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第69話 推定、卵

 「……これは大した売り上げなのだわ。初日だったし銀貨数枚分にもなれば御の字だとは思っていたけれど……まさかここまでとは」


 「途中から変なのがシオンに絡んで来て、ちょっとだけお仕置きしたらそれが受けたんじゃないかな?後ろで見ていたおっちゃん等も何人かドツキあいしてたよ」


 「ファニさんの喋りも良かったですよね、口が悪いけど明るいから何人も釣られて買っていきましたよ」


 「中々やるのだわ、あの猫」


 出店1日目の手ごたえの報告会のようなモノを食事と同時進行で行っている。結果として商品はほぼ全てがはけた、フェブリスキンも商品として並べてあったのだが金額の問題でそれは売れ残りの憂き目を見、少々イリスがムッとしたオーラを放っている。


 テーブルの上には料理と貨幣の詰まった革袋。その革袋を持ち上げれば確かにドシリとした重量に満足感を覚える。


 その革袋の中身である貨幣には金銀銅貨の円形3種と指先に乗せる事が出来る程度の大きさ、長方形の板状の貨幣がある。この板状の貨幣も金銀銅の3種だ。そしてその長方形の貨幣はペンチのような物で千切って使う貨幣で革袋の中にもその千切った後の四角形の貨幣が沢山入っている。


 「ベローズ様、コノ千切った貨幣は元の大きさに戻しマスルか?」


 「その必要は無いのだわ、それをくっつけるのは偉い役人の大事な仕事の一つなのよ……イリス、念のために聞くけれどマゼモノは作れるのかしら?」


 マゼモノとはいわゆる贋金だ。ベローズは一応「念のため」とは言い放ったが薄らと笑みが零れているのを一同は見逃さない。


 「金属の種類ガ少々足りまセヌ、鉛やアルミがアレバあるいは。しかし細かく比重を調べらレレバ見破られる可能性もありマスル」


 ベローズはその言葉に「残念なのだわ」と漏らす。他にも贋金がバレる可能性があるのは千切った時の感触、それと色合いがある。しかしそれはかなりの長期にわたり貨幣の鋳造に携わった者だけだろう。そして贋金作りは重罪中の重罪でバレれば死刑より他には無い。


 「贋金なんて作らなくても今日の売れ行きを見れば必要は無いよ」


 「念のためなのよ、あくまで。どんな手管でも持っておくにこした事は無いのだわ」


 ベローズは貨幣の詰まった革袋をイリスに渡す。これは転送してしまえば最低限でも盗まれる事や紛失する事が無くなるからだ。ロクスには銀行のような制度、機構が無く金銭の管理は100%自己管理で行わなければならない。それを受け取ったイリスは即座に革袋を転送する。


 「シオン様、当機が預かっテイタこの赤い球なのデスガ」


 消えた革袋の代わりに今度はシオンが繭になった時に手に入れた赤い球がイリスの手の上に現れた。


 「解析の途中結果を報告シマス。結論としては地球上には無い成分が大半ヲ占めるため未だ解析不能の物体でゴザマス。しかし仮定として似て非なる物、近シイ物は卵でス」


 イリスの急激な話の展開にシオンはキョトンとした表情でそれを聞いていた。


 「卵……?」


 「ハイ。温めますか?」


 シオンは「あ、何かテレビのCMで何回か聞いた事のあるセリフだ」と思う。一応自分から排出されたらしい推定卵を手に取ると難しい顔でこう答える。


 「コレ、温めると……僕の子供が孵化?したりするんですかね?」


 「おそらくソレハ無いと思われます、無精卵ナノデ」


 「うーん、一応保管しておいてください。生ものだから腐ったら捨てるかイリスさんの研究材料にしてください」


 結局よく分からない卵状の赤い球。ソレをイリスは転送し、食事を再開する。明日はロクスの外に出て採取を行うたために就寝の用意をして今日という日はゆっくりと幕を閉じた。




 荷車に乗せたノコギリやナタがデコボコ道で揺らされガチャガチャと音を鳴らす。ロクスの門より外に出ると比較的近くに森がある、その奥には川が流れていてそこは魔物の生活圏にもなっていた。


 数組の冒険者達がシオン達に向かって手を振っている。これは敵意は無いとのアピールと同時に自分達に危険が迫っていたら教えてくれ、もしくは助けてくれと言った意味合いが含まれている。シオン等は当然それに手を振り返す。


 「結構伐採されてますね、ロクスの近くだし当然か」


 「う!それでも毎月かなりの被害が出てる、組合にたむろしている冒険者の話では金銭的にやってられない額だと」


 草原のように草が伸び放題になっているが、所々に朽ちた切り株が見える。その奥にはまだまだ手付かずの広大な森があり、それを全て伐採してしまえば資源的には乏しくなるが魔物被害は減るのだろう。しかしそこまで細かく考えるよりも先に魔物、野生動物は襲い掛かって来る。


 とある方向で見るならば構図的に生存圏を拡大するのがロクス側、それを防衛するのが魔物側に見る事も出来なくはない。正義や正しさは人間が考えて作ったモノであり、魔物側にとってそれは悪そのもの。しかしそんなモノは熾烈な生存競争を勝ち抜いた後で考えればよい事である。


 「ここら辺で伐採しようか、冒険者よりも武装した木こりって言った方がしっくりくるよね。ルロイのおっちゃんとカザンは見張りよろしくね」


 「1本でも切ってしまえばもう荷車に満載ですね。ほかの人達が居なければ変身してすぐに終わりそうなんですけどね」


 「じゃあ私が隠しておくから腕だけ変化させて早めに仕事を終わらせようか」


 シオンが腕の部分だけを変化させノコギリを取り出した時、数十メートル向こうの冒険者の一団から笛の音がけたたましく聞こえる。これは木を切り倒してそろそろ自分達は帰るといった合図だ。これをしなければ木を切るのに集中して、気が付いたときに周りに自分達だけしかいなくなる状況を少しでも緩和するための仕組み。怠れば怪我人や死亡者が増えてしまう、それが積み重なれば最終的に冒険者の数が減り外出の危険性が上がってしまうのだ。


 シオンがノコギリで身の詰まった硬めの木を切る。このノコギリは勿論購入した物ではなくイリスの作り上げた物、そのノコがシオンの手により高速で前後する。ニーアは木を倒す方向に向かって手を添え、同時に警戒。


 一見のどかな風景に見えなくも無いがどこに魔物が潜んでいて飛び出て来るかは分からない、細心の注意を払い、警戒をして丁度よい程度なのだ。

 

話が地味だなw

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