新たな力
1日の最大の楽しみである【ガチャ】タイム。
軽快なドラムロールが流れ地面に魔法陣が現れ銀色に光り魔法陣全体を覆った。
銀色の発光が終わると……、魔法陣の中に小さいトカゲがいた。
朱色をした可愛いトカゲの体長は10cmくらいで、昔、近所の池で捕まえたトカゲにソックリだ。
トカゲはくるくるその場で回転し、チロチロと青い舌を出して石床を這っている。
「随分小さいな……。今回は観賞用のペットでも出たのかな⁉︎」
ーーステイタスオン
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<ステイタス>
ランク SSR
ファイアリザード 牡
種族 ■■
名前
Lv 1
HP 30/30
MP 200/200
状態 健康
<スキル>
・【刺青化】
・【火炎放射】
・【火耐性】
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ランクは白虎と同じSSR。
その割にHPも低いしMPもそれ程高くない。
スキルは【刺青化】と【火炎放射】と【火耐性】の三つ。
ーー【火炎放射】と【火耐性】はわかるとして【刺青化】ってなんだ?
スキルの検証をする前に命名することにした。
「今日からお前はリザだ。よろしくな!」
相変わらず名前は適当につけた。
「了解した」
姿から想像できないほどダンディな声で答えるリザ。
「お前話すことできるのか⁉︎」
白虎以来の会話ができるガチャ産のモンスターに驚く。
「イエス、マスター」
百戦錬磨の戦士のように冷静だ。
ーーその割にステイタスは低く戦士とは程遠いけどね……。
話ができるなら丁度良かった。
「少しスキルについて聞くけど、この【刺青化】ってなんだ?」
「イエス、マスター。それは……」
リザは事細かに説明した。
話しを要約すると、
一つ、俺の所有物(モノでも人でも)を刺青にして身体に貼ることができる。
貼ったり剥がしたり、刺青化の解除はリザしかできない。
二つ、身体の部位によって刺青の貼れる数が決まっている。
ただし、同じモノであれば複数でも一つにカウントされる。
三つ、刺青化したモノのスキルを使うことができる。
貼った場所によってスキルを発動しないものある。
と言うことだ。
ーー聞いただけだとピンとこないな。試しに誰かにやってもらおうか。
「リザ、試しにビスをやってみてよ」
「イエス、マスター」
リザはビスに近づくと長い舌を伸ばしビスに触れる。
するとビスがシールのように薄っぺらになって床に落ちた。
刺青シールは劇画調の白黒の蜘蛛の絵が描かれている。
それを器用に尻尾で掴むと俺の右手の甲にペタリと貼った。
「これで完成ですマスター」
手の甲には蜘蛛の絵が見え、擦っても抓っても消えたりしないし取れもしない。
俺のステイタスを確認。
「マジでスキルが増えているぞ!これ【イタコ】の『融合』に近いな」
スキル欄には【魔糸】と【毒付与】と【毒耐性】が増えていた。
【毒牙】がスキル欄にないのはシールを貼った場所が手だからだろう。
「これってどうやってスキル使うんだ?」
「手の甲の場合は掌から手首まで間でスキルを使うことができます。例えば、手首から出す場合はその部位からスキルが出すことを想像し、標的に手を向けスキルを念じると出ます」
ーーよくわからんが思うだけで出るのだろう。
窓にある鉄格子に手を向けて【魔糸】を使ってみる。
『鉄格子に絡み付け!』
手首から糸が飛び出し鉄格子に絡みつく。
手首には糸が付いたままだ。
糸を引くとゴムのように伸縮性がある。
ーーこれは楽しいぞ!
次は鉄格子を斬るイメージで使う。
身体から何か抜けていく感覚と共に、手首から出た糸が鉄格子に絡み付くと俺は締め上げるように糸を引いた。すると鉄格子の棒が簡単に切断された。
ステイタスを再度確認するとMPが30減っていた。
ーー魔力の消費が激しいようだな。
「さすがマスター理解が早い。後はスキルを出す部位から20cm離して出すこともできます」
試しに手首から20cm先の場所からスキルを出すイメージを思い描いて糸を発射する。
今度は空中に魔法陣が現れそこから糸が鉄格子に向かって弾丸のように飛んで鉄格子にベッタリと絡みついた。
さきほどと違って俺の手首には糸が繋がっていない。
「このスキルは相当使えるな!次はアピリ小隊を頼む」
「複数体いますが全員【刺青化】しますか?」
「巣と蜂のセットは出来るのかな?」
「この場合は問題なくできるかと」
リザがホーネットの巣とアピを舌で触って確認してから答えた。
「じゃあ、巣と2匹を一つに、それとアピリと残りのアピをセットでやってくれ」
「了解したマスター」
巣の両側を守るように飛ぶ蜂の刺青シールとアピリを中心にアピ9匹が円を描くように配置された刺青シールができた。
リザは巣の刺青シールの大きさを自在に変え左上腕に貼り、アピリの刺青シールは背中につけた。
ステイタスには、スキル【誘導針矢】と【麻痺毒付与】が追加された。
「リザ、ノエルもできる?」
「妾もかの⁉︎」
そればかりは御免とばかりに首を振る。
「まあ、試してみたいこともあるから頼むよ。ノエル」
ノエルは魔人だが奴隷という立場なので俺の所有物となるだろう。
「しょうがないの〜。優しく扱うのじゃぞ」
ノエルは渋々言うと日陰に降りてきた。
リザはノエルに恐怖を覚えているのか恐る恐る舌を出す。
ノエルはいとも簡単に刺青シールに変わりヒラヒラと床に落ちた。
リザはシールを尻尾で掴むと器用に俺の身体を登り右の上腕に付ける。
ーーさて、ステイタスを見てみる。
ノエルのステイタスは【魅了】と【魅了耐性】と【ドレインタッチ】と【夜目】の四つあるが、俺のステイタスには【魅了耐性】しか追加されていない。
【ドレインタッチ】はタッチというだけあって手に付けないとダメなのだろう。
「スキルがあまり反映されないな。これはどうしようもないか……」
「マスター、頸に貼るとスキルが全身に反映されます」
リザはつぶらな黒い瞳で俺を見つめながら渋い声で語る。
ーー全身ってどういうことだ?
「リザ、頸に貼ってくれ」
「了解した」と言って頸にシールを貼り直した。
俺のステイタスには【魅了】と【魅了耐性】と【ドレインタッチ】と【夜目】が追加された。
「よし!いいぞ。スキルが使えるようになった」
「主人殿、それで試してみたいことは済んだのかの」
不意に頸から艶やかな声が聞こえた。
「あれ、刺青になっても話せるんだな。それと俺がやりたいことはまだ試していないからな」
「それで何を試すのじゃ?」
ノエルは俺の行動に不安があるのか、何か落ち着かない様子だ。
ーー刺青化で自身で動けないのがさらに不安にさせるのだろう。
俺は鉄格子の嵌った窓から漏れている陽の光へ向かって歩むと、頸に陽の光を当てる。
「妾を殺す気か主人殿!早くそこから出るのじゃ」
焦りのある感情を初めて見せたノエルが悲痛な声を上げた。
「ノエルどうだ?日光の影響はありそうか?」
「おかしいの……、なんともないの〜」
先程のノエルとは違い安堵感が伝わる。
「そうだろ。この刺青は俺の身体の一部になるみたいだから、日光の影響を受けないと思ったんだよ」
「それなら先に妾に言えば良かろう」
「先に言ったらつまらないだろう」
俺は悪巧みをする代官のような笑みを浮かべた。




