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第19話 吸血族

 結局はベローズを拾い、巣穴を漁ってから帰還する事になった。フェブリの死骸からまだ使えそうな革鎧や各種武器を剥ぎ取り、使えなさそうな物は火にくべる。


 火にくべて燃やす理由は僅かにでも魔物に再利用されるのを防ぐためで、自分達以外の人間、魔族の被害を抑えるためにこれをする。


 しかし討伐隊はこの場に荷車を準備していない、夜襲を行うと決めていたので余計な物は持って来ていなかった。では、かなりの量になった武器防具その他をどう運ぶのか、それは縄に戦利品を括り付けて人力で運ぶという方法。今回の夜襲で怪我人や死人は出なかった、なので無事な物は全て持って帰る事が出来る。


 「ベローズ、戦利品漁りに時間がかかったからもう立てるんじゃないかい?」


 「え!?いやいや、ほれまだこの通り、生まれたての小鹿のようにガクガクしてるのだわ。わらわ、か弱い吸血族だからこんな所に1人でいたら魔物の餌食になってしまうなのよ」


 「あ、じゃあベローズさんは僕がセイノカまで背負いましょうか?こう見えても意外と力持ちなんですよ」


 シオンは屈託なく笑う。しかしベローズの「か弱い」は一体何を指してか弱いのだろうか。ニーアはそのベローズの言葉を聞き「ははーん」と小声で呟き、ベローズに近づきそっと耳打ちする。


 「シオンのアレが気になるんだねぇ……私には分かるんだ、視線がずっとシオンを追っているってねぇ……」


 「全くそんな事は無いのだわ、わらわ淑女だからシオンの凶悪なオ、オチ、オチ」


 「何の話ですか?」


 「何でも無いなのよォォォー!!」


 こうして戦利品漁りは終了し、朝日が昇り切った所でベローズ含む討伐隊一同はセイノカへ無事に帰還する。途中シオンに背負われたベローズはシオンの頭の匂いを嗅いだり、おっかなびっくりシオンの体をまさぐったりとソワソワ落ち着かない雰囲気を終始発していた。




 セイノカの来客用の宿泊施設で軽い睡眠をとり、今日1日シオンとニーアはここで過ごす事を決定し藁の敷かれたベッドでゴロゴロしている。


 「結局ベローズさん、と言うか吸血族は何が厄介なんですか?」


 「そうだね、一言で言うなら戦闘狂いかな。私も聞いただけなんだけどね、戦って勝利し、相手の血を飲めばより強くなれるって信仰があるらしいんだよ、だよね?」


 ニーアの呼びかけた方向にシオンが視線を向けるとそこには顔を半分ほど出し、ジッと2人の様子を伺うベローズの姿があった。屋内は薄暗く、緑に光る眼はイヤでも目立つのでアッサリと見つかる。


 「それは大昔の信仰なのよ、今ではただの迷信だと言われているのだわ。ただ、戦闘行為が好きなのは間違いないなのよ。で、その……続きはやらないのかしら……?」


 「続きって何の続きかなぁ~具体的に言ってくれないと私もシオンも分からないよォ~」


 「ぐ、具体的には、ま、まぐ、まぐわわわわ……!」


 ベローズに付着していた血液は綺麗にぬぐい取られていた、そして部屋の中は薄暗くともその真っ赤になった顔色はシオンとニーア2人にもハッキリと視認出来、目をしばたかせているのだろう、チカチカと緑色の光が明滅する。


 少々バグったベローズにシオンが思った事を質問する。


 「あの、ベローズさんは吸血鬼、吸血族なんですよね?ニンニクとか十字架はニガテなんですか?」


 「にんにく?ジュウジカ?って2つとも分からないのだわ」


 「ニンニクはニオイの強い……植物の根で、十字架はこう、縦の棒と横の棒を組み合わせた……こっちには無いんですかね?」


 「毒があったり臭かったりするのは誰でも苦手なような気がするのだわ。それと、棒を組み合わせると苦手って何かしら?」


 シオンとベローズは互いの頭の上にクエスチョンマークを並べ首を傾げている。やがてベローズは全身を現し部屋の中に入って来る。設置されている椅子に腰かけ、焼き物の湯飲みに近い器で水を呷った。


 「ねえニーア、シオンって普通の人間なのかしら?」


 「普通、じゃないね。ただの人間ってワケでも無さそうだよ、それを知ってどうするんだい?」


 「どうこうしようってのは無いのだわ、ただの興味なのよ。それにニーアも普通じゃ無いのが判るのだわ」


 互いに友好的に見えるがその間には張り詰めつつある空気があった。ニーアはシオンの異世界人と言う情報をあまり気安く漏らしたりはしたくない、ベローズは興味のある2人の情報を聞いてみたい。シオンは2人から発せられるゾワゾワする空気感を敏感に察知しベッドからムクリと起き上がる。


 「もし良ければなんですがベローズさん、ルワンの村に一緒に行きませんか?砂エビって言う魔物が凄く美味しいんですよ。互いの事もよく知らない同士ですからちょっとずつ仲良くしませんか」


 日本人的お茶を濁す発想、別名先送り。しかしこの場の雰囲気を元に戻すためには最適だったようでニーア、ベローズ共にシオンの間延びした思考に肩の力を抜く。


 「でもベローズは世話になった村に帰らないといけないんじゃないかな?まあ、来るなって意味じゃないけどさ」


 「戻らなくても問題無いなのよ、ちゃんと別れの挨拶はしたし魔物の殲滅作業も兼ねてるのだわ。シオン、砂エビは好物の1つだからわらわの為に沢山獲って来るが良いのだわ」


 「食べるだけかい?ベローズ」


 「吸血族は昼間が苦手なのだわ、明るすぎて逆に見えなくなるなのよ。曇っていれば昼間でも何とか外に出る事が出来るかしら」


 「そんな事情があるんですね。分かりましたベローズさんの分も獲ってきます」


 擬音にするなら「ドギューンッ!」だろうか、シオンの素直な受け答え、柔らかな笑顔にベローズは無表情のまま何かの中心部を撃ち抜かれる。やがてヒクヒクと口元を震えさせ片側がゆっくりと少しだけ吊り上がった。それを気付かせないためにプイとそっぽを向き小声で「よ、良きに計らうのだわ……」と呟いた。


 それから夜になるまで互いに細かな自己紹介を雑談と共に交えながら次の日、朝日の昇る前、暗い内から3人はセイノカを後にする。

 

ベローズの身長はニーアより少しだけ低いです、年齢は18ぐらいですw


狼女と吸血鬼……と来たらもう1人必要ですねw

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― 新着の感想 ―
[良い点] まったり感が好きだわ〜 [気になる点] やはりフランケンなのか? 怪物君なのか?! [一言] 楽しませて貰ってます!(●^o^●)
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