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第41話 救いの手は

 シオン達はスクリス郊外の森の中で魔物狩りをしていた。しかし普段と違いその数がやや少ないように感じている。無論最終的な話になれば魔物の総数が少なくなるのはいい事なのだが、現在のシオン達の状況ではそれはあまり良い事ではない。


 2つの月は雲に隠れ生憎の曇り、それでも新参のイリスを含め闇夜の中の行動は得意な者達だった。彼等が夜の間に狩を行うのはごく簡単な理由がある「昼間はちょっとだけ暑い」「革鎧がかなり蒸れる」「他の冒険者とカチ合わなくて楽」等の理由である。なおこの主張をしたのはニーアとベローズの2人。


 「……フェブリの数が少ないね。いつもの半分しか倒してないよ」


 ニーアは剣ナタに付着したフェブリの血液を雑草で拭い、雑に鞘に納める。その剣ナタは使い古した物ではないような新品同様の光を放っていた。


 狩に出る前にイリスが全ての武器防具を一度転送し、メンテを行ったのだ。その際新品のようにして返してきたがイリスはシオン達が気が付かない程微量に金属部分を削り、施設の物資として有効活用している。しかしそれでも剣ナタの性能自体は僅かに上がっており特にニーアに感謝すらされた。


 同時にイリスはシオン達にとって不思議な行動もとる。スクリス近辺は川と森がメインの狩場だが、その川べりの砂や粘土、流木などもしばしば転送している。特に冒険者が野営したのか焚火の跡を発見すると即座に近寄りその燃えカスなどを採取する。シオン達の目にはその行動はゴミ拾いにしか見えていなかった。


 けれども当のイリスにとっては重要な物事らしく、やや満足げな顔をしているようにも感じている。


 「ねえ、今日はスクリスに戻らないかい?獲物が少ないしイリスの初仕事だからこんなもんで良いんじゃないかな」


 「ニーアの鼻に引っかからないのだから探しても無意味かしら。戻るのに賛成なのだわ」


 「……前にもこんな事があった気がします。ニーアさんのカンでセイノカの村が襲われてたのを察知した時ですね」


 「そんな事もあったね、戻ったらスクリスが火の海になってたりして」


 そんな軽口を叩きながら本日は魔物狩りを終え、スクリスに戻る事になった。川沿いを遡りながら帰りの途中にもイリスは採取をこまめに続けている。帰り道にオレンジ色の花が群生している場所があり、その花を摘んで転送していたのでシオンは「部屋に飾るのかな?」と情緒のある事を考えていたりする。


 雑談を交わしながらスクリスを目前にまで捉えると全員の目には門の前で泣き崩れ、それでも門を叩いているボロボロの男が映った。


 「あの人、声をかけた方が良いですかねニーアさん?」


 「明らかに何事かがある雰囲気だね……一応話を聞いて考えようか」


 今回、ニーアのカンは働いていない模様。しかしスクリスは炎上していなくとも何事かを運んできた男はそこにいた。


 「あの、どうされました?」


 「……え!?」


 男は突然門の反対側から声をかけられ戸惑う。しばし放然として状況を飲み込めないでいたが、人に会えたと言う安堵と頼み事を思い出し川の水が堰を切ったように言葉を紡いだ。


 「オレの村が、村が魔物に襲われているんだ。助けてくれ、頼む!助けてくれ……!今は何とか応戦していて持ち堪えているがもうあまり持たない。ここの、スクリスの冒険者達に急いで伝えてくれっ、頼む……!」


 顔は跳ね返った泥や涙、ヨダレでグチャグチャになっている男の必死の願いを聞いてシオン達4人は顔を見合わす。それでもまだ首を縦には振らない、まだ情報が足りていないからだ。


 「魔物の数はどれぐらいでしょうか?大体で良いんで教えてくれますか。それとどこの村でしょう?」


 問いかけ、受け答えはシオンの役割。普段から敬語気味の遠慮した言い方だがそれが情報を聞き出すときには役に立つ。その後ろにはニーアとベローズが控え、冷静に真偽を見張る。イリスはスクリスの周りに張られた堀をジッと見つめていてあまり役にはたっていない。


 男はシオンの問いかけに目をキョロキョロと虚空に漂わせた。


 「……数は50か60か分からない。村の人口は女子供含めて72人だ、村の名前はエイブ。あっちの道なりに真っ直ぐ行くと走って半日で辿り着くんだ」


 眉毛を八の字にして頭1つ分小さいシオンに訴えかける男。その姿をニーアとベローズは見守っていたが、ニーアはベローズに1つ頷いた。それを受けてベローズも一度無言で頷く。


 「みんな、体力の方はどうかな?ベローズは暴れ足り無さそうだけど」


 「エイブ、1度行ったことがあるのかしら、何もない寒村気味な村だから報酬はあまり期待できそうにないのだわ」


 「僕の体力は大丈夫です、今問題と言うか未知数なのがイリスさんですね」


 「当機は時速で換算スルと36キロを3時間連続で走破出来ます、ペースを落とせバ連続運航時間は伸びマスがいかがでござりまするカ」


 シオンは「時速」の概念を知ってはいるが36キロで3時間連続で走れると言う意味を理解はしていない。しかし何となくで大丈夫そうだと思いニーアとベローズに向かい大きく頷く。


 「おっちゃん、私達が先行してそのエイブに向かうから、おっちゃんは朝までここで待機して門が開いたら応援を呼べば良いと思うよ」


 「あ、有難い話だが……君等は若すぎやしないか?確かに門は開いていないが


 ドオンッ!といきなり木が倒れた。男は驚いてその方向を見るとベローズが大ナタを引き抜いて木を袈裟切りに振り抜いて残心している姿があった。


 「この程度の力があれば納得するかしら?わらわの隣にいるニーアはこの程度の生木なら素手で軽々圧し折る事が出来るのだわ」


 バイザーの奥からベローズの目がボンヤリと緑色に光る。その光を見た男はその銀髪の女性、ベローズが吸血族だと言う事に思い当たった。そしてその隣にいるニーアを愕然とした表情で見つめる。人間の女性にしか見えないニーアがその細腕で立っている木を圧し折るなどと想像すら出来ないからだ。


 「そう言う事だからおっちゃん、大人しく従っていて欲しいんだよ。でも、応援が遅れたら私達が全部倒してしまうかも知れないから早めにね」


 「あ、ああ……分かった」


 夜の闇の中シオン達は男の指した方向、エイブへと走り出した。猛然と走る速度にすでに背中は見えなくなっており、男は腰が抜けたように座り込む。


 男は独り言ちた「助かった、のか……?」と。


 


 「ベローズ、私は獣成になってもあの太さの木は圧し折れそうにないんだけど?」


 「そう言う事にしておけば良いのだわ。大げさに言っても咎める人は居ないから問題無いなのよ」


 明りの無い獣道を疾走し一行はエイブの村へと向かう。


この4人は善行で何かをやるつもりはありません、あくまで自分たちの目的に沿った行動を取ります。つまり請求はちゃんとすると言うことですねw

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