表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/87

第33話 悪意の領域

 スクリスの近くの森。その魔物の多さが故に開発、開墾の類は未だロクに進んでおらず鬱蒼と茂った森の中には各種の木が生えている。タケやスギに似た樹木、カズラのような蔦、ドングリのような木の実が成る樹木もある。それらはスクリスの住人によって何かしらの建材や木工製品に加工され利用されたりもする。


 特にタケで出来た串はこのスクリスの特産品、イーギルの調理時に必要な物となり、その串の種類も豊富。


 「この先に件の古代遺跡があってねー、妙に平べったい石板とかが出土するんだけど……聞いてても地味だよね」


 「いえ、そんな事はないですよ。その石板には何かが書いてたりするんですか?」


 「変な所に食いつくんだねシオン君は。何かが書いてたりはしないんだよー、でも建材に使うにしてはやっぱり妙なんだって。詳しい事はアタシには分からないけど学者さんがそんな事を言ってたよー、ゼーンさえもらえれば要らない知識なんてどうでもいいんだけどね」


 シオン一行の3人とミーロ一行の3人、合計6人で夕日が沈みかけの森の中を歩く。先頭を歩くのはミーロ一行の3人とシオン、すぐ後ろにニーアとベローズが付いて歩いていた。目的地の古代遺跡に到着するまでにその遺跡の外観や発掘された物品、出没する魔物の話などを暇つぶしがてらシオンに説明をしている。


 「でも本当に依頼に同道してくれてありがとー、男どもは地味な仕事をやりたがらないのが多くてさ、大っぴらに武器を振り回して名を上げるんだって言ってるんだー、ガキだよね」


 「どこかで聞いたことがあるんですが、男は何歳になっても男の子だそうですよ。あ、僕も男ですからね?」


 「大丈夫だよ、知ってるからさー男の子だって事はさー」


 ミーロはケラケラと笑いながら蔦を払い進む。途中、数匹のフェブリを発見しこれを奇襲でニーアが撃破。その見事な腕前をミーロが褒め称え、案外まんざらでない様子でニーアが謙遜する場面も。


 しかし、ミーロ等は何かしらの思惑がありシオン等をこの依頼の護衛として誘っており、ニーアとベローズはそれをすでに看破してワザとその誘いに乗っている。


 前日の作戦会議でベローズは大概がシオンの身柄を攫う事、ついでにニーアと自分を奴隷か何かにしてどこかに売り払うつもりだろうとアタリを付けていた。そしてその目的地、古代遺跡に伏せた冒険者が数人から10数人いるだろうとも。


 更にベローズは続けた、恐らく相手はシオンとニーアを特技の無い普通の人間だと誤解しているだろう、と。それもそのはず、この2人、外見だけは普通の人間と変わりが無いのだ。外見だけは。そして最後にベローズは自分が一番警戒されていると告げる。


 「そろそろ到着だよー。ほら、あの崩れてるけどキレイに作られた柱が目印ね」


 ミーロが指す方向には薄暗くなってゆく森の中、真っ白な柱に蔦が巻き付いた神殿風の遺跡が見える。崩れた神殿のような外観が夕闇と生い茂る樹木の間から浮き出るかのようにシオン等の目に飛び込んで出来る。厳かな、神秘的な、聖なる、そんな感覚ではない何かをシオンは感じた。その感覚を表すなら違和感、ではなく、既視感。


 「凄いね、確かにこれは何かここら辺のモノとは何かが違うよ。何が違うのかって聞かれても私には分からないけど」


 「それそれ、その感覚だよー。アタシも同じような感覚だし上手くは言葉に出来ないもんねー」


 一行は遺跡に足を踏み入れる。粗方は片づけていたのか大きな瓦礫などは外に運ばれ、奥に進むのに邪魔になる蔦は払われている。神殿風な作りのせいもあるのかも知れないがそこで生活が出来るような作りではない。


 「ここって人が住んでいた形跡があったんでしょうか?とても普通に住居として機能するように見えないんですが」


 「学者先生達もそんな事を言ってたねー、復元したとして壁は無く、神殿だとしても祭壇らしきものが無いってね。じゃあアタシ達は野営の準備をしておくよー」


 ミーロ等3人は神殿の外に出て火を熾そうと枯れ木や木片などを手早く集めだした。シオン等は神殿内部をキョロキョロと柱や壁に飾り彫りされた模様を指さしながら眺め、ワザとらしくならないよう議論している風にみせている。


 「ニーア、伏せている人数はいるのかしら?」


 「いや、まだだね。多分火を熾してそれを目印にするんじゃないかな」


 「勘違いだったと言う線はありますか?」


 「それは無いね。アイツ等がどんどん緊張していってるのがニオイで分かるんだよ。たかが火を熾したり現場に近づくだけで極度の緊張はしないだろ」


 「じゃあニーア、火を熾される前に人質を取るのだわ。シオンも手心を加えずに全力でやる練習だと思うのかしら。ここはもうすでに悪意の領域なのよ」


 「大丈夫です、覚悟は昨日済ませています」


 雰囲気を一切変える事なくごく自然な振る舞いで神殿内部からゆっくりと3人は歩み出る。各々が定めた標的に声をかけながら近づいてゆく。ミーロ側も警戒感は無しに近づいて来る3人を不思議とも思わなかった。


 「火熾しとか薪拾いを手伝いますよ。僕、ここに来るまでにあまり何もやって無かったんで手伝わせてください」


 「え?あ、一応アタシ達の護衛って名目だから座って待ってても良いんだよー?でもその申し出はちょっと嬉しいかな?お仕事が終わったら……おねーさんとちょっと仲良くなってみないかなーなんてねー」


 「……仲良くですか?それはどんな風に?」


 「え?そりゃーね、ほら、アタシのってあっちの2人に比べて大きいじゃない、ねぇ……?」


 シオンはミーロに対しにこやかに話しかけると意外な方向に話が転がって行った。シオンの反応はやはり顔を赤く染めアワアワとするのだがその反応がツボに入ったのか、ミーロはニヤニヤと笑いながら耳打ちしようとシオンの顔に息がかかるほど近づく。


 「いい反応するよねーシオン君。あの2人にも夜になったらそんな反応を見せてッゥグッ!!」


 下から突き上げるような形のボディフックがミーロに突き刺さる、拳が見えない位置からの奇襲。革鎧の隙間を縫い、完全に油断した所に悶絶の一撃。ミーロは膝を付き体を「く」の字に曲げて倒れ込んだ。


 シオンはニーアとベローズはどうなったかを確認すると首尾よく他の2人を昏倒させている。

 

 「シオン、何か話してたけど何の話をしてたのかな?」


 「……多分その、えっちなお誘いかなー?と」


 「ふぅん、えっちな事の意味はよく分からないけれど、やっぱり引きちぎった方が人のためになりそうだね!」


 ミーロ等は3人仲良く革鎧を剥ぎ取られ縄で縛りあげられた。


しかし縄が食い込んだり裸にひん剥いて宙づりなどは無いのです、無いのですっ!そう、健全だからッ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ