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第64話 金の卵

 セブの村の正門を背にシオン等とカイハ等は一団となってロクスへの道を行く。爽やかな日差しと風はその旅路を祝福するかのようだった。名も知らぬ花が風に揺れ、軋み知らずの荷車の車輪が回る。無論その荷台には人が積み荷として乗り込んでいる。


 今回、その荷車の台数は2台に増えた。シオン等の提携先であるカイハ等の機動力を考慮してイリスがレストアしたオーバテクノロジーである荷車を増台して貸与したのだ。しかしその荷車の秘密、機能はまだカイハ達にはバラしてはいない、ベローズももう少しだけ人となりを観察したいとの事が故に。


 「馬車に乗った事はねーけどみんなこんな乗り心地を味わってるのかニャ?」


 「あたしは馬車に長時間乗ると腰をやられると聞いた」


 「カザンは腰をやられたらシオン君にさすってもらうニャ。スケベそうな声で誘って悩殺する役割だニャー」


 「う!その発想は無かった!」


 「聞こえてますよ?」


 「う!うぐー!腰をやられた……!シオン君、弟は姉の腰をさすって看病する務めがある……ある!」


 2台並んでのんびりと進む荷車は暖かな陽光のせいか、緊張感のない会話を誘発させる効果があるようだ。カザンの腰痛発言を嘘だとも分かりつつシオンは隣に並んだ荷車にヒョイと飛び移る。そしてうつ伏せになっているカザンの腰の辺りに手を当て、何となくマッサージをするように動かす。


 「ここでいいですか、カザン姉さん」


 「……んエ”- んぐェ”-」


 「……?」


 「カザン、スケベそうな声ってそうじゃないと思うニャー」


 「う!?違うの!?」


 何か必死なのは伝わったけど潰れたカエルのような声で誘われてもちょっと困るな、異世界だし地球とはかなり感覚?が違うんだろうな、種族も違うし。と言うのがシオンの感想だった。カザンは生ぬるい視線をその全身に浴びつつも荷車はロクスへの道を行くのだった。




 道中、何体もの魔物が襲ってくるがそれを全て撃退、討伐し危なげなく距離を稼ぐ2台の荷車。そして撃退、討伐を行えば当然魔物の死骸が出るのだがそれを全員の目の前で回収する。これは素材としての魔物の死骸を無駄にしないのと、まだ何とか誤魔化しの利くイリスの回収を見せるためだ。もし仮に誰かが言いふらしたとしても、知らぬ存ぜぬでギリギリ通せるし、その後に切ると言う判断を行うため。完全に身内扱いするためには必要な措置でもある。


 「……イリスちゃんもヤベー奴だったニャ」


 「ファニ姉、これ秘密にしてたら密輸もやり放題」


 「つまり……もう金に困る事が無いって事なのかニャ?」


 「言いふらされるのは困るけれども、その時はわらわ達の恩恵に与れなくなると思った方がいいのだわ……ここまで言わなくても流石に分かるかしら?」


 「ニャーの夢は禁制品で御殿を建てる事だニャー。今思いついただけなんだけどニャ、グシシシ」


 「……そこまで悪い事はしないと思いますよ?」


 開けた場所で休憩を取りながらイリスの回収機能を目の当たりにしたカイハ等がシオン達の評価を更に一段階引き上げる。イリスの回収は目の前から物が消えてしまうようにしか見えないので「証拠」が残らないのだ。故にギリギリ見せられる範囲ではあるが、あまり疑う必要も無さそうだった。ファニとカザンがマーキングをするかのようにベローズに体をゴシゴシと擦り付けているからである。


 「ベローズさん、オレの実家の資金力は本当に必要なのか?」


 「資金力じゃなくて欲しいのは繋ぎの顔かしら。カイハ自身にわらわが求めているのは顔と盾役なのよ」


 「なるほど、納得いった。それともう1つ、もしかしたらなんだが例の一枚皮と石鹸もイリスが関係しているのか?」


 「それにはまだ答えられないのだわ。でも、そうね……何となく貴族が納得出来る答えを用意していて頂戴。それが最初の重大な依頼になるかしら」


 「う、む……了解した」


 交渉や言いつけは力を持っている方が圧倒的に有利に進む。ゴリ押しで押し切られた形にはなるが、しかしカイハはベローズの言葉にある気付きを覚える。それは無理に取り込もうとしてはいない事だ。極論、顔と盾役などカイハ以外にも出来るし、それが無くとも独力で資金を大量に得られるビジョンがカイハにも見えるからだ。


 どんなにヘタを打ったとしてもファニの言葉通り密輸も出来る。証拠らしい証拠が発見出来ないからだ。道中に見せつけられた武力、指揮も的確である程度の暴力は簡単に跳ね返せる力もある。それ以外にもまだ何かしら隠している風にも感じた、それこそ一般人にしか見えないルロイからもだ。


 こうなってしまえば諸手を上げて大人しく従うのが普通の反応だろう。わざわざ儲けの種を捨てるようなバカはそう居ない。何か国かを渡り歩いて見聞を広めた経験のあるカイハは世間の厳しさや底の無いヒトの悪意を知り抜いている。


 第一、地べたを舐めた経験のあるファニとカザンがああまで懐いているのがカイハにとってかなり好意的な判断材料になっているのだ。


 カイハは自分を戒める「後は欲をかかない事だけだ」と。


 「んじゃあそろそろ出発しようかな、日が沈む前にもっと進んでサッサとロクスまで辿り着くのが得策だね」


 「それじゃあニーアちゃん、ニャーと競争するニャー!」


 休憩は十分に取りロクスへと進む事を再開する。一団は新たに覚えた制度の「ジャンケン」を駆使し交代しながら爆走してゆく。一夜を無事に乗り切り、急な天候不良により雨宿りを余儀なくされたりはしたがそれでも確実に進んで行った。


 そして3日目の昼頃には一団の目的地である都市「ロクス」へと到着する。


ちょっと短め。


前回の話で罠のくだりがあったんですが、そもそも「罠自体を売る」と言う事が地球上にはあります。しかしこの異世界では金属の入手と加工の技術的なモノに問題があり、発想は凄いが作りは簡単と言った事がままあります。簡潔に書くと「ブラックボックス化が出来ていない」から簡単に模倣が出来てしまう、ですw

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