表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/87

第54話 カメレオン男の本名

 中型の鳥、恐らくは鷹のような猛禽類が空を舞っている、どこかで獲物を探しているのだろう。そんな事を考えながらニーアは担当である見張りをボンヤリしながらこなしている。


 ジャンケンと言う制度をシオンに教わった。パーはグーに勝ち、グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝つ。3竦みを利用した見事としか言いようのない遊戯性のある勝負事。このジャンケンの説明をシオンは「グーを例えるなら石ですね、パーは紙です。紙で石を包むと勝ちになるんです」と言った。しかしニーアとベローズはその説明に対し頭の中で強烈な疑問が渦を巻いたのであった「なぜ石を紙で包めば勝ちになるのか?」「その紙は羊皮紙なのか?」と。


 疑問を持っている2人は同時にイリスをちらりと見る。この説明はちょっとおかしくはないだろうか?との抗議にも似た疑問の答えを同郷であるイリスに求めたのだ。当然イリスはシオンの説明を聞くまでもなくジャンケンと言うプログラムをインストールしているのでさも当たり前のような表情でコクリと頷きソレを返す。


 結論として説明はニーアとベローズに理解してもらう事は出来たが、こちらの世界には無いモノを説明するのは本当に骨が折れるとシオンは痛感する。


 そしてそのジャンケンを用い持ち場を2・2で別れて決めたのだ。納得するしないは別の話になるがそれは公正なジャッジメントだ。言わすもがなシオンとベローズは坑道を掘り進み、乱雑に手に入れた鉱石を穴の入り口から下に落としそれをイリスが回収すると言う役割を担う。


 細かな話になるが落ちてきた鉄鉱石を回収する合間にもイリスは川沿いで砂鉄を地味に集める作業もしている。


 「う……ぐ、ぅ……かはっ」


 「……ん?もしかして意識が戻ったのかな?」


 「こ……こは……?」


 カメレオン男は未だに縄を打たれているがせき込みながらもその意識がかすかに戻ってきた。その顔色は蒼褪め、目の焦点は微妙に合っていない。かろうじてニーアの姿を認識しているだけで完全には薬物は抜けてはいない。


 「ここはスクリスって村から4日ほどの場所にある鉱山の廃村だね。無理をさせる気はないんだけど名前を教えてくれるとありがたいかな」


 ニーアの質問をしばらく反芻するように考えながら男は口を開いた。


 「……ルロイ」


 「ふーん、ルロイのおっちゃんね。私と殺し合いをしたのは覚えているかな?」


 「殺し……えぇ……!?」


 嘘をついているようには見えない態度。そしてニーアはニオイで嘘を吐いているか見分ける事も出来る。その両方の理由でカメレオン男、ルロイと名乗った中年の男は嘘を吐いていないとニーアは判断する。


 しかし、数日前の物事を覚えていないとするなら後は何を質問したらよいものかニーアは判断が出来ない。そしてルロイはニーアの鋭い視線に怯えているようにも見えた。


 「覚えてないか、やっぱり。ルロイのおっちゃん、ちょっとした理由があって縛ってるんだけどもう少し待ってね。危険が無いと確認出来たらその縄を解くから」


 時間は昼直前。そろそろ昼食の休憩にシオンとベローズが返ってくるはずだ。それを待ってから質問をするのが得策だろうとニーアはルロイに水分を取らせるなどの準備をする。




 「じゃあ名前はルロイでロクスの街で買われた所までしか思い出せないのかしら」


 「ええ、そうです……冷たい、目をした……身なりの立派な女性が俺を買いました」


 昼食時にシオンとベローズは帰ってきた。ニーアからカメレオン男が目を覚ましたとの報告を受け昼食を食べながら質問をする運びとなる。ベローズの質問はまずニーアと同じく殺し合いをしたのを覚えているかどうかの質問、次に何故シオンを狙っているかの質問だった。しかしこの2つの質問に対しての答えは本当に記憶が霞んでいて自分でも何故ここで縛られているのかも分からないとの事。


 故にベローズは質問の方向性を変えて最後の記憶はどうなのかと聞き出す事にしたのだ。


 「その女性の名前は聞いてたりしないのかしら?」


 「いえ……聞いても良い雰囲気でもなく……それに目隠しをされて……長い距離を移動後に牢屋に閉じ込められて……それで……」


 「それで?」


 


 「何か、恐ろしい事を……された、ような……」




 ルロイの発言に一同は黙り込む。食事をする手は止まり、ルロイの困惑と恐怖が混じる顔に息をのむ。そんな中、シオンは立ち上がり両手をルロイの前に差し出す。シオンの両手は黒く変身してゆき、それを見たルロイはギョッとした表情へと変化する。


 「……僕も多分ルロイさんと同じ場所で同じような事をされたと思うんです。そのおかげ?でこうした事が出来るようになってですね、ルロイさんは出来ますか?」


 シオンの変身は最初こそ脳内から発生する衝動に任せて変身をした。ルロイが変身出来たところで何ら相手側の手がかりが掴めるワケではない、しかし怯えの見えるルロイを何とか元気づけようとシオンなりの精一杯の気遣いだった。


 ルロイにも現在は尋問中だという認識はあるのだが、女の子のような少年が屈託なく話しかけてくる様子に過去、手放してしまった娘を思い出す。そして縛られた状態のまま、目をつぶりシオンのように手に意識を集中すると。


 「あ、変化してるじゃないか。やっぱりシオンと同じなんだね」


 ルロイの手は当たり前のように緑色の吸盤付き、カメレオン男の手の形状に変化する。そしてすぐにその変化は元に戻るとルロイは少しだけ疲れたようにため息をついた。


 「ニーア、ルロイの言葉から嘘を吐いてるニオイはしたのかしら?」


 「んにゃ。縄を解くのかな?」


 「そうした方が良いのだわ、わらわも敵意のようなモノは感じなかったかしら。イリス」


 ベローズの号令でキビキビと真っ白な縄を回収し、ルロイから見えない位置で回収する。縄を解かれた後もルロイは力なく荷車の中で横になっており、立ち上がる気力がわかない程度の衰弱ぶりを見せる。


 その後、ルロイに食事をさせ、自己紹介とこれまでの生い立ち、シオン等の目的とを話し合い情報の共有をするのだった。


 そして奇しくもルロイの最後の記憶に登場する街、ロクスはシオン達が居を構えようとしている街である。


ルロイの薬物が抜けたのは時間が数日間しか持たないからではなく、ニーアに散々ボコられて新陳代謝がとんでもなく活発になった影響です。


なお、この薬物に後遺症はほぼ無く、洗脳中に知能が低下する程度です。人体に優しいですねw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ