表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リセットボタンはどこですか?  作者: 桜木彩花。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/33

過去からの呼び声⑤

 リークス達と別れてしばらく進むと、ギムレットが「すまん眠い」とか言い出した。クレオールが冗談だと思っていると、道の真ん中でばったりと倒れて動かなくなる。


「え……えぇっ!?」

 

 呪い? 実は怪我してた? クレオールがおろおろと仲間を見回すと、誰も慌てていない。

 

 ミスティもダイキリも、仕方ないなぁという顔で荷物を下ろし始めていた。やはり荷物から敷布を取り出して、休憩の準備をしているマルガリータが教えてくれる。


「リーダー、燃費悪いのよ。燃費って言うか……こう、迷宮の外では眠れない反動みたいに、迷宮で怪物を斬った後はすぐ眠くなっちゃうの」


「睡眠に関して極端すぎない?」


「ね。そりゃあ、迷宮でしか生きられないとか、言い出しちゃうわよね。あ、リーダーが起きるまで移動しないから、適当にご飯でも食べてて。眠かったら寝てても良いわよ。誰かしらは起きてるから」


「う、うん……」

 

 それなら、まぁ、としか言いようが無い。クレオールは荷物から食べ掛けの携帯食料を取り出した。ミスティは、兜と、鎧の一部を外して横になっている。すぷー、すぷー、と寝息を立てて幸せそうだ。睫毛の長い美少女にしか見えないのは、もう諦める。

 

 ダイキリも始めは大人しく携帯食料をかじっていたけど、食べ終わってしまうと即座に飽きたらしい。


「リーダー! 先進もうぜリーダー!」とか何とか言いながらギムレットの足を蹴っ飛ばしていたかと思ったら、マルガリータに「メグ、茶よこせ、茶」とか言ってたかと思ったら、いつの間にかクレオールの横に座っている。


「お前も飲め。メグの茶。メグチャ」


「ありがと」

 

 冷えた指先を温めるように、両手でカップを持っていたら、「それで」とダイキリがじろじろとクレオールを見つめて来た。


「お前、何で迷宮の最深部に行きてーんだ?」


「ぐべ」

 

 遠慮ゼロな質問に、思わずせた。たたっ、とマルガリータが駆け寄って来て、ダイキリの頭を杖で小突く。


「ちょっとー! あんたはホントにデリカシーが無いんだから!」


「うっせー小姑こじゅうとめ! リーダーとミスティ寝てんだろ! おまえこそデリカシーゼロだな! むしろマイナスかよ!」


「ぐぅっ……!!」

 

 マルガリータは呻いて、そっと寝ている2人を振り返る。ギムレットは変わらず快眠のようだったけど、ミスティはむくっと起き上った。猫が顔を洗うみたいに、こしこしと手で顔を擦ってからこちらに寄って来る。


「ミスティも気になるもげ。何しに行くつもりか答えろもげげ」


「ちょ、ちょっとミスティ……」

 

 マルガリータは諌める様にミスティの腕を引っ張っているけど、青い瞳は興味津々という感じでクレオールに向けられている。そこまで期待されると困る。


「えーと……」

 

 がし、と頭を掻く。何で迷宮の最深部へ。何でってそりゃ。あぁそうか。言っていなかったっけ。誰にも言っていなかったかもしれない。クレオールの耳元で囁く誰かとだけ話して、こんなところまで来てしまった。生まれた故郷を離れて、暗くて寒い迷宮まで。

 

 明日になったら忘れていそうな、ほどよい好奇心だけを向けて来る3人の前で。意外と簡単に告げることが出来た。


「――死んだ、人を探していて。迷宮が冥界に繋がっているなら、きっといるから。探しに来たんだ」

 

 マルガリータとミスティが顔を見合わせる。ダイキリはへっ、と鼻を鳴らした。


「よくある話だな。お前の年だとアレか、親とか爺さんとかか?」


「よくあるんだ……」

 

 クレオールは肩を落とす。つくづく業が深い土地だ。そして、クレオールの悲劇はやはり、ありふれた悲劇でしかないわけだ。絶望するに値する特別な何かでは、決してない。


「……探してるのは、妹。俺の、双子の妹なんだ」


「ほー、そんじゃ、事故か病気か何か。若いなー。まぁオレらだって、今日死んだっておかしくはねーけどな!」

 

 ダイキリは清々しいくらい遠慮のないことを言って笑った。ミスティは、黙ったままでじっとクレオールを見ている。

 

 マルガリータは、ミスティとクレオールの顔を見比べてから、何処どこか居心地悪そうに、上目遣いに見上げてきた。


「っていうか……あの、その、クレオール。せっかく探しに来たのに残念って言うか……むしろ良い事かも知れないけど……迷宮を探したって見つからないんじゃないかしら。天上にいらっしゃるなら、冥界とは別ルートって言うか……そう、ミスティがさっき言ってた、狭い道、の方でしょう?」


「そう……かもしれない」

 

 クレオールは迷宮の天井を見上げた。迷宮はいつまでも薄暗い。ダイキリの傍に置いてあるランタンが、四方八方の壁にクレオール達の影を作りだす。4人で話しているのではなくて、真っ黒な十数人がゆらゆらとうごめきながら話している様な気がする。その中には、妹――クレアがいる。確信のように、そう思えた。


「だけど、いると思うんだ。妹はここにいる。だから、俺が何とかしないと」


「何とかってどうするつもりだぎゃ? 大神官だって、死者を蘇らせる事は出来ないよ」


「……会ってみないと、分からない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ