(262) コンサート直前②
◇◇◇ 武道館前 ◇◇◇
時刻は16時半
オレと白川さんはちょうど集合場所に
着いたところ。
限定グッズ購入後、オレらは白川さんが
TikTokerとして注目されていることから
一旦武道館を離れることにした。
ついでに昼食を取ろうということになり
九段下駅まで戻ったのである。
何を食べようか、なかなか決まらないまま
駅周辺を散策して、結果カフェ店へ入ったのである。
朝もカフェ、昼もカフェだ。
だって、分厚い食パンのハニートーストが
美味しそうだったから。
これは昼食と言っていいのだろうか?
おやつのようなものを1つ注文し、
仲良く2人で食べたのである。
それから1時間会話をして、また武道館前へと
戻って来たということだ。
さて、みんなは来てるのか?
周囲を見渡すも、メンバーの姿はない。
グッズに並んでもいない。
どうやらオレらが一番のりのようだ。
待ち合わせは17時。
流石に早すぎたな。
白川さんは、ある大柄な男性に視線が釘付けとなる。
彼は、我々を守るボディーガードの1人。
ボディーガードは大体3~4時間で交代している。
その交代で、白川さんが注目する
人物に入れ替わったのである。
白川さんは彼の元へと近寄る。
なにをするのかと、オレも付いて行くと
「お体の方は、もう大丈夫なのでしょうか?」
白川さんは、ボディーガードに
身体の気遣いをしたのだ。
彼は代々木公園での事件で、
白川さんとノノンを1人で不良集団から
盾となって守ってくれた人物。
その時、ボコボコにされ病院へと運ばれた。
それから白川さんは心配していたという。
「お気遣いありがとうございます」
「先日はありがとうございました。
会って直接お礼が言いたかったんです」
白川さんは深く頭を下げる。
「おやめください。
職務をまっとうしたまで。
気になさらずに」
彼は毅然とした態度で、
白川さんに目を合わせず受け答え
しながら周囲に気を配る。
この状況下でも気を緩まず
警護として従事している。
なんて誇らしい部下なのだろうか。
ただ彼は、どの件について
お礼をされてるのか、おそらく理解してない。
だって、あの時は白川ではなく岩井だったのだら。
白川さんはそれを伝えると、
仕事の邪魔をしてはいけないと
オレの手を握り、引っ張るようにして
元の待ち合わせ場所へと戻る。
そして、待つこと10分。
「細倉くん、やっほー」
金沢さんと篠崎さんの登場である。
細倉ってだれ?
オレだ。自分の苗字を忘れてたわ。
「他のメンバーは?」
と言って金沢さんは周囲を見渡す。
「まだオレらだけのようです」
金沢さんと篠崎さんを見ると懐かしく感じる。
急に社会人から学生に戻った気分だ。
「瑞葵ちゃん、今日は宜しくね」
瑞葵ちゃんってだれ?
金沢さんがオレの嫁に挨拶するのを見て
オレの嫁ことだと思い出す。
女子達の挨拶が交わされる。
残りのメンバーは誰が来る?
ノノンにt手渡した土曜日分のチケットは4枚。
となると残りは、2枚。
必然的にノノンとレンになる。
2人が手を繋いで来るかが楽しみ。
だがオレの予想はハズレた。
現れたのは堀北さんとノノンのペアー。
「細倉くん、病気は治ったの?」
堀北さんと目が合うなり心配そうに尋ねる。
そう言えば、仮病で1週間学校を
休んでるだっけか。
堀北さんに嘘をつくのは心が痛い。
「見ての通り、すっかり元気になりました」
オレは両手を広げ、元気アピールする。
「ハルキ、病気だったの?」
白川さん、空気読んで!
仮病で学校休んでたこと、
伝えておくべきだった。
ノノンもフォローしろ!
「風邪ひいてて学校休んでたんだ」
という設定です、白川さん!
「全員、集まったようなので列に並ぼう」
オレは話題を変え、メンバーに移動を提案。
開場は17時から。10分後には開く。
入場待ちの列はアリーナ席、1階席、2階席、
3階席の4つに分かれ、どれも長蛇である。
オレらの席は1階アリーナ。
オレが権力でもぎ取ったものだ。
みんなオレに感謝してくれよ。
移動中、ちょうどノノンが隣だったので
素朴な疑問を聞いてみる。
「4枚のチケット、どう配ったんだ?
てっきりレンと恋人繋ぎで現れると思ってたよ」
「ちょっと待って!
レンくんとは、ただの友達だから」
へぇ、そうなんだ。
「なのに学校帰りに2人で帰るんだ?」
「言っておきますけど身体の関係はないから」
そこまで聞いてません。
「友達だからって2人でデートする?」
「誘われたらするでしょ、普通」
あっそうですか。
好きなんだろ?
素直に好きだと言えばいいのに。
どうやら、配布の方法は部活メンバーで
相談したそうだ。
男子と女子で別れるとなったらしい。
土曜日が女子で日曜日が男子。
ってことは、ノノンは日曜日には来ない。
「いいのか?明日は来れないぞ」
「2日間行きたいけど、しょうがないでしょ」
確かにな。
ノノンが土日のチケットをキープしたら
1人行けない者が出て来る。
偉いぞ!ノノン。
列の最後尾に着くと、入場が開始された。
8千人もの観客がざわつく。
周囲は人、人、人。
こりゃ、入るのに30分は掛かりそう。
「私、コンサートって初めて」
「私も。すっごく楽しみなんですけど」
金沢さんのコメントに堀北さんが同調する。
「アイドルのコンサートは初めてかも」
続けて篠崎さんが反応した。
「瑞葵ちゃんはコンサート沢山行ってそう」
「そう見えるよね。
実は私も今日が初めてなんです」
金沢さんの問いに嫁が答える。
「そうなんだ。意外」
オレも沢山行ってると思ってたよ。
「東京ゲームショーとか、アニメ・ゲームの
イベントの方に参加してました」
へぇ~。
そうか、コスプレがメインだもんな。
納得。
「じゃぁ、篠崎さん以外はコンサート
初体験なんだね」
ノノンが最後にまとめてくれた。
そんな、会話で盛り上がっていたら
武道館入り口まで到着。
持ち物検査があり、
各人がカバンの中身を見せる。
いよいよ入場だ。
全てを知っているのに
ワクワクが止まらない。




