評価
そのあとも2人は連れていく連れて行かないで平行線になった。元々ラブパレードは過酷な日程なので小さい子供は連れていけない。最近は3歳とか4歳になってから連れていって、それより小さい子供は留守番というのが定番だった。1週間、父にも母にも会えない幼児たちも大変なことになるので、父だけでも残るというのなら助かる点もある。
私がそれを進言することはなかったけど。お嬢様も愛人もそれが分かってないわけではない。承知なのだから私が何か言うのは余計なお世話というものだ。
結局、またあとで続きを話しましょうということになり、だんだん2人が盛り上がってきたので私はお嬢様の脱衣を手伝って別室に控えた。
相変わらず仲がいいな。
お嬢様が南西蛮族の少年と付き合うようになってからもう15年。どうせすぐ別れると思っていたのに予想を越えて長い付き合いになった。
といっても、実は最初の頃から彼が他の男とは違うと思っていた。
彼はレシレカシ魔法大学の関係者でも生徒でもなく、お嬢様の出身地であるギュキヒスの関係者でもなかった。だからお嬢様を肩書を知らずに知り合った珍しい男である。またお嬢様は付き合うまでに出会ってから1週間もかからないのが普通だったのに、彼とは2年間を研究仲間として過ごした。お嬢様と魔法や趣味の話も共有できる点でも珍しい男だった。
その上で絶倫でもある。
お嬢様は愛情とか恋慕とかそういう感情を理解できていない。今でも理解しているか怪しいと思う。なにか即物的な性欲を愛情と強く関連付けているというか、結局人間で信用できるのは性欲だけと思っている節がある。信じられるのは言葉より性欲、みたいな。
そしてお嬢様にお仕えして、若い頃からの恋愛を見ていると、そこに真実もあるような気がしてくる。
ひどい男は3日もするとお嬢様に飽きて雑に扱い始める。お嬢様も男の気を引こうと必死になるのだが、必死になればなるほど男がお嬢様に抱く性欲は下がっていき、それは結局愛情が冷めるのと同じなのだ。愛と性を分けて考えていた私だったが、お嬢様が自分の肉体を出し惜しみしないのと、それでも成り行きとしては出し惜しみした場合の普通の男女の駆け引きと過程が変わらないのを見ると、考えがいくらか変わらざるをえなかった。
そしてこの南西蛮族の少年はお嬢様に飽きることがなかった。1週間が過ぎた頃に、何日で別れるかという賭けにすらなった。しかしその賭けに勝った者は結局使用人の中にいなかった。2週間が過ぎ、4週間、3ヶ月……こいつはお嬢様を何回抱くつもりだと思っていた。遂に15年が経過し、今年の始めに丁度30人目の子供を作った。初めてその前の出産と性別が被り、続けて女の子だった。30人というのは冗談みたいな話だ。知らない人に話すと絶対に笑いが取れる。そしてお嬢様は年に2回の出産をやってみるといって次の三つ子を作ろうとしていた。
翌日、周囲に子供たちがいて騒がしい中ではあったけど、お嬢様がいなくなって蛮族の愛人と話す機会があった。
私は言った。「ラブパレードに子供を連れていかない話ですけど、私はその方がいいと思います」
彼は私を見て驚いていた。メイドたちは全員がうっすらと彼を嫌っている。だから会話を最小限にし、なるべく無視もするようにしていた。私の方から話し掛けるのは珍しいことなのだ。
彼はヘリャニキカノという去年生まれた女の子を抱っこした上で、その1つ上のブーリャヘギョーンという男の子と遊んでいた。それにしても子供の世話が上手な男である。「君もそう思う?」
「ええ。ギュキヒスやダドベの人間がどんどん嫌いになりました」私もそこ出身の人間だからこそ言えるジョークである。
彼は笑った。「けどお姉ちゃんは連れて行くって言ってるんだよなー」
「子供のためにはなりませんが、大したことがないというのも事実かと存じます」私を含め、ここの使用人はお嬢様に仕えているのであって、この愛人はご主人でもなんでもない。とはいえ、前述のように一定の敬意はあるし、お嬢様を幸せにした男として感謝がないわけでもなかった。
愛人は私の言葉をじっくりと噛み締め、「なるほど、分かった」とだけ言った。




