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第51話 静かな暗殺者!雨中の森のカメレオン!

 雨だれが木の葉を打つ音、それがだんだんと激しくなってきている。男の目はギラギラとしているのだが、どこか遠くを見つめているようなそんな目をしていた。


 無言。


 当然自己紹介をするようなそんな雰囲気ではないが、少なくとも目的程度の説明は欲しいものだとニーアは感じている。緩慢な動きでいきなり襲い掛かってくるようなそぶりは見せず、男はマントを気だるげに脱ぎ捨てた。


 「……う……い収、する……」


 男の目線が四方八方に飛び交う。両目が別々の動きをし、一瞬にして男の体から緑色の泡が噴出して姿が変わる。その姿は地球上で言うところのカメレオンを巨大化した姿にそっくりで、そしてそれに人間を混ぜ合わせたような外見をしていた。シオンはその姿を目撃した瞬間に頭の中で「カメレオン男」とあだ名を付けた、しかし「カメレオン」だと言ってもそれを何の事か理解できるのはイリスぐらいのものであろう。


 「ベローズ、見てるよね?あれがシオンの追手だよ」


 「前はカニとか言ってなかったかしら?あれじゃあ出来損ないの竜人のようなのだわ」


 極端な猫背、目は飛び出ていてどこを見ているかの見当がつかない、手は指先が吸盤のように見え、カニ男の時のように固い外殻は備えてはいなかった。一目だけ、外見だけで判断するなら率直にそれほどの強さには見えない。どちらかと言えば被捕食者の外見で油断してしまいそうな格好をしている。


 カメレオン男は身動きをしなかった。雨に打たれるまま、何か考え事をしているかのようにボンヤリと口を半開きにしていた。シオン等は身構え臨戦態勢をすでに取っていたが時間にすると2~3秒間何もしていない時間がそこにある。


 バヂンッ!


 突如湿った打撃音がニーアの後ろから聞こえた、シオンの立っている位置だ。ベローズもその音に反応してシオンの方を見るとシオンはしりもちを付いていて、何が起こったのかを理解していない。当然この場にいる全員、何が起きたのかを理解していなかったが。


 「シオン!何をされたのかしら!?」


 「あ……か……」


 シオンの目が虚空をさまよい焦点が合っていない。ベローズは一瞬毒か何かを打ち込まれたと勘繰る。しかし謎の打撃音の解明はされておらず、徐々にシオンの焦点は正常に戻り、はっきりとベローズの目を捉えていた。


 その間もニーアはカメレオン男から視線を外さない。自分の後ろにはベローズとイリスが居るのだ、介抱はそちらに任せ自分は目の前の敵をどうにかするのが役目だと判断した結果である。口を半開きにしたマヌケにも見える目の前の「怪人」つい先ほどの印象は払しょくされ、警戒のレベルは数段引き上げられる。


 ニーアは覚悟を決め、飛び出そうと思ったその時だった。カメレオン男の姿が雨水に溶けるかのように消えて、見えなくなってしまう。だが、雨の日が幸いしたのかその身を打つ雨粒の跳ね返りまでは消す事が出来ず、不自然に人型の空間が出来上がった。


 瞬間、獣成の形態を取り地面を蹴る爆音とともにニーアが飛び出した。そしてその不自然な人型の空間に向かい思い切り右ストレートを叩きこむ!


 それは肉が肉を打った音ではなかった、まるで巨大な木槌で岩を殴りつけたような音。ニーアの手には確殺が決められたかのような手ごたえが残り、透明になったままのカメレオン男は吹き飛ぶ。後方の木に派手な音を立ててぶつかると、ドサリと倒れこんだ。


 「シオンはどうかな?無事だった?」


 「何かで叩かれただけみたいなのだわ、もうちょっと休めば完全に回復するかしら」


 チラ、と一瞬だけシオンの安否を確認するためにカメレオン男から目を離した。ニーアの拳には相手の骨を砕いた感触がまだまだ残っており、勝利の確信、はたまた油断、もしくはシオンへの心配がニーアにそうさせたのだ。


 そう、ほんの一瞬だけ目を離した。これが転機だった。


 ニーアは視線を倒れた男の元へと戻す。そこには透明な人間型の空間は無く、ただ雨による水たまりが波紋を波打たせていただけ。刹那、ニーアは己の失敗を悟る。


 カメレオンのみの話ではない、爬虫類には似たような機能が備わっている。例えば蛇なのだが、このニーアのように一瞬でも目を離したりすると地面の色と同化してしまいまさに目の前から消え失せたように見失う事がたびたび起こる、自然の動物の天然迷彩がその体に刻み込まれているからだ。わざわざ大仰に姿を透明化させずとも備わった機能でもって人間の目を容易く欺く、そんな機能を持った動物が人間と同程度の知能を有している、それだけですでに脅威以外の何物でもない。


 雨の音だけが森の中に響き渡る。しかしニーアは焦らない、焦る事自体に意味は無く、焦りは混乱を生じてしまうからだ。


 バヅンッ!と不可視の物体がニーアの右肩を強打する。ダメージはそれほど大きくはない、シオンはこれで不意に顎かどこかを打ち抜かれたのだろうと思考する。脅威度はそれほどのモノではないがこの打撃を何度もやられれば致命傷に至ってしまうだろう。


 その恐怖心を抑え込む。己の背後には動けないシオンがいるのだから。


長くなりそうなので分割。


作中の蛇のくだりは実際に体験した事です、猫もその姿を見失ってしまうほど迷彩機能は凄いです。そしてカメレオンの因子なのですが、人間も異世界に転移するんだからカメレオンも転移してそのDNA,遺伝子を何かに取り込まれてもおかしくはないですねw

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