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(261) コンサート直前①

◇◇◇ 武道館前 ◇◇◇

時刻は13時。


オレと白川さんは、品川から電車を乗り継ぎ

日本武道館へとやってきた。

オレは車よりも電車で移動する方が好きだ。

目的地までの時間が予測できるのもあるが、

遠くへ旅行している気分になれるから。

そうワクワク感が味わえる。

そして椅子に座れた時の高揚感は車では味わえない。

と、バカなことを考えてたら武道館前へと到着。


「うわぁ、並んでる」


白川さんの一言である。

グッズ販売に並ぶファンを見てのこと。

3列に折り返してやがる。

オイオイ、1時間以上待たされるんじゃないのか。


ダダをこねても仕方ない。

目的がグッズ購入なのだから。

オレらは列の最後尾へとつく。


すると、列に並ぶ野郎どもが

白川さんをチラ見する。


そりゃそうか。

こっちらもアイドルみたいな者だからね。


「ズッキーさんですよね。

 写真撮っていいですか?」


1人の男性が白川さんに声を掛ける。

彼氏が横にいるのに、こいつ勇気あるなぁ。

そう言えば TikToker で有名だったっけか。

忘れてたわ。


白川さんはオレの顔色を伺い、

無言の許可を求める。

いいに決まってんじゃん。


「オレが並んどくから撮らせてあげなよ」


そう言うと、白川さんは列を飛び出して、

それに応じる。

すると嫁の周囲に野郎どもが集まり出す。


見かねてボディーガードが近寄るも、

オレが問題ないと目で合図する。


♪ カシャ、カシャ、カシャ


撮影会が始まった。文化際を思い出す。

最近、TikTokの撮影みてないな。

そんな時間ないのか。


グッズ販売の列から抜け出す者が現れ出す。

その者たちを目で追うと

どうやら白川さんを撮りたいようだ。


そのおかげで、列の前方が動き出す。

これは早く購入できそう。

白川さん、グッジョブ!


♪ カシャ、カシャ、カシャ


オレは、白川さんがチヤホヤされるところを

見るのが好きだ。

白川さん自身も撮られるのを好んでる。


「通行の邪魔になります。

 止めてください」


販売スタッフの1人が見かねて、

白川さんの元へと行き撮影の中止を告げる。

まぁ、そうなるわな。


その一言で、ピタリと撮影会は終了し

みな四方へ散らばる。

白川さんはオレの元へと戻って来る。


「意外と早く進んだね」


あなたのおかげです。

その後は、遠目から盗撮まがいに携帯で

白川さんを撮る者が続出するも

オレらは気にしない。


「見て!あっちも結構列になってる」


それは、グッズ販売とは別の

本会場へ入る4つの長い列であった。

ぱっと見1000人はいるのではなかろうか。

チケットは全席指定だ。

早く入ろうが、遅く入ろうが変わらない。

なのに、こんな時間から並んでいる。


お前ら早くね?

気合入り過ぎだろ。

入場順に特典があるならまだしも

なにもない。

オレには理解できん。


特典か。

ふと、あるアイデアが頭を過り、

オレは携帯を取り出しLINEする。


しばらくしてだろうか。


♪おぉおぉ

重低音の低い声が響く。

それは入場を待つ野郎どもによる叫びだ。


♪カシャ、カシャ、カシャ


一斉に携帯のフラッシュが光り出す。

本日コンサートに参加するアイドルの1人が

館内から突然、私服姿で登場したのだ。

列に並んでいるファンに手を振って、

1分ほどで館内へと戻っていった。


「あれ!ハルキの仕業でしょ」

「分かります?」


「分かるよ。

 だってリハーサル中でしょ?

 この時間出てこれないよ。

 自由時間だったとしてもだよ。

 ファンの前に出たら怒られるでしょ」


流石はオレの嫁だ。

アーツの社長は許さんだろうな。


「ハルキ、いいことするじゃん。

 ファンのこと、ちゃんと分かってる」

「だろ?」


褒められるとは思わなかった。

あそこで何時間も待ってる入場者が

可哀そうだなって思って、

さっきLINEで指示を出したのだ。


彼らが、いつから並んでいるのか知らない。

もしかしたら昨晩の可能性もありえる。

努力した人は報わせたい。

オレはそういう考え方だ。

きっと自慢できただろう。


「前々から考えてたの?

 いいアイデアだよ。

 列から離れたくないから

 近寄ることもできないしね」


なるほど。

そこまで考えてなかったわ。


「でしょ?」


そんなやりとりをして、

1時間くらい並んだだろうか。

やっと購入できる番になった。


しかし、販売員の手際が悪い。

そりゃあ、時間掛かるって。

慣れてないのは分かるが、パニクり過ぎだろ。

教育をしたいところだが、今の身体はハルキだ。

後でLINEして、明日は改善していただく。


オレは単なる付き添い。

白川さんが購入している間、じゃまにならないよう

会計の出口で待機することにした。


そして、白川さんがサイリウムを持って登場。

満面の笑みである。

どうやら限定グッズを手に入れられたようだ。

時間はまだ早い。

この時間帯でソールドアウトすることはないだが、

まぁいいでしょう。


購入した物を見せてもらうと、

サイリュームとTシャツ、

アイミーの写真が入ったキーホルダーの3点。

初のコンサートで、その限定グッズだもんな。

ドルオタファンとしては嬉しんだろうな。

そんな幸せそうな嫁を見るとオレも幸せになる。


周囲が白川さんに注目してるのが伺える。

サインをもらいたいのか、

隣の彼氏はダサいと思われてるのか

判断つかんが、この場を離れた方が良さそうだ。


ということで一旦この場を離れ、

休憩することにした。


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