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第36話 神は人を作りし

 大層な覚悟をした割に古代遺跡の地下はそれほどの大きさではなかった。それもそのはず、考えてみれば当然なのだが屋内で移動に何日間もかかるような作りだと不便極まるのだ。


 そしてシオンが落ちて来た推定落とし穴と思わしき物なのだが、通路を歩いて探索をしていると数回天井に穴が開いているのを見かけた。そしてその事を考えると「落とし穴」としては妙な作りになっている事に気が付く。しかしその疑問の答えに辿り着くはずはなく、答えてくれる人もいない。


 (ここは地下の何らかの施設だと思うんだけど、一体何の施設だろう?……そこは別に何の施設でも良いのか、問題はどこに地上に出る階段や通路があるか、かな)


 時間にして2時間程度を歩いた。それだけでも十分巨大な地下施設だ、しかし生活基盤のような物はあるが一体何の施設かまでは分からない。排泄用の器物、トイレがある事から人が生活出来るようにはしているのだろうとシオンはあたりを付けてはいる。


 見たことの無い電灯にしても仕掛けとしては大仰にも感じていた。なにせ天井全体が眩しすぎないように光るのだから。


 だがさすがに窓の無い部屋は地上で暮らしているシオンにとって少々閉塞感があり、長い時間この地下にいれば精神がまいってしまうだろう。


 そして今はある扉の前に居る。製作者のイタズラ心で迷路状になっていなかった事が幸いな事なのであろうか。そしてこの扉はこの地下施設の終着点になるかも知れない、通路の一番奥にある扉だからだ。ミーロの死体を中心点と考えれば反対側にも何かありそうだが、まずはこの扉の奥を調べてからになるだろう。上手く行けば地上に上がれる階段があるかも知れない。


 ここに到着するまでに何度も扉を発見し、中を確認したが全ての部屋が同じ作りになっており何かしらの痕跡らしいものは無かった。


 シオンは一応警戒をしながらゆっくりと扉を開ける。


 (ここは……何の部屋だろう?)


 気配らしきモノを感じなかったのでシオンは一歩部屋の中に入るとやはりアクション無しで天井が光り、部屋の中が詳細に見渡せるようになった。


 そこにあったのは薄型テレビのようなモニターや試験管の山、実物には触った事は無いがパソコンのようなものまでがある。電源はどうなっているか分からないが、光が点滅を繰り返していて、その機械がまだ生きていることを示していた。


 (あれは人?……標本……みたいにも見えるけど、何だろう)


 人が数人入ってもまだ余裕がありそうな透明な容器の中に人影が一体。金属製のヘルメットらしきものを被り、何らかの細いチューブが何本も繋がっているが、形的には女性のよう。それが液体に満ちた容器の中で宙に浮いて見える状態になっている。しかしその液体の中では生きているようにはとても見えない。シオンはここに落ちて来てから女性の死体に縁がある、とため息をついた。


 (今は出口が無いか探すのが優先かな、気にはなるけど僕にはよく分からないモノだ)


 突然の事だった、点滅していた光がONになった時のように点灯し、パソコンのような機械が起動を始めた。シオンは当然驚く、どこにも触ってないはずだが勝手にモニターに光が灯されたからだ。


 「いらっしゃいませ。言葉は通じていますか?私はFS-H108Cの人格制御システムです」


 「!?……え、あ」


 モニターには英語や数字、日本語らしきものが高速で流れており、天井にあるスピーカーから機械音声のような声が聞こえて来る。しかし突然の出来事にシオンの頭は付いて行かない。むしろこの状況で対応が出来る方がおかしいとも言えるが。


 「こ、言葉は通じています」


 非常にしどろもどろになりながら女性的な機械音声に対し受け答えを何とかこなす。それを慌ててモニターに喋りかけているのだがそこから音声を拾うと言うワケではない。


 「よろしければお名前を教えていただけませんか」


 「名前……シオン、エモト・シオンと申します」


 「シオン様ですね、承りました。早速ですがシオン様、お願いがございます。ワタクシ自身はただのシステムですがプラント内部にいるFS-H108Cをこの場より連れ出してはいただけませんか」


 この時、シオンは非常に困った表情になる。スピーカーから流れる人格制御システムの言う事がイマイチ飲み込めていないからだ。プラントとはなんだ?えふえいち……?そもそも脱出経路さえ見つかっていない、と言った所だろう。


 しかし状況が分からずとも答えてくれる人物?は今そこにいる。


 「あの、僕はここに落とし穴みたいなのに引っかかって落ちて来たんで出口が分からないんですが」


 「出口ならばこの隣の部屋がエレベーターになっております」


 「おお!じゃあプラントとエフエイチ……と言うのはあそこに浮かんでいる女の人でしょうか?」


 「はい、シオン様に従うようプログラムを組んでおりますので少々お待ちください……完了」


 シオンは一言も連れて行くなどとは言っていないが半ば無理矢理に押し付ける形で話が進んだ。するとFS-H108Cの入っている容器の液体がどこかへと排出される。


 「あの、そもそも連れ出さないとならないんでしょうか?この施設でそのままにしておくと言う手は?」


 「申し訳ありませんシオン様、この研究所は設立から150余りを経て老朽化が進み、このままではFS-H108Cの保存が難しく、偶然ここに訪れたシオン様の手に委ねる他が無いのです」


 嘘か真か審議不能、だが帰り道があるなら良いか、とかなり楽観的にこの事を受け入れるシオン。ニーア、ベローズとの生活により少しずつ面の皮が厚くなりだしているのだ。


 やがて排水は終わり、容器内部にはグッタリと横たわる女性の姿が。そして軽い駆動音が鳴り、透明な容器は上部へとせり上がる。


 「プログラムシャットダウン、安全装置を残し保存状態へ。それではシオン様、よい旅を」


 最後にアナウンスを残し一部の電源が落ちた。部屋の所々にチカチカと点滅は見える物のその大部分が消灯する。どうしたものかとシオンは思い、とりあえず横たわる女性へと近づく。


 先ほどまで死体のように蒼褪めた色合いだった女性の色が見る見る回復していく。そしてピクリと微動するとむせ込んで液体を吐き出し、大きく息を吸い込んだ。


 「こんにちわ、で良いのかな?起き上がれますか?」


 「……」


 女性は倒れた姿のまま無言でシオンの方を向くとゴロンと金属製のヘルメット部分が転がり落ちた。その瞳の色は血のような赤で薄桃色の長い髪が体に張り付いている。


 FS-H108C、謎の施設、謎の女性、何一つ分からないままこの邂逅は成された。


もっかい書いとくとこの世界に英語はありませんw

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