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第28話 己を知る

 ニーアは組合長に差し出された貨幣、ゼーンを受け取る。ここで金額の数字を聞いたとしても基礎的な情報が不足しているので無意味に近い行為だと悟り、ニーアは言葉を飲み込む。代わりにシオンが別件の質問を組合長に尋ねてみた。


 「組合長さん、僕は文字が読めないので依頼がどんなものがあるか知りたいのですが」


 「……シオンさん、今ある依頼は村の雑用と魔物討伐なのですがそれでもよろしいのですか?雑用の方は危険を伴わないモノなのですが、魔物討伐は命の危険が伴う分で考えると少々割安だと思います。数日待てば他の依頼が入って来るかも知れませんよ」


 「他の依頼ってどんなのがあるんですか?」


 「行商に出る荷馬車の護衛ですね。長くて10日以上かかりますが魔物討伐に比べ人数的に比較的安全になります。しかしそれも同道する冒険者次第のところもありますが」


 華奢なシオンを心配しての事もあるのだろう、組合長の説明はとても丁寧だ。そしてシオンとニーアは「同道する冒険者」の言葉を聞き、辺りを見回す。


 顔に大きな傷のある者、昼間から安酒で酔っぱらっている者、娼婦紛いの服装をしている女性等々。しっかりと髭を剃り落とし筋骨隆々な清潔感のある冒険者もいるにはいるが、大抵の者はどこぞの盗賊紛い、傭兵崩れと大差ない者ばかり。それぞれがテーブルを囲み大声で下品に笑い声を上げている。


 「私達には一応目的があるからスクリスを長い間離れるのはナシだね。大人しく雑用か魔物討伐を頑張ろうか」


 「そうですね。結構村の雑用も気になってていたんですよ」


 「まあ、そこら辺はベローズと相談しながら決めようか。ありがとうおっちゃん、勉強になったよ」


 「あ、お待ちください」


 シオンとニーアが話を切り上げて帰ろうとしたその時、組合長に何らかの理由で止められた。


 「恐らくですがベローズ様は魔物討伐を推すでしょう、そしてもう1つ。このスクリスでは、と言うより、ここより内陸では自分達以外は信用しない事です、良いですね?文字が読めない、金銭の感覚が分からないのは格好のカモです。決して大きくスキを見せない事ですよ、シオンさんは特に」


 「ご忠告感謝です」


 シオンは組合長に一礼し冒険者組合を後にする。


 「シオン、私達はルワンを出て正解だったかも知れないね。知らない物事が多すぎって今気が付いたよ」


 「そうですよね、ルワンの村に籠っていても良かったのかもですが知らないよりは知っていた方が良いですよね」


 シオンとニーアは世間に打ちのめされたと言うワケではないがある種の不安を抱えた形になった。主に金銭、経済面での物事だ。ルワンで生活していた時は金銭のやり取りはほぼ無かったのでそれでも良かったのかも知れない、だが一歩外に出るだけで自分たちがどれほどの不足をしているのかを目の当たりにする。若いと言う理由もあるがベローズもほぼ同年代、更にはスクリスの子供等と比較をするとその不安は膨大なものとなる。


 「とは言っても僕等に出来る事は限られています。出来ない事は出来る人に任せて自分等は出来る事をやれば良いと聞いた事もあります」


 「まあそうだね、良い言葉じゃないか。出来ない事をいくらやっても出来ないもんね、出来る事からやっていこうか」


 僅かばかりの前進、放り投げているように聞こえなくも無いが、無い袖は振れないとの言葉もある。人は自力で空を飛ぶことは出来ない、一番最初は結局ソレを理解する事が肝要ではないだろうか。全てはそこから始まる。


 シオンとニーアはそれぞれ意見を出し合いながらスクリス案策する。村の中には食べ物を売っている店が立ち並び、受け取った報酬で串焼きを買ったり鍛冶屋を冷やかしてみたりとまずは見聞を修める所から始めてみた。


 


 「お帰りなのだわ、受け取った報酬は残ったかしら?」


 「半分は残ってるよ。と言うかお見通しだったんだね」


 宿に帰るとすでにベローズは起きていてテーブルで白湯を啜っていた。シオンとニーアはそのテーブルにお土産の串焼きを置き、椅子に腰かける。


 「ニーアの事だから全部使うと思っていたのだわ。そうしたら大手を振って叱る事が出来たのかしら」


 「意地が悪いね。でもまあ、理由は分かるよ」


 「シオンもよく聞くのだわ。金銭は人の関係性に簡単にヒビを入れるモノなのよ、最初は軽い失敗で経験を積ませようと思ったのだけれど、そうはならなかったみたいかしら」


 ベローズは大きな葉っぱに包まれたお土産の串焼きを1本つまみ頬張りながら話を続ける。


 「過度には必要ないけれど、自らの足らなさを知る事は必要なのだわ。そこを言わなくて良いのはわらわも気が楽なのよ、今度は鳥の串じゃなくてイーギルの白焼きが良いかしら」


 「今度は白焼きにしておきますね」


 「まだ教えなければいけない事は沢山あるけれど、小言ばかりも角が立つなのよ。先にシオンとニーアの結論を聞いておくのだわ、買い物で失った金銭はどう補填するのかしら?」


 「それなんだけど組合長とシオンの話でもう決めてあるんだよ、結局魔物討伐でまた報酬を稼ぐってね」


 「十分な答えなのだわ。金銭は重大な亀裂を引き起こしかねない道具、しかし金銭で解決出来る範囲の物事はある種容易な物事なのよ。別離や信頼は金銭で買い戻せないのだわ」


 ベローズは白湯を飲み干しニッと笑う。


 それから魔物討伐の依頼はどんな形で行うかを相談して詰め、最終的に3人で夜間の行動をしながらゼーンを稼ぐことになった。


ちょっとだけ短い。


仮に丸銀貨1枚=10000円にしてもすぐ設定的に使わなくなるんですよねw

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