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第65話 街

 ロクスの街。川に面して設計された街には大きな堤防がその防御壁の1つを担っている。その他3方にもヒトの生活を守るため、堅固な壁が外部を見下ろすような形でそびえ立っていた。内部にはその川の一部を引いて来た用水路が張り巡らされており、人々の生活に大きな貢献をしている。


 「はい、次の方どうぞー」


 ロクスの横を流れている川からおよそ数百メートルは離れている場所には巨大な門。こちらは裏門と呼ばている、そこには数台の荷車がロクスに入る手続きを行っていて、シオン等一行はその最後尾に並んでいた。


 検問をしている兵士風の男の格好は金属製の部品を所々に張り付けてある革鎧に長剣を佩いている。門の上を眺めれば弓兵がこちらに向かい手を振っている。その友好的な態度にシオンはパタパタと手を振り返す、するとノリが良いのか今度は数人の弓兵が手を振り返してくる。


 「結構のんびりしてますね。僕の知ってる限りだと門を潜る前に門番さんと一悶着起こすんでが」


 「普通、街の職員と揉め事を起こしたら即退去命令が飛んでくるのだわ。シオンのその偏った知識はあまり口に出さない方がいいかも知れないかしら」


 「シオン君おめーはいつも面白い事を言ってるニャー」


 そんな風なお喋りをしながらも列に並んでいる荷車はどんどんとロクスに入って行く。


 シオン等の2台の荷車には木材やズダ袋に詰め込まれた乾燥食料品、雑に鞣された革や縄が積み込まれている。これ等はシオン等がロクスに入るための措置の一環である。冒険者兼行商人の表の顔がシオン等の今の肩書になっていた。そうする事により難民や盗賊の類だと疑われず、簡単な荷物検査だけで町中に入る事が出来る。


 外の世界には魔物がわんさと湧いており、ロクス側としても食料や物資が外から入って来なくなるのは非常に困る事だからだ。ロクスは大きな街ではあるが、それだけの規模になると当然食糧品や生活用品が大量に必要になりそれを全てロクスのみで賄うのは不可能。そこでロクス側は行商に限り通行税の全面的免除の政策を施していた。


 だがしかし、その政策1つだけでは物資がまだまだ豊富とは言えない状況であり、これ以上街の規模の成長は無理だろうと予想がなされている。


 「こんにちは、行商の方ならば荷物の検査をさせてもらいますがよろしいですか?」


 「どうぞニャー。ニャー達の作った干し肉を味わうが良いんだニャー。硬すぎて歯が圧し折れても文句言うんじゃねーぞニャ」


 「すいません、ファニさんはちょっと口が悪くて……」

 

 「ああ、いや気にしないで欲しい。門番を長くやってるからこの子の顔も口調も覚えてるんだ。こちらは業務上の理由で丁寧な言葉遣いってだけなんだよ」


 門番は無精ひげを生やした屈強な体つきの男でしっかりとした大人の対応を見せる。荷台の中の木材や革製品を手に取りひっくり返し、ズダ袋の中の干し肉を1つ取り出してナイフで削ぎ、それを口にした。


 「美味しいじゃないか。木材はもうちょっと長いのが有難いけど検品は大丈夫だよ。ようこそロクスへ、互いに繁栄あらん事を」


 門番はニカッと男くさい笑みをたたえ、胸に軽く右手を添える。これはここ等一帯の敬礼のようなモノであり、文明圏での挨拶だ。シオンはそれと同じように右手を胸に添た、2両の荷車はそれと同時にロクスの門を潜ろうと動き出す。こうして無事に一行はロクスの街中へとたどり着くのだった。


 街の中でまず最初に目に映ったのは何件もの宿屋の群れ。中央に大通りを挟み、両隣にはみすぼらしい建物や立派な建物が所狭しと軒を連ねる。その建物の横には厩舎のような建物が隣接しており、そこには馬や河馬のような動物が飼い葉を食み、ザブザブと水を飲んでいる。


 通りには沢山の人。全身毛だらけの獣人種、青い肌に角の生えた魔族、はたまた薄い茶色の髪の毛をした普通の外見の人間。TVの中でしか見たことが無いほどのヒトの群れをシオンは何となくだが感激している。


 「う!シオン君に注意!街の奥の方、端の方には行ったらダメ」

 

 「……?どうしてでしょうか?」


 「やっぱり知らない。貧民窟がある、そこに行くとスリとか人攫いがたま~に出る。シオン君はそんな連中に攫われてきっとスケベな事を……!」


 「具体的な場所は壁の4つ角の辺りかしら。シオンなら攫われてもある程度は対処出来るだろうけれど、出来るだけ近づかないに越したことはないのだわ」


 「何かしら外出の時は私が一緒に行くからちゃんと言うんだよ、シオン」


 貧民窟と呼ばれる存在は大きな街にはほぼ必ず存在する。ロクスの場合、そこに住む浮浪者とまでは言えない者達は正確に言うならば落伍者ではない。病気により働けなくなった者、魔物との戦闘により大怪我が原因で金銭を得られなくなった者等が大半を占める。人種を問わずその者等は発生し、そして様々な理由から他の村落に移り住む事が出来なくなった者をロクスの町が保護と言う形で場所を与えているのだ。


 しかし、それが長い年月が積み重なる事により増大、肥大し次第に野盗崩れのような者、犯罪者紛いのような者までが紛れ込むようになり今に至る。その中でも真っ当な者は市街中の清掃業務などを担ったり、ロクスの制度で僅かばかりの金銭を得て何とか食いつないでいる。この世界においての最後のセーフティネットの役割として貧民街はそこにあるのだ。


 無論そこから発生する犯罪はロクスにとって悩みの種でもあるがそれはまた別の話。


 「とにかくまずは僕等の宿を探しましょう、何をするにもまずは落ち着いてからですね」


 「そうだな。オレは自分の家に一度帰る事にしよう、後からすぐに合流するからそれまでに宿を決めていてくれ」


 「カイハにもっと甲斐性っつーモンがあれば全員を泊めても大丈夫な家になってたのにニャー。そこに建ってるボロ宿とそんなに変わりがねーんだニャ」


 「う!……とは言っても屋根と壁があるのは有難い」


 ボロクソには言われているがカイハはケロッとした表情をしている、言われ慣れているのだろう。そしてカザンが前に出てオススメの宿を教えると一行を先導する、ここでファニとカイハが別行動をし、宿が決まればカザンがその宿を知らせに行くと言う手はずになった。


 「あー……ちょっと俺も調べたい事があるんけど、またフラフラしてても良いかな?」


 ルロイである。ロクスの門を潜った辺りから態度はソワソワしたモノになり、昔を思い出すかのように街中と門の外を交互に見比べていた。


 「……奥さんがいるかも知れないんだよね?宿が決まったら探しに行くと良いよ」


 「ありがとう……」


 ほどなく宿は決まり、ニーアは数枚の銀貨をルロイに持たせ、ルロイは一礼をして小走りに街中へと姿を消した。

 

カイハの持ち家にはファニとカザンが同居しています。そしてロクスでの人口比率は4割が人間で、街の職員はどんな種族でも分け隔てなく就く事が出来ますw

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