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第57話 超技術

 ロクスの街まではエイブの村を大きく迂回する形で獣道に近しい道を一行はゆく。電動荷車を引く係は今はルロイが務めていた、そしてその荷車の中にはそれ以外のメンバー全員が箱の中から外を覗く猫のように流れる景色を眺めている。無論それに飽きたらシオンへのセクハラが火を噴く事だろう。


 天気は晴れ、湿気は少なく夏の日差しだが皮鎧を脱いでいれば汗をかくような暑さにまではならない。


 「ところで、さっきシオン君達が仕留めた魔物が目の前で消えたのは何かの魔法なのかい?」


 「んー、何と言いますか……上手く説明出来る気がしないんですよね。魔法ではないんですが僕にとっても魔法のようでして」


 イリスの転送の事をルロイが訪ねているのだ。この事を尋ねる前、つまりは鉱山で採掘中もルロイはイリスの行動を見る度に目を白黒させていた。そしてそれが今しがた我慢の限界に達したというワケである。


 「ルロイならもうイリスの秘密を喋っても良いような気もするのだけれども、シオンが説明出来ないならわらわ達も説明は不可能なのだわ」


 「え、あ……秘密だったなら良いんだ。どうしても聞きたいって事じゃなくて気になりすぎたと言うか、その……あまりにも不思議すぎて」


 人目の多い場所ではそれほど機能を使わないイリスだが、逆にイリスの機能、秘密を知る者たちの前だけではかなり積極的に魔法じみた行動を披露する。新参であるルロイにはそのイリスの行動があまりにも突飛なうえに必要分しか喋らない、そして口を開けば聞いた事のない単語が飛び交うなど、どうにも聞きづらい雰囲気が出来上がってしまっていた。


 やもすればこのメンツの中で最も普通、常識的なのはルロイなのかもしれない。


 下山をして丸2日。身体能力の高い者たちが交代しながら荷車を引いて移動するのでその距離はかなりのモノになっている。ゆるい丘の上を登り切った場所から景色を眺めているとやや遠くに村落のようなものが見えた。


 「村だね、あれは。あそこに到着したら今日の移動は終わりかな」


 「魔物肉がかなりあるはずだから何か有用な物と交換出来たらいいのだけれど、あとあの皮」


 道中は長閑な景色が広がっているのだがかなりの確率で魔物と遭遇する。そのほとんどをニーアの鼻で見つける事が出来、先制するので楽に狩れた。そしてその獲物は食べる事が出来ない魔物と食べられる魔物とで分けられイリスが管理、加工するのだ。


 中でも食べられない魔物の代表である小人のような姿をした「フェブリ」は使いどころが少ない。が、閃きと言うか謎にはなるがイリスの案でフェブリの皮で作った「羊皮紙」が提案され、その現物を1枚だけ一行はその目にした。その「羊皮紙」を見た全員の感想は一律で「質は良いけど何か気持ち悪い」である。


 直後、イリスはもう1品をシオン達の前に披露する。それはレジャーシート大の大きさのフェブリの皮だった。色は灰紫のまだら模様とでも言えばよいのか、何とも表現し辛い色で驚くべき事にその皮はデコボコが全くなく、ついでに継ぎ目の無い合成皮のような出来だった。


 このフェブリの皮を見たシオン達は流石に絶句する。どうやってこんな加工をしたのかとベローズがイリスに問えば「肉と肉、皮と皮を接着スル技術がござます」と答えた辺りでベローズは何かを諦めるかのように押し黙った。


 とは言えそれはそれで使いどころはあるだろう。原材料を聞かなければ妙な色合いをした特級品の1枚皮なのだから。


 「あの皮の色合いさえどうにか出来ればもの凄い高級品として売れそうなんだけどね。どうにかなんないの?イリス」


 「奥様、アノ色合いこそがフェブリスキンの持ち味と当機は心得てオリマスる」


 不気味な色合いの皮製品にちゃっかりと名前まで付け、着色する意思は無いとの主張をするイリスである。シオンはTVで見た知識の1つである「ロボット3原則」は未来の地球には適応外の原則なのだと妙な感心をしてしまった。まあそもそもイリスはロボットではないのだが。




 ゆるやかな丘の上から発見した村落へと辿り着く。どこかで見た事のあるような掘っ立て小屋、村の隅でモウモウと煙るヨモ草の煙、畑には農作物が所狭しと並んでおり、軒先には藁で編んだ草履がズラリ。どこかで見た事のある様相の村はこの地域の8割がたを占める景色になる。強いてこの村の特徴を上げるなら子供の数が少し多いのと、村の防護壁の整備が万全の状態と言うところだろう。要するにはどこにでもある村落だ。


 「おねーちゃん達は冒険者のひと?」


 「そうだぞーガキンチョ、私達はず~っと向こう、海の辺りからここまで旅をしてきたんだよ。見たことはあるかな?海」


 青っぱなを垂らし、猫のような尖った耳をピコピコさせた子供が物珍しそうにシオン等一行に話しかけてきた。ニーアはカラカラと笑いながら受け答えを楽しんで、軽く村の状態や何事か入用の物は無いかを探っている。もしここで医療関係に詳しい人物がいたならば青っぱなは風邪などが完治しないまま放置している状態だろうと推測したはず。


 ニーアは宿泊施設の有無をこの子供に尋ねた。するとネコミミをクルクルと頭の上で回しながら「あっちにあるよー」と指をさす。寒村過ぎれば宿泊施設、宿などが無い村まであるのだ。お駄賃代わりの干し肉を子供に渡して一行はまずその宿泊施設にまで足を運ぶ。


 「宿で一息ついたら荷物の整理を兼ねた行商の真似事をするのだわ」


 ベローズの「行商の真似事」というセリフにやはり目をキラキラさせるシオン。ルワンの村では塩を隣村まで運搬したのを昨日の事のように思い出した。この村では本格的な物々交換になるだろう、何せ食肉類は言葉通り山ほど、売るほど狩ってきたのだから。


 「何だか……何だろう、ちょっと懐かしい感じがするからこの村の中を見て回って来ても良いだろうか?」


 「……ルロイはハッキリと意識を取り戻したら4年以上の時間が経ってたのかしら、何でも懐かしく感じるはず。問題無いのだわ」


 この村はルロイの故郷の村というワケではないが、どこか何かがルロイの琴線に触れたのだろう。宿の場所を確認するとフラリと歩いて村の中央に向かいながら歩いて行った。


 防護壁がシッカリとしたネコミミの魔族が多く住まう村。そこでシオン等はひと時、食肉の行商人として羽を伸ばす。


地下研究所を含むイリスの技術は偏りがあるうえに、創造主による禁忌としているモノが多々あります。

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