第16話 セイノカからの使い
「一体あの男の人は何だったんでしょうか……?」
「私はちょっとだけシオンの姿に似てたと思うんだけど。それとシオンも獣成だったのかな?だとしたらおねーさんは嬉しいんだけど」
「んー、獣成ではないです。その、僕も正直な所全く分からないんですよね。ただ、頭の中で敵を排除する、ってハッキリと目的が分かると言うか」
ニーアの家でついさっきの出来事を整理している最中。結局は何も分からないと言う意見になるのだが、それでも互いに思う所があり、ベッドでイチャコラしながら検証しているのだ。なお、その体勢はシオンを後ろから抱きかかえるようにした体勢でシオンの傷を調べる意味合いもある、治療の側面もあるが故にリア充爆発四散して地獄の業火で焼かれ悶えながら塵になれ、などそんな風に思ってはいけない、決してだ。
「シオンは変身、とか言ってたけどアレはどう言う事なの?ニホンじゃみんなそうなの?」
「その、多分僕だけですね。今は……出来るかな」
シオンは右腕に集中し、先ほどの変身した時と同じようにしてみるが何も起こらず、何かしらの条件があるのかと思考する。
「変化しないね」
「しませんね、ニーアさんは獣成には自由に変化させる事が出来るんですよね」
ニーアが「出来るよ」と言いながら右腕の肘辺りまで獣成に変化させてみた。シオンは頭を横に倒しながら「うーん……?」と考え込む。
「でもあまりやりすぎるとお腹が減るんだよ、凄くね。だからシオンを食べちゃったりするかも知れないけど、その時はガマンするんだよ?」
「それ、食欲ではないような?」
「元に戻すけど、あの男は明らかにシオンを見て回収するとか言ってたんだよ。知り合い、のはずは無いんだよね?」
「体が変化する知り合いはニーアさんぐらいですね、少なくとも日本の病院では見た事が無いです」
シオンはついでに、多分地球上のどこを探しても居ないとは思うけど、と頭の中で付け加える。しかし、件の男はシオンを見て確実に「回収」と喋ったのは確かだ。そして、その男の変化した姿を思い出し、自分の記憶に照らし合わせて独り言ちる。
「……怪人」
「かいじん?」
「はい、説明し辛いんですけど、僕の見た事のあるTV……こちらで言う所の劇ですね、それの敵役の姿にソックリと言うか」
シオンのTVからの知識、とある再放送された特撮ヒーロー物で改造手術を受けた主人公が敵組織を抜け出して反撃する、と言う番組。自分自身の姿もさる事ながら件の男の姿はまさにソレで、無理矢理その姿を形に嵌める。
「あの男の人を自分の知っているモノに当てはめると、怪人カニ男って感じになります。当てはめた所で何になるってワケじゃないですが」
「怪人カニ男ね、ちょっとエビにも似てたよ。シオンは何だろう、ハチ……に似てたかなぁ」
「蜂、ですか。自分の格好をよく見てなかったから分からなかったです」
シオンは手を握ったり開いたりしながら何かを確かめる。自らの脳内に「王蟲ラグマルス」と言う名の形容出来ない何かが居るとはカケラも想像する事は出来ずに。
「シオン、念のためなんだけど、もう1回あんなのが現れたら……どうする?」
「そうですね、そんな時って情報を引き出すために捕まえたりするのが普通なんでしょうか?」
「……一応話は通じているようないないようなだから、最悪手足を千切ってジックリとお話になるね」
話の方向がかなり物騒な向きになってはいるが、結論として相手側の正体と目的を聞き出さなければ常に受けに回ってしまう。何事にも先手を取るのは重要で、後手に回るのは例外はあるが大抵の場合不利になりがちである。
「でもニーアさん、あの人……カニ男は両腕が生えてきましたよ?」
「うーん、何となくカンなんだけどさ、アレって限界はあると思うよ。じゃないとシオンに真っ二つにされた時、2人に増えるじゃないか」
「なるほど!あ、カニだから手足なら自切出来るのかも!」
「うーん、でもシオンの傷が治ったのは何だったんだろう?やっぱり捕まえてお話ししないと全く分からないね」
最終的にはやはり捕まえる方向に落ち着き、そしてやはり何も分かってはいない事が確定する。気が付けば村には夕日が射しており、ニーアは砂浜で獲って来た砂エビを調理し、今日と言う日を終える。
シオン達は多くの謎を残しながらも次の日が来た。ニーアの予想では今日、隣村のセイノカから使いが来る。村長に遠征の旨を報告し、装備を整え、互いに体調のチェックを完了させ、セイノカからの使いを今かと待ち受けた。
「こっちでは人が走って情報伝達しないといけないから大変ですよね」
「……それが普通じゃないかな?私らとは別の魔族が鳥を使って手紙のやりとりをしてるって聞いた事はあるけどね」
いわゆる伝書鳩の類ではあろう。しかしシオンはその伝書鳩の方がむしろ高い技術を要するのではと首を傾げる。
「日本では電話って物があるんですよ。こう、言葉だけを相手側に伝える道具ですね」
「それは魔法の道具なんじゃないかな?」
「んー、ニーアさんの獣成は日本で魔法だって言われそうですけどね」
そんな話をグダグダとしながら使いを待つ。ニーアはシオンの持つ日本の器具を珍しそうに聞いてはいる、だがこの手の話はそれを伝えるだけで原型を作れてしまう人がどこかに必ずいるモノだ。最終的にかなりの危険を孕む事になるのだがソレにシオンは気づいてはいない。
「じゃあ、もしかしたらなんだけど、コッチでも材料を揃える事が出来ればデンワもてれびも作れるし、使えるようになるのかな」
「時間はかなりかかりそうですが恐らくそうだと思います」
ニーアは眉間にシワを寄せて考える。そしてこうシオンに伝えた。
「シオン、ニホンの話は面白いし為になるんだけど……多分、私以外には喋らない方が良いと思うんだよ。上手く説明出来ないけど、きっと悪い事が起こる」
「悪い事、ですか……分かりました。ニーアさんと僕だけの秘密ですね」
ニーアのカンのようなモノで日本の情報を口止め出来てホッと一息したものの、シオンと2人だけの秘密と言う部分にニーアは舌なめずりをガマン出来そうになくなっている。
しかしここでセイノカからの使いが来たと村人に教えてもらい、急速に気を取り直す事となった。
サブタイトルに「怪人カニ男襲来」とか入れられれば分かり易いんですけどねw
ちなみに通称カニ男は試験体10号ですw




