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第59話 パーリナイ

 宿屋の一室にはニーア謹製の壺が4つと燃やすぐらいしか使いどころが思いつかないボロの衣服が机の上に鎮座している。壺の中にはなみなみと灰が詰まっており、イリス以外はこれを何に使うのかが想像出来ない。


 「で、物々交換中にそのカイハと言う冒険者と仲良くなった、と言う事かしら」


 「そうなんだよ、イリスの作ったふぇぶりすきんをかなり気に入っていたみたいなんだ。何に使うんだろうね?」


 「奥様、フェブリスキンは衣服にも外套ニモありとあらゆる物に使用出来る万能合成皮にゴザリますれば」


 「イリスさん、灰は何に使えるんですか?」


 「灰を使用し現在製作可能なアイテムは石鹸、洗剤、研磨剤にゴゼます」


 一同はイリスの「石鹸」と「洗剤」の言葉に反応する。特にベローズは食いつきは中々のものでバイザーの奥の目が光り輝き金貨のシルエットを形作る。


 「……でも、一般の人達はお風呂に入れないから石鹸はあまり意味がないんじゃないでしょうか?」


 「シオン、世の中には貴族と言う特権階級が存在しているのだわ。ソイツ等に売り付けられるよう画策すればいいだけなのかしら」


 「んー、それならカイハに掛け合うのがいいかもね。もしかしたら貴族の関係者かもしれないからさ」


 ベローズはニーアに「でかしたのだわ!」と絶賛の言葉を送り小躍りを披露する。ちなみにこの部屋の中にはルロイも居るのだがこういった金銭面の話には参加する事はなく「コイツ等すげえな……」といった表情を崩す事は無かった。元農夫には無い面の皮の厚さと金に対する執着がルロイにそんな思いを抱かせる。


 続けて石鹸販売計画と新たな資金繰りの相談をシオン等一行は画策する。イリスの転送を用い食料品を販売してはと意見が出ればコスト面、純利益面での反対意見が飛び交い、レストアを用いる修復業務はどうかと意見が出ればやはりこれも純利益面で問題が生じる。そんな話を長々続けて最終的にはルロイの「ロクスに着いてから状況を見て判断でいいのでは?」と言った意見に落ち着きを見せた。捕らぬ狸の皮算用は不毛な時間を作ってしまうのだ。


 時間は夜になり、辺りは2つの月が照らす明るい夕闇に包まれた。


 「よぅ、ごちそうになりに来たぞ」

 

 「丁度いい時間に来たじゃないか、そこの2人がカイハのお仲間かな?」


 シオン一行が宿泊している宿屋の庭先を借り、肉と野菜を用意した後、炭の火加減が丁度いいあとは肉を焼く段階の頃にカイハはやって来た。その横には冒険者仲間と思われるカイハの「ツレ」が2名付いて来ている。1人は子供の背丈ほどでネコミミを備えた獣人。もう1人はやはりこちらも子供の背丈ほどの人物だった。


 「そうだ、背は小さいけど立派な大人なんだ。ほら、自己紹介だ」


 「う……カザン……サティカザン」


 「ニャーはキーファニカムだニャー。ファニと呼んでくれていいニャー」


 「カザンは小人族でな、この背丈で大人だ。ファニはただ背が低いだけ。2人とも弓の腕前はかなりのもんだ、随分助けてもらっている」


 カザンは明るい茶色のショート、ファニの方は青灰色のショート。髪の毛は弓を使うので邪魔になるのかバッサリと切り落としている。どちらもシオンより頭1つ分背丈が低い。快活なファニの真逆のようにカザンの方はおどおどとしているように見えた。


 カイハ側の自己紹介の後、すぐさまベローズとルロイが自己紹介を交わす。明るいが夜の暗さでベローズの目が緑色に光っているのが目立ち、ファニと呼ばれたネコミミの獣人が「吸血族!初めて見たニャー!」とベローズを指さし興奮気味にピョンピョンと跳ねる。


 「まあ、まずは肉を焼こうかな。ドノイスは丸々1頭分残ってるからいっぱい食べても問題無いよ」


 「ニーアちゃん太っ腹ニャー!」


 こうして焼きドノイスパーリナイが火ぶたを切る。2センチの厚さはあるだろうブ厚い肉を豪快に焼き台の上に乗せる。油を下に落とすためにスリットが数条入ったプレートはカンカンに熱されていてジュウッ!と腹の減る音を奏でる。しかもプレートは大人数用にイリスが作った物でまだ肉を乗せられるのだ。


 何枚もの極厚ステーキさながらの肉が並んだ、その隅の方には申し訳程度の野菜がじっくりと焼かれている。味付けは少々物足りなく感じてしまうが塩と物々交換で手に入れた味噌のような調味料。


 肉は焼け、油が滴り落ちて炭火の上に落ちた。その瞬間香ばしい油の焼ける匂いが充満し白煙は天に昇る。空に浮かぶ2つの月にその煙がかかるがその風景を誰1人として見てはいない、焼けた肉は全てを凌駕するのだ。


 「美味ぇだニャー……お金の心配せずに喰らう肉のこの美味さだニャー」


 「ファニ姉、もっとお淑やかに……」


 「カザン、こう言うお呼ばれの時はアホみてーに美味そうに食うのが礼儀なんだニャー」


 「う!なるほど」


 礼儀かどうかは定かではないが、確かにそのほうが喜ぶ人は多いだろう。カザンは微妙にファニを見習い妙な表情でピョンピョンと跳ねながら肉を頬張っている。


 「お二人は姉妹なんですか?」


 「む!おめーがシオン君だニャ?カイハからカワイイって聞いてたけど本当にカワイイ野郎だニャー!質問に答えてやる、ニャーとカザンはデルメオって所から流れてきた元孤児だったんだニャー」


 やたらと明るい口調だが元孤児と言う単語が出てきてシオンは少々面食らう。しかし大きな肉を頬張りながらテンションが上がったのかファニの喋りは止まらない。


 「あの時は毎日腹が減ってたニャ、けど一念発起してカザンと2人で冒険者になってからすぐカイハに拾われたんだニャー」


 「ファニ姉、雑」


 「いや、何事かをやる前に拾われたんだから大体合ってるニャ?とにかくカザンとは血の繋がっていない義姉妹ってやつニャ」


 何かを思い出すかのようにカザンが微妙な顔つきになり、そして「大体合ってる……」と独り言ちた。雑なように思える会話でも要点だけはしっかりと抑えていたようだ。そしてシオンはもう1つ気になった単語について聞いてみる。


 「デルメオって聞こえたんですが、どんなところなんですか?」


 「おめーシオン君、デルメオを知らないってかなりのモンだニャー。よっしゃ、ニャーが分かりやすいように教授してやるからよーく聞くんだニャ」


 背丈はシオンよりも低いが圧倒的上から目線と言う器用な真似でシオンに対し教授を行うファニ。シオンはこの世界の事をほぼ知らないので素直にその言葉を聞き取ろうと真剣に聞く姿勢をとる。


 「デルメオっつー所は竜人の都なんだニャー、毎日毎日戦争の事が話題のつまんねー都市だったニャー」


 「……」


 「……」


 「え!?終わりですか!?」


 ファニはモガモガと口いっぱいに肉を頬張りながら「え?そうだニャ」と言わんばかりにすまし顔を作る。


 この後、各自満腹になるまで肉を食べ、情報交換やどうでもいい話は続き互いに面識を深めるよい時間を過ごした。


イリスはこっそりと生ハムも作っていますw

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