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転性剣士商売  作者: 明之 想
第一章
17/61

第十七話  ギルド





 食事中。もちろん、舌鼓打ちまくりの俺でしたけど、それは、まあ、色々と話もしましたよ。


 宿については、ライナスさん宅へ泊ればと誘われたんだけど、甘えてばかりはいられません。そこは断りました。なので、食後、知り合いが経営している良心的な宿に連れて行ってくれるそうです。宿泊費の値引き交渉もしてくれるとのこと。


 ありがたいなぁ。


 俺が次元袋に仕舞っている叡竜(えいりゅう)の牙と爪も、特に決めていないなら買い取ると言ってくれ、さらには通常の買取り値に少し上乗せもしてくれるそうで。

 ホント、何から何までお世話になりっぱなしだ。

 足を向けて寝れないなぁなんて思ってると。

 命の恩人に対して、これくらいは些少に過ぎるなんて。

 出来たお人だ。


 うん?

 それとも、俺が扱いやすい人間なのか?

 うーーん、まあ、どっちでもいいか。

 俺も得しているんだしね。

 得しているよね?


 などと考えている間に、宿に着き。チェックイン。もちろん値引き済み。

 牙と爪は、明日にでもライナスさんの店に持って行くからと、今日はここで別れました。


 ミュリエルさんは、なんだか名残惜しそうにしていたけど、ライナスさんの店に住み込みで働くことになったので、今夜から泊まり込むことに。


「ライナスさんの店の従業員として、頑張って下さいね」


 なんて言うと、たまらない表情をする。


「本当はハヤト様のお傍にお仕えしたいのですが・・・、駄目ですか?」


 ムリ、ムリ。

 駄目ですよ。


「そんなこと言うと、ライナスさんに悪いですよ」


「分かっております。ですが・・・」


 名残惜しそうな顔されると後ろ髪引かれますから。


「まあ、まあ、その話は済んだじゃないですか。とりあえず、今夜はここでお別れしましょう」


「・・・。はい、申し訳ありませんでした」


 よかった。納得してくれた。





 翌朝。

 いやぁ、ゆっくり眠れましたよ。

 宿のベッドの寝心地の良さったら。

 予想外の高品質。

 前世世界の俺のベッドを超えているかも。

 俺のベッドが安物だっただけかもしれないけどね。


 そんな快眠の後、朝食をいただいて、気持ち良く外へ出ると快晴。


 なんだか、いきなり縁起が良さそうな。

 レントが俺を歓迎してくれてるぜ、みたいな。


 ところで、この宿。

 ライナスさんが紹介してくれただけあって、良い宿です。ベッドはもちろん、部屋も小ぢんまりしているけど、使い勝手がいい。朝食も悪くないしね。

 それなのに、値段も良心的。

 1泊朝食付きで40セルク。夕食をつけると55セルク。前世換算で約5500円かな。


 値引きしてくれたとはいえ、安いよね。

 安くないのかな?

 そもそも、この町の物価を理解していないから何とも言えないのか。

 でも、・・・悪くないと思う。


 とにかく、そんな上機嫌で出発。

 今日の訓練はちょっと保留。

 まだ訓練する場所を見つけていないので、今日は夜にでも宿の裏庭でこっそりとやるつもり。


 これから、まずは町を散策して、冒険者ギルドには昼前頃に行く予定。その後で、ライナスさんの店に顔を出す。そんなスケジュールで行きましょう。


 昨日のレント到着は日も暮れる頃だったし、入城して夕食をとると、もう完全に夜。さすがに賑わっている町なので、夜でも街灯らしきものはあって、真暗闇という感じでもなかったんだけど、それでもじっくりと景色は楽しめなかったからね。


 異世界に来て、初めての大きな町。

 探訪が楽しみですよ。


 この町の情報は、昨夜の夕食時、ライナスさんに軽く聞いている。

 レントという町は、元々はマインツ帝国やチェシュメル王国の商人たちが交易の地として集っていたのが始まりだそうだ。最初は、この町の中心にある商売の神ネロを祀った神殿を中心とした狭い敷地に、テントを張って野営地らしきものを設営し交易をしていただけだったらしい。それが、今や堂々たる自治都市、大城塞都市へ成長したと。


 なので、この町はネロ神殿を中心として円状に整備された計画都市とも言える様相を呈している。神殿の周囲には、行政関連の建物、大商館、各種ギルド支部が立ち並び第一区と呼ばれているらしい。更に、その周りには各商業施設が並んでいて、これが第二区。住宅は第三区で、その外周りにあると。例外も当然あるが概ねこの通りだ。



 では、まずは中心部に向けて歩を進めましょう。

 俺がお世話になった宿は、第二区の外れにあったので、少々歩かなければ着かない。


 しかし、この町は思った以上に広いよなぁ。

 町全体を城壁で囲んでいるとしたら、一体どれくらいの長さの城壁なんだろう?

 それに、それを作り出した労力!

 想像もつかないな。

 前世世界なら、完全に世界遺産決定でしょ。


 考えながら歩いていると、目前に小さい堀が。

 第二区から第一区に行くには堀を超えるんだ。

 あぁ、そうか。

 この町の規模が小さかった時には、ここまでが町だったのかも。

 堀があって・・・、今は無いけど柵でもあったのかな?

 それで、外敵から守っていたというとこかな。


 そう考えると、この小さい堀にも歴史と風情が感じられる、そんな気がしないでもない・・・かな。


 さて、小堀を超えると中心区。

 おっ!

 さすがに立派な建物が多いなぁ。

 

 しかし不思議だ。

 この町、整然と整備されているのに、なぜか建物が・・・。

 多様性にあふれている。

 うーん、いい意味で文化交流の香りただよう町。

 悪く言うと、・・・雑多な雰囲気だよね。


 こちらには、ドーム型建造物。前世で言うなら、バロック風かな。

 あちらには、大きな柱が連立されている建物が。ギリシャ建築かよ。

 他にも、巨大なアーチがあったり、もう色々。

 俺も建築に詳しくないから良く解らないけど、なんか面白い。


 そして、多分あれがネロ神殿。

 随分と手前から、神殿の頂上部らしきものは見えている。

 天に突き立つように細く長く伸びた尖塔。まるでゴシックの尖塔。

 凄いんじゃないか。


 全体像が見えてきたぞ。

 おぉー!!

 これは壮観だなぁ。

 ここに来るまでも、素晴らしい建築物を見て来たけど、これはやっぱり別格。

 さすが、商売の神ネロを祀る神殿だ。

 厳かで神聖な雰囲気が漂う、まさに神殿!!

 これは一見の価値ありだね。

 ノートルダムの大聖堂にも負けてないかも。



 そんな感じで、一通り第一区を散策して。


 そろそろいい時間だな。

 ギルドに行きましょうか。

 場所はライナスさんに聞いてるし、さっきも前を通ったから迷うことも無い。





 冒険者ギルド レント支部。


 俺の自動翻訳では、そう読める。

 ところで、自動翻訳。

 聞く話す読むは問題無いのだけど、書くのが上手くいかない。

 俺の字は、幼稚園児並み。

 練習が必要だな。



 さて、ギルドへいざ突入。


 入ってすぐに受付へと。

 案外迷わず行けるもので、すんなり受付へ。


 受付のお姉さん、エルフですね。この方もなかなかの美人。OL美人的な。

 ホント、エルフって美人ばかりだなぁ。


 そのお姉さんに、まずはケヘルさんからの推薦状を渡すと。


「しばらくお待ちください」


 そう言い残して、奥へ入って行かれましたよ。

 手持無沙汰に周りを見てみると・・・。

 皆さん冒険者なのかな?

 ごつい身体に防具と武器を装備した方の多いこと。

 いかにも荒事はお任せって感じ。


 それに比べて、俺の軽装。

 防具も付けず武器も持たず、袋を腰に下げているだけ。

 といっても、袋は次元袋で、中には色々と入ってるんですけどね。


 外見的には浮いてるよなぁ。

 軽装だし。

 14歳だし・・・。

 まあ、冒険者だとは思われていないだろうけどね。

 もちろん、まだ冒険者じゃないけどさ。

 なんて思っているところに。


「こちらにおいで下さい」


 そう言って、奥にある部屋へと案内され。


「支部長がお話されるとのことです。お入り下さい」


 いきなり、トップからの面談!?

 ケヘルさん、何書いてたんだ?

 躊躇する俺に。


「どうぞ」


 営業スマイル・・・。

 しかし、慇懃な方だなぁ。

 14歳の若造への対応とは思えない。

 

 では、入りますか。


「失礼します」


 入ってみると、応接室兼執務室のような部屋だった。

 まず目に入るのは来客用の大きなソファー。また一隅には、大きなデスクに山積みされた書類。その奥には資料を収めているのだろう大きな書棚。

 多忙中という言葉が似合いそうな部屋だなぁ。


「座りなさい」


 ソファーに座っていた方に声をかけられる。

 支部長かな?

 50歳くらいの精悍な男性だ。

 人間種だよね。


「はい」


 社長面談みたいだなぁ。

 ちょっと緊張。


「手紙は読ませてもらった」


 うん?

 機嫌悪い?

 それとも、元々こんな顔つきなの。


「冒険者ギルドというものは15歳になって初めて入会できる。それは知っておるな?」


「はい」


「その歳に満たない者でも、見習いとして仮入会できる特例は確かにある。だがな、それは余程の腕の持ち主と認められた者だけだ」


「はあ・・・」


「お前はその特例か?」


 うーん、なんて答えたらいいんだ?

 強いです、なんて言えないしね。

 だいたい、ケヘルさん、推薦状にどんな推薦文を書いてくれたんだ?

 手紙を渡せば、すんなりじゃ無かったんかい。

 と悪態ついても仕方ないよね。

 ・・・まさか、圧迫面接?


「とは言っても、ケヘルの推薦だ。とりあえず、テストしてやる」


「テストですか?」


「そうだ。これに合格すれば、仮入会を認めてやろう」


「・・・分かりました」


 どんなテストだろ?


「明日は時間が空いてるか?」


「はい、問題ないです」


「では、明日の朝。ここに来い。そこでテストだ」


「あのぅ、よろしければテスト内容を教えてもらえないでしょうか?」


「ふん、簡単なテストだ。魔物を倒して来い。普通の冒険者なら一人で楽に倒せる魔物を選んでやる」


 よかったぁ。

 筆記テストとか言われたら、どうしようかと思った。

 知識テストなんてされたら、全く自信ないわ。

 まだまだ、この世界の常識に疎い俺。

 即不合格だ。

 危なかったぁ~、職に就けないところだったよ。


「命の心配はしなくていいぞ。同行者としてうちの冒険者を一人つけてやる」


 なかなか優しいですね。

 うん?

 それって採点官では?


「そいつが試験官だけどな」


 やっぱり。


「分りました。では明朝、また伺います」


「よし、話は終わりだ」


 追い出されてしまった。

 いやぁ、ホント忙しいんだろうね。

 それとも、セッカチさんかな。

 名前も教えてくれなかったし。


 まあ、でも、安心したよ。

 魔物退治なら、多分問題ないでしょ。

 自身過剰かな?

 いや、大丈夫だよね。


 一応、防具屋にでも行って、何か適当な装備買っておこうかな。

 武器は・・・、うん、要らないな。

 多分、ケヘルさんの短剣で間に合うよね。



 さて、その前にライナスさんの店に行かなきゃ。

 叡竜の牙と爪、いくらで売れるかな?

 結構強い魔物だし、この辺りで見かけることも少ないらしいから、高く売れるかも。

 そうすると、生活が楽になるんだけどねぇ。






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