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第30話 報酬

 シオン等一行はワグリズを討伐した後、恐らく500kgはある体を引きずりながらやっとの思いでスクリスに到着する。到着した時間は日が昇る前だったが門が開く時間はまだだったので時間を潰しながら待機していた、門の開く時間が来ればその当番の村人に絶句され、やはりワグリズを引きずりながら明け方の冒険者組合に鼻の入った袋も一緒にして放り投げるかのように置いて来た。


 「馬車とまでは言わないですが、台車は要りますよね」


 「ワグリズみたいなのがそう何度も出て来るとは思えないけど、要るよね」


 「ニーア、わらわの故郷にオシャレはガマンと言う格言があるのだわ。要するにあの形はオシャレじゃないのかしら」


 「じゃあそれなら私かシオンがその台車を引いているなら良いんじゃないかな?」


 「宿屋で台車の購入を検討するかしら」


 現代地球の日本ならば厨二な恰好まっしぐらであるベローズ、しかし背に腹は代えられぬとの苦渋の決断でこれを渋々と承諾する。宿屋に帰りつくとまずは返り血を濡れ布巾で拭うのだが、シオンのその行為をニーアとベローズがネットリと嘗め回すかのように観察し、それを終えた後、ベローズの予告通り台車購入の会議を軽く開いた。


 結果としては小型の大八車のような簡素な台車を購入し、今後の依頼等に役立てようと話が付く。




 昼をやや過ぎてシオンとニーアは起き上がる。そして自分達の手で稼いだ報酬はいくらになったのだと気になり始める。人としては至極当然の思考だろう。2人は新しい生活の本当の一歩目を踏み出すべく冒険者組合へと向かって行った。


 「こんにちは組合長さん。報酬を受け取りに来ました」


 「いらっしゃいませシオンさん、ニーアさん、初日から大物ですね。ではこちらをお受け取りください」


 組合長はカウンターの下から銀貨20数枚と銅貨を10数枚ズイとシオンとニーアの前に差し出す。その枚数に2人は「おお……!」と感嘆の声を漏らしゼーンを受け取った。


 そして金額とは別にシオンは自分の興味のある事を組合長に聞いてみる。


 「あの、ワグリズなんですが、アレって外套とかになるんですか?」


 「……そう、ですね。毛皮は外套や革鎧の材料にもなりますが重要なのは、ワグリズの顔や腕の皮膚の硬い部分がありましたよね。アレが重要なんですよ」


 「何に使われるんですか?」


 「高級な防具の材料なんですよ、金属と比べて軽く、革と比べて硬い。内臓も薬として加工されますし、肉もクセがあるものの食べられなくも無いので困窮者の貴重な食料として用いられますね、捨てる部分は骨ぐらいじゃないでしょうか」


 組合長の話を聞き、ニーアは自分の中の疑問を聞き出してみた。


 「おっちゃん、疑うワケじゃないんだけどさ、捨てる部分が少ない割に金額が少ないように思えるんだけど?」


 「良い質問です、ニーアさん。恐らくその質問は全ての組合が抱えている問題になりますね。命がかかる割に冒険者への報酬は少ないと以前申し上げましたよね」


 ニーアは「お!?」と言う表情を作り出す。その表情を鋭く読み取り組合長はシオンにもしっかりと聞こえるように話を続ける。


 「理由は何点かあるのですが主な理由として、毛皮の卸値が高く吊り上がると結果として外套も鎧も値段が高くなります。付き合いのある商人から詳しく話を聞いたのですが、貨幣、ゼーンの個数には限りがありこれ以上値段を吊り上げると貨幣不足になるとの事です。要するに、その銀貨銅貨の元である金属が足りていないのです」


 「む、難しいよおっちゃん……」


 「うぐっ、ワタクシもこれ以上の説明が出来ません、申し訳ない」


 組合長は丁寧な説明をしたのだが、肝心のニーアの理解不足により話は中断。しかしそのやり取りを見ていたシオンは腕を組み、何事かを考えるも口には出さない。


 余談だが、仮に貨幣不足の事態が起きると経済は停滞し、発展が望めない状況になるだろう。下手をすると内乱の可能性さえ出て来る。


 「貨幣不足の他には、冒険者の無謀さ、蛮勇を起こさせないとの理由もありますね。ワタクシも冒険者だったのですが、魔物討伐の依頼で怪我を負いまして。そしてアレコレありこの組合に在籍しこの建物に住んでおります」


 「ここ、組合長さんの住居でもあるんですか?」


 「そうですよ、シオンさん。何も冒険者であるあなた方のみが薄給なワケではないのです。そんな過去もあり出来る限りの支援をしようと日々考えておりますよ。良いですかシオンさん、ニーアさん、お金は大事です。しかしそれを稼ぐための体はもっと大事です」


 ニコリと組合長は笑う。その顔を見たニーアはつまらない質問をしてしまったと後悔、反省し、シオンは組合長への信頼度を一段階上げる事になる。亀の甲より年の功、自らの失敗すら後続への糧とする気高き精神性。


 組合内部には人が少なかったため、しばらくの間組合長と談話し、お礼をしてその場を去る。


 「ニーアさん、僕の国ではお金が紙で出来ているって話憶えてます?」


 「ああ、うん。私は羊皮紙しか見た事ないけど草とか木の皮で出来てる紙だよね、組合にも何枚か……あ!なるほど」


 「あの場では言えませんでしたが、このお金を金属から紙に変える事が出来れば色々解決しそうだなーって思ったんですよ」


 「でも紙だよね、銀貨の代わりになるのかな?」


 「そこなんですよ、僕も深く考えてみると何で紙がお金になるのか意味が分からないんですよ」


 組合からの帰り道、ベローズにお土産のイーギルの白焼きを購入しながらシオンが組合内部で思った事をニーアに話している。しかしシオンは紙の作り方もお金の仕組みも理解していないのでそれをニーアに上手く伝える事が出来ていない。


 仮に紙幣を発行する事が出来たとして、それこそ国家規模の計画が必要になるだろう。そしてそこに到達するまでには金属製の貨幣が大量に必要であり、結局はにっちもさっちも行かないのが現状であろう。


 2人は自分達が稼いだ報酬そっちのけで、何故紙がお金になるのかと言う仕組みを考え抜くが結局何1つ分からず仕舞いで宿屋へと帰りついてしまう。

 

紙幣が発行されたとしても冶金技術次第ですねw


冶金技術が低い=偽札が大量に作られる、になりますw


内臓は食べたり薬にする以外にも腸が弓の弦になったりします。 

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