313

(263) コンサート開始①

◇◇◇ 武道館 ◇◇◇

オレを含めた部活メンバーはアイミーの

初コンサートに来ている。

1人を除いてコンサート初体験であり

各人のワクワクが伝わってくる。

ついに、その一歩が実現する。

オレらは武道館内部へと足を踏み入れたのである。


「凄~い」

「どういうこと?」


館内を見渡してのリアクションだ。

まだステージのあるホール内に入っていない。

館内も通路があり、メインホールへ入るための列が続く。

ゆっくりと移動しつつも、

メンバー全員の目は泳ぎまくってる。


館内はディズニーランドのアトラクションかと

思われるような幻想世界で装飾されていたのだ。

そして、足元はドライアイスが溶けて流れてる

かと思わせるような薄い霧で覆われている。

ちなみにこれは、カイ父による作品だ。


「コンサートって、他もこうなの?」

「私も見た事ないよ」


驚きを隠せない堀北さんに篠崎さんが答える。


「これを見れただけでも来て良かったわ」


金沢さん!まだ始まってませんから。


あちこちにアイミーとリリカの写真が飾られている。

それはデビュー前から現在に至るまでの道のりが

にわかファンに把握できるようになっていた。

白川さんもまた、当時を思い出すかのように

写真を見て歴史をたどる。


「ハルキ、見て懐かしい。こっちも」


オレの腕を強く握る白川さん。

興奮が伝わってくる。

よし!つかみはOK。


そして、短いトンネルをくぐると

ステージのあるホールへと出た。


「うわぁ、圧巻」


金沢さんの口が開いたままだ。

メインホールもファンタジー世界を演出している。

視界の360度、天井も床も含めてLEDで敷き詰められ

広大な森林の中に立っているような感覚で、

不自然に椅子が設置されているような錯覚を覚える。


会場に来ている観客のほとんどが、

驚いている模様がうかがえる。


「オレらはこっちなんで」


オレと白川さんは座席が離れている。

なのでメンバー4人とは、ここでお別れだ。


「終わったら合流しましょ」


手を振って互いの席へ。

ようやく2人っきりになれた。

自然とお互いが手を繋ぎ、自席まで移動する。

到着すると席に座る。

白川さんとは当然隣同士。


「最高の席じゃない?」


そりゃそうだ。

オレが無理やり作ったシートだからね。

最前列のしかもセンターよりの場所。

部活メンバーも最前列だが、サイドよりなので

ステージが死角となりお互いが見えない位置にある。

これは偶然ではない。わざとだ。


改めて白川さんは周囲を見渡す。

ホールの中心には丸いステージがあり。

観客席はステージを囲むようにして配置してある。


天井からは、滝を連想させるような白い霧が

ステージ中心に真っすぐと降り注ぎ、

1階席全体へと広がっている。

何と神秘的だろうか。


「メチャクチャ感動なんですけど」


それはオレも嬉しい。

白川さんの笑顔を見たいがためだけに、

どれだけ検討したことか。


上演開始まで待っている間、

退屈させないために、

いろいろと工夫しましたよ。


♪ご来場の皆様、

 エルピースファーストコンサートは

 まもなくスタートとなります。


突然館内放送が流れだす。


♪お手元のチケットをご確認のうえ、

 お早めにお席へお戻りください。

 また、今日のコンサートが皆様の

 最高の思い出となりますよう

 上演中は携帯電話の電源をお切りになるか、

 マナーモードへ設定して頂くようお願い致します。

 ・・・

 みんな!元気?エミリだよ。


声の主は、アイミーだったのだ。


「おぉぉ」

「おぉぉ」

「おぉぉ」


低音の声がホール内に響き渡る。

文化祭を思い出す。同じ反応だ。


♪みんなに会うの、楽しみにしてました。


「エミリン、大好きだぁ」

「はぁぁ」


2階席からだろうか。

ファンの1人が大声で叫び、

場内が笑いに包まれる。


♪ありがとう。

 私もみんなのこと、大好きだよ


アイミーのアドリブ返しで、

これが録音でないことを理解する。


♪あっ、そうだそうだ。

 1つ言い忘れてたことがあります。

 入り口で配ったブレスレット、持ってるよね?

 始まる前に手首に付けておいてね。


それはプラスティック製の白いブレスレット。

入り口で入場者全員に配られた物だ。

オレと白川さんは既に右手首に装着してある。


♪あと10分で開始します。

 登場したら声援よろしくね。

 エミリでした。


放送が終わる。


◇◇◇ ステージ裏 ◇◇◇

「あぁ~緊張した」


マイクから離れるアイミー。

スタッフ一同は所定の場所へと配置する。


演者であるアイドル達は、一ヵ所に

全員集合してて、丸い輪になっていた。

輪の1人にリリカがおり


「バックステージに戻ったら次の出番の位置と

 タイミングを必ず確認しておくこと」

「はい」


メンバーへ、細かい指示をしている。


アイミーが戻り、リリカの隣へと位置する。

輪に加わるとリリカは話を止め、

目線でアイミーにバトンタッチさせる。


「みんな!緊張してる?」


アイミーはメンバー1人1人の顔を見る。


「本日はコンサート初日です。

 遠くから来ているお客さんもいます。

 わざわざ会社を休んで前日入りしてくれた人もいるでしょう。

 交通費がなく深夜バスで来てくれた人もいるはずです。

 学生さんは、バイトした人もいます。

 今日だけしか参加できないお客さんがいます。

 その人たちのためにも。

 来て良かった。最高でしたと思わせたい。

 自分が主役だという意識で

 パフォーマンスしてください。

 明日のことは考えず。

 全力でいきましょう」


アイミーの言葉によって、

メンバー全員の顔が引き締まり


「はい」


決意を持って返答をする。

そして、リリカがバトンタッチする。

 

「では、いつものやります」


メンバー全員が手をつなく。


「ファイト」

「オー」


リリカの掛け声で全員が腕を上げて叫ぶ。


「スタンバイしてください」


スタッフの1人が声を掛けると、

アイドル達はバラバラに散らばり

所定の場所へと移動するのであった。


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