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第53話 鉱山近くの廃村

 ガギン!とツルハシを鉱床に打ち付ける音、それが耳の中に響く。その音が聞こえるたびに脳内でキンキンと高い音が木霊し、一瞬しびれるような感覚になる。暗闇の中でツルハシを振るう度に火花が飛び散れば、石が粉々に砕け、更に細かく粉末状になった石がやけに粉っぽいニオイを醸し出す。


 「シオン、顔が真っ黒になっているのだわ」


 プラスチックに似た何らかの素材で出来た、飛来する細かな石の粉から眼球を保護するメガネを額にせり上げてシオンはベローズから顔を拭われる。皮鎧はこの坑道を掘る前にすでに脱いでおり、Tシャツに似通った服にシオンは着替えていた。


 「そろそろ休憩しておきましょうか。時間だけは沢山ありますし」


 ……カメレオン男を降しかれこれ数日の時間が経っていた。




 ニーアの鉄拳をこれでもかと全身に食らったカメレオン男は意識を無くし、そのはずみで変身が解けていた。その姿は所々が散々に潰れ、千切れとび、口からは盛大に吐血している。シオンはそれを見て「これで生きているんだ……」と若干ヒキ気味に構えている。


 「もう少しだけ殴らせて欲しいんだけど?」


 「もう十分じゃないかしら?ニーア、あなた……多分わらわよりも非道なのだわ」


 「そんな事は無いって。ほら、もう肉が戻ってきてるじゃないか。だからもうちょっとだけ殴っても問題は無いよ」


 ニーアの言動通りカメレオン男の体は急速に回復し、骨が元通りになり肉が盛り上がってゆくのが伺える。この回復能力をマジマジと眺めるも実感としては自分の体も同程度の回復能力だとピンと来ていないシオン、これ以上の暴行を何とか食い止めようと試みるベローズ、我関せずのイリスだった。現場はカオスの様相を極める。


 ある程度回復したのを見計らって両腕を後ろ手に縛りあげ、ついでに足も折りたたみ、力を発揮出来ないように、暴れる事が出来ないよう縛る。ちなみに藁で出来たロープは女性冒険者であるミーロに引きちぎられた経緯を覚えているのでイリスに切れない素材でロープを作ってほしいとシオンが頼んだ物だった。素材はシオンから出た繭の糸。


 「まあいいや、尋問がてらちょこちょこ殴って色々聞き出すからね」


 気絶しているカメレオン男に向かってニーアの口から更なる絶望の言葉が紡がれる。シオンは哀れだとも思うが結論として自分の体の秘密を知る事とこっちの世界の常識(?)に従う事に決定を下す。


 しかし、問題はそう簡単にはいかなかった事だろう。


 カメレオン男が気絶から覚めるも話は通じなかったのだ。最低でも暴れる事が出来なかったのは不幸中の幸いだった、無論暴れだそうとするのを抑え込むためにニーアに好き放題殴られたのだが縛られる前と同じように気絶と覚醒を繰り返すだけに終わる。


 得られた情報はハッキリと聞き取れたモノだけで「13号発見、確保開始」だけだった。


 「……13号は、さすがに僕の事ですよね?僕を狙ってきているんだから」


 「そうなるのだわ、それと他にも10人ぐらいは同じように変身して襲い掛かってくる奴らがいる可能性が高い、かしら。あと、この男の反応は多分薬物の影響じゃないかと思うのだわ、かなり強力な薬物。命令に従うだけの人格を作り出す事が出来る……非道な薬品なのよ」


 ベローズの「薬物、薬品」との言葉にギョッとするシオンとニーア。


 「イリス、解毒薬を作り出す事は可能かしら?」

 

 「申し訳アリマせんベローズ様、施設内には医療系統の機材、素材が不足シテおりまスレバ」


 ここでシオンは過去、病院内で眺めていたTVのドラマを思い出す。麻薬中毒者を縛り付けたり独房に監禁して体の中から薬物を抜くと言う方法を。今までシオンのTVから得られる知識はほぼ役に立った事は無いがダメ元で一応の提案を試みる。


 「解毒剤が無いなら自然治癒力に任せて薬物が体から抜けるのを待ってみたらどうでしょうか?」


 「……現状、それが唯一の方法かしら」


 シオンの提案は通る事になり、気絶しているカメレオン男を荷車に放り込んで当初の目的である鉱山に向かい歩を進めてから数日が経つ。


 


 「暴れてますか?」


 「そうだね、最初と比べて微妙に暴れる時間は少なくなっているかもね」


 イリスが必要としている金属類を無断で持ち去るための鉱山には1日前に到着している。


 この場所は鉱山とは言っても渓谷のような場所にあり山が真っ二つに裂けたような形状をしていて、その下には川が流れている。その川から崖のようになっている壁面を眺めると、いくつもの人が通れるほどの大きさの穴が開いており、以前はかなり盛んな鉱山だと読み取れた。


 廃村だが近くにはこの鉱山で働くために作られた村があり、崩れかけの掘っ立て小屋、石で組まれた巨大な竈、まだ生きている井戸もある。その掘っ立て小屋の中を覗くとヒトの白骨が所々で発見され、この鉱山を発掘するための村に人が住み着かなくなった理由は恐らく魔物か何かの仕業だろうとシオンは推測した。ベローズにその事を尋ねると当たっており、その跡地を利用するにあたってシオン等一行は全員で白骨を埋葬する事となる。せめてもの供養だった。


 名も知らぬ廃村は太陽の光で満ち溢れている。木と石で組まれた防護壁には長いツタが絡まりあい、方々に生えた草が放置された年月を物語る。人の営みの痕跡は人がいなくなっても雄弁にそれを伝える。


 「今日は随分長いこと潜ってたね、丁度昼ご飯が出来てるよ」


 廃村に戻るとニーアが昼食を作り終えていた。何個もの口を連ねる竈の1つに火を入れて太陽の元での炊事、さながらキャンプで行う野外の料理にも見えるが、出てくる料理は肉を焼いたものにタレをかけ、薄焼きにした小麦の生地で包んだものだ。ピザの亜種に見えなくもない。


 「何というか、ツルハシを振るコツ?を理解してきてですね、ちょっと熱中したと言うか。こんな仕事をするのは初めてなので楽しかったです」


 イリスがレストアして新品同様になったテーブルとイスに腰かけるとシオンの目の前に料理が突き出される。それを口いっぱいに頬張り、力強く食いちぎり嚥下すると何とも言えない満足感がシオンに生まれる。


 何事にも新鮮味を覚えて高確率でニコニコしているシオンを見てニーアとベローズは飽きを感じる事が無い。嬉しさは伝播し、不機嫌も伝播するモノだ。


 晴れた天気の野外調理場で酷使した筋肉を伸ばし、お代わりの要求をニーアに求める。採掘作業は始まったばかりだ。


この村の廃村理由は、この地域一帯が作物のあまり採れない地域だからです。魔物にとってはかなり目立つ村なので襲われ、人が途絶えてしまいました。


魔物除けの草も焚いていたのですが極度の飢餓状態には効果が薄くなってしまいます、万能ではないですねw

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