表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/87

第63話 罠の成果

 木で出来た床の音が2種類に分かれている「ゴンゴン」とやや硬めの靴底が床を叩く音と「シャリシャリ」と草の茎で出来た草履の床を引っ掻く音だ。


 この違いにネコミミの獣人であるファニがいち早く気が付く。


 「よく見たらシオン君は見た事もねー靴を履いてるニャ。色形は普通だけど細部が何か言葉に出来ない作りになってるニャー」


 ニーアの説教タイムは終了し、来客であるファニとカザンが宿屋の室内に招かれた。室内ではシオンの帰りを全員で待っていたのか雑談交じりの相談、今後の計画等を話していた。そこにシオンが帰ってきてまずは報告を終了させる。その報告とシオンの帰還に全員が胸を撫で下ろし、更には来客の2人を再び紹介する流れで今に至る。


 「目が良いのだわ、ファニ。これは吸血族秘伝の製法を用いた特別な具足なのよ、少しだけ秘密をバラすとこの靴1足で家1軒の値段になるのだわ」


 「ファー!ニャー達の提携先はまさかの金持ち吸血族だったニャ!?カザン、これは泥棒に戻らなくても生活が出来そうじゃニャいか!?」


 「う!う!安定のある生活は何にも勝る……!でもシオン君に養ってもらうのも魅力がある……!」


 嘘を吐く時は半分程本当の事を混ぜれば信じられると言われるが、こうも簡単に騙せるとはある種の懸念材料にもなりかねない。しかしこの場は好都合とベローズは判断した。


 カイハ達チーム全員の人となりをまだ把握出来ていないので仕方のない嘘である。しかし時間さえあれば信用と信頼を得る事になりいずれ解決するだろう。そして嘘から真の形になるが、シオン等の履いている靴は見る目のある商人がその手に取れば家1軒、それ以上の価値があると評価するはず。


 「思い返せば罠を仕掛けてる時も足音が静かだったニャ」


 「ファニ達は罠を使って今まで稼いでいたのかしら?」


 「そうニャー。基本的には罠を仕掛けて安全圏から弓で仕留めるの繰り返しニャー」


 「明日にはリカードが掛かっていると思う……成果を見せる」


 罠で獲物を捕獲するのには通常数日の期間が必要になるがカザンは自信満々に明日、リカードが掛かっていると豪語する。それを聞いているシオン等は「ほー」と言った表情だがルロイは1人ギョっとした表情に変化した。シオン等と違い罠猟の基本的な事を知っているのだろう。


 軽い談笑、罠猟の説明の後にはファニとカザンの弓の腕前を披露する事になった。その弓の腕前もかなりのモノで、僅かながら弓を扱う事の出来るニーアがその2人の腕を褒める流れになる。ただファニとカザンはこうニーアに返す事になるのだった。


 「耳長には弓で勝てないニャー。あいつ等はちょっとどころじゃなく感覚がおかしいニャ」


 耳長。弓の得意な魔族の一種として有名な種族で、奔放な性格の者が多く長命。その弓の腕前は頂点の者になると目をつぶり、的を背後にしていても必ず命中させる程の腕があるとはファニとカザンの談。


 そしてシオンの感想は「ちょっと意味が分からないし、あり得ない、ですよね?」だ。しかしこれにファニとカザン両名は首を横に振りそれを否定、魔法は使っていないがそれはもうすでに魔法の領域の腕前との事。


 


 ファニとカザンが訪問後、提携のすり合わせを終えてカイハの元へと帰還し翌日。天気は良好、セブの村の正門前にはシオン等とカイハ等が全員顔を合わせている。


 「じゃー今日はニャー達の成果を見せようと思ってるニャー。今度はニャー達が大トカゲの炭焼きをごちそうしてやる番だニャ!」


 「う!乞うご期待!」


 背丈の低いショートヘア2人がピョンピョン跳ねながら門を元気よく潜る。その先導に全員でゾロゾロと付いてゆき、和気あいあいとした雰囲気で出猟する。


 本来ならばカイハの仕掛けた罠は他人に見せるようなモノではないが、今後互いに世話になる提携先だと言う事で手の内を晒す決断をしたのだ。カイハの罠は少しだけ特殊な作りになっており、設置した場所に獲物が踏み込むと飛び出してその足を絡め取る特別製の罠だと言う。


 その罠の内部のカラクリを簡単に説明すると、タケで作った弓型のバネの作用で飛び出る仕組みになっているのだ。一度内部を見てしまえば簡単に模倣出来る作りなのでそう簡単には見せたくないのだが、今回は見せるとシオン等に伝えている。


 「昨日も気になってたけどベローズが昼間に出かけられるのもその目の布のせいかニャ?」


 「ご明察なのだわ。でもこれはかなり特殊な作りをしているから今の所わらわのみしか持っていないかしら」


 「……やっぱりそれも……高額?」


 「吸血族以外はそれほど必要になるモノじゃないけれど、必要としている者にとっては喉から手が出る程のモノになるのは間違い無いのだわ」


 「ニャーは今の内からベローズに媚を売っておく用意があるんだニャー」


 「う!あたしはその横でシオン君にもちょっかいかけておく」


 姦しくキャッキャと話しながら森の中へと歩みゆく。本能の成せる業なのかシオン等のリーダーをベローズと見抜き、その周りをグルグルと回りながら物理的にも精神的にも距離を詰めていくファニとカザン。その犬や狼の群れで行う狩のような手法の妙味に男たちは心の中で唸りを上げるばかりだった。


 目的地に近づくとそこからガサガサと草木をかき分けるような音が聞こえてくる。


 「う!あたしの目算通り!」


 「これがニャー達の腕前ニャー!噛みつかれたら大怪我するからここで弓の出番だニャ」


 チラチラとドヤ顔でシオン等にアピりながら弓を大トカゲ、リカードの頭部目掛け矢を射出する。


 ドッ!とその矢はリカードの頭部に吸い込まれるようにして命中するが、リカードはヨダレを撒き散らしながら大暴れした。あちこちの木に頭部から生えた矢が当たり、折れる。しかしその様をじっくりとファニとカザンは観察し、落ち着きはらっていた。


 両名とも左手に弓を持ち、右手を横に広げて「出るな」のサインを後方に送る。しばらく経つとリカードはゆっくりと力が抜けてゆき、ついにはグッタリと地面に伏して動かなくなる。力尽きたのだ。


 「お肉確保したニャー!ベローズ、ニャーを褒めてもいいんだニャー!」


 「う!シオン君、姉であるあたしを褒める」


 150cmはあるだろうかその大きな体躯を2人で持ち上げ、頭を落とした後に籠の中へ。川辺の罠にも数匹の川魚がかかっておりこれも確保して森を出る。大漁であった。


 その日の夕方にまたもシオン等が宿泊する宿の庭で宴会さながらの炭焼きパーリナイが行われた事は言うまでも無い。


大トカゲ「リカード」は前作「アジト」で名前が無かったのでこちらで名前を付けましたw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ