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第81話 メイラの実

 ハイエトはこの国の首都である。ロクスとは一味違った堅牢な壁に囲まれたこの都市は様々な人種が行きかい、比較的きらびやかな街の作りをしている。おおよそ6割方が人間で構成されていてそのほとんどが地方出身だが、仕事面の関係で地方の村で生活をするよりもこのハイエトで生活する方があらゆる面で安全とされ人気が高い。


 反面、浮浪者の数も膨大で貧困からの犯罪発生率はこの国で1番である。


 「本当に大きいですね、ハイエト」


 「う!デルメオはここより大きい。けどここより貧困者が多い」


 「人が多すぎるのもあんまり良くはないね、私はスクリスぐらいが丁度いいよ」


 ハイエトの大門を潜ってすぐに大通りがある、そこを5人で固まって田舎者の都見物のようにキョロキョロとしながら闊歩しているシオン一行。


 現在、シオンは薄い赤茶色の髪色で髪型はポニーテールのように一纏めに括っている。これは黒い髪の色が珍しく目立つためそれを胡麻化すためイリスが作った染色剤で色を変化させているのだ。髪型は念のため変えている。


 「あそこに料理屋があるのだわ、ハイエトの味付けはどんなものか早速ためしてもいいんじゃないかしら」


 ベローズの提案に一行は全員で賛成する。その料理屋は立派な建物でも無ければみすぼらしくもない、別段特筆するべき点が見当たらない普通の料理屋ではあった。だがしかし、ベローズはその料理屋の看板に書かれた献立の一部を目ざとく発見しておりこの提案を行ったのだ。


 その店はオープンテラスのように外に机と椅子が設置されている。無論内部にも席はあるのだが、天気も良いので外の席に居座る事となった。注文は文字を読める者がベローズとイリスしかいないので注文はベローズが行う事になる。


 「これと一緒に食べると美味しいこの店のオススメを5人前、うち大盛りを4人前でお願いするのだわ」


 「はー、そんな細っこい体にいっぱい入るんだ~、すぐ持って来るからちょっと待っててね」


 早速注文を取り一息入れる。普通盛り1人前はイリスの分でそれ以外の全員は結構な量を食べるのだ。少しだけ待つと女将が5人分の食事を持って来る、主菜は細切りにした何らかの肉を野菜とともに炒めた物で何となくチンジャオロースーににていた。だが問題はそこではない、焼き物の皿に盛られた粒状の主食にシオンの視線が釘付けになる。


 「……これ、もしかしてメイラですか?」


 「そうなのだわ。どんなモノなのか食べてみるといいかしら」


 炊かれたメイラが焼き物の皿の上に大盛りで乗せられていたのだが、ここで少しだけ問題が発生する。箸がない。しかし同時に木製のスプーンが手渡されたのでそれで食べるのだろうとシオンはメイラを1すくいして口の中へ。


 「……あー、なるほど……でも……うーん」


 「お嬢ちゃん、あんまり美味しくはないでしょう?でもそれがいっぱい手に入るから安く大盛りに出来るのさ」


 一言で表現するならパサパサしている、それがメイラの味だろう。形は長粒種で色も紫に近い色あい、もし精米技術がこの世界にあるならば味は少しだけ向上するだろうが、現在の状況からは前途多難な問題になるだろう。


 「……と、言う事はハイエトに沢山売っているんですよね。僕等でも買えますか?」

 

 「物好きだね。誰でも買えるけど正直人気はないよ」


 シオンは女将の言葉を聞いてもう1口メイラを頬張る。しっかりと味わい、主菜と同時に咀嚼すれば肉の脂分と溶けあいパサつきが若干緩和される。確かに普段から口にしているモチのような物やフスマの方が柔らかいし美味しいと感じるが、これはこれで十分な味だとシオンは判断する。


 「シオン君、あんまり美味しくはないとあたしも思う、けどこれなら大丈夫」


 「安いって話ですし苗とか種も買ってしまいましょう。手に入ったらイリスさんにまた栽培をおねがいしますね」


 「品種改良はいカガいたしマスルか?」


 「……人体に影響のほどは……?」


 「……」


 「普通に栽培しておいてください」


 シオンの頭の中には功名心らしきものが薄い。これは成長過程で大きな何かを「諦めた」者の特徴だ。決してメイラの実を使いロクスの困窮している人にこれを与え、名を上げようなどとはカケラも思ってはいない。しかし何故シオンがそれを広めようとするのかは何もルロイの言葉やロクスの浮浪児だけがキッカケではなく、シオン自身が諦めた者だからだろう。悲しいかなこれも1つの特徴とも言える。


 決して正義などではなく、ただ悲しい事が1つでも減ればよいと言う、別種の言葉で表すならば慈悲や願いの感情に近い。


 「ごちそうさまです。早速メイラを買いに……宿が先ですね」


 「メイラ自体は逃げる者ではないからゆっくりと集めればいいのだわ。でもシオン、わらわはこのメイラを儲け話にまで繋げようと思っているのだけれども良いのかしら?」


 「それは勿論です。最終的にロクスやスクリス、ルワンにまで広がればそれでいいんですよ。ついでにお金が儲かるなら良い事だらけじゃないですか」


 通りには様々な人種。机の上にはさっきまで大盛りの料理が乗せられていたがすでに空。シオンは上機嫌にニコニコとしながら席を立った。料理屋の女将の「まいどー」の声を背中に受けて一行は宿を探す。


 ……いくら味が不味いとはいえ大量の穀物が他の町や村にまで広がらない理由はひとえに魔物の存在があるからだ。もしシオンの考えの通りメイラがこの大陸全土に広まればどこか遠くで起きている戦争さえも止める事が出来るだろう。宗教が絡まなければ戦争の理由など貧困と飢餓が大部分を占めるからだ。当然シオンの頭の中にはそんな大がかりな計画など存在はしない、しかし異世界より現れた少年のちっぽけな願いはいつの日か実を結び不毛な争いを少しづつ無くしてゆくだろう。


 新たな拠点、ハイエト。そこで口にしたメイラ、1粒1粒は小さな実だがその実は困窮者にとっての希望そのもので、そしてシオンはその希望に達する1手目をその手に収めるのだった。

 

やっとコメw


でも加工するまでは至らないんだな~w

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