表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーンズメーカー ~荒野の豆鉄砲~  作者: 【若返った】コミカライズ配信中@シトラス=ライス
VolumeⅠゴールデンプロミス―ChapterⅣ:裏切りの廃墟
PR
14/132

ChapterⅣ:裏切りの廃墟 ①

【VolumeⅠ―ChapterⅣ:裏切りの廃墟】


「では行ってくるのです! お父さんお母さん! 弟たちを頼んだのです!」


 馬にまたがったジムさんは、

フレッドさんと奥さんへそう云った。


「気をつけるんでやすよ。お前はあくまで商売人。無茶なことはするんでねぇ」

「分かってるですよ。でも私はハイボール牧場の馬の売主としてワイルドのアフターケアとサポートサービスはしっかりするです!」

「それじゃあありがとうございました」


 立派な黒馬に跨った俺は、

フレッドさん達へ礼を言い、たずなを揺らした。

 馬は走り出しそれぞれ馬に乗った、

ローゼズ、アーリィ、ジムさんが続いてくる。


 ジムさんは馬の世話に不慣れな俺たちのことを知り、

暫く旅に同行してくれることとなった。

 最初は事情が事情なだけに断ったが、

それでも牧場を守ったことが相当感謝をしているらしく、

再度同行を打診されたのだから断りきれず、結局こうなったのだった。


 馬はあっという間にエプロ川の辺まで到達していた。

ハイボール牧場産出の名馬はエプロ川の水深や、

流れなど物ともせずに向こう岸まで渡ってゆく。


「アリたん牛乳飲みますか? 朝お父さんが持たせてくれたんで傷んじゃう前に無くしたいのです」

「あーすみません、あたし牛乳は苦手で……」

「ん!」

「ロゼたん飲むですか?」

「ん! ん!」

「はいです!」

「ぐび……ぐび……ぐび……」

「全部飲んじゃって良いですよ?」

「……んまぁーーーい!」

「いい飲みっぷりです♪ロゼたん牛乳好きですか?」

「ん! ん!」

「なるほどなるほど、だから……」

「ちょ、ジムさん!? なんですかその哀れむような目は!!」

「昔近所のおばあちゃんが言ってたです、牛乳飲まぬ者に胸なし! って。アリたん、好き嫌いをするからちっちゃいのですよ?」

「そ、そうなんですか!?」

「だって、ほら、ここに証拠あるです」

「んー? ふへ」

「わぁ~! ロゼたんの大きいし、柔らかくて、しかも良い張りがあるです!」

「……ふへ、くすぐった……んっ!」

「それに比べてアリたんは……」

「だからその哀れむような目はやめてくださいぃ!」


 俺の後ろではジムさんを中心に楽しそうに話していた。

しかし俺はそこに入れずにいた。

内容が内容ということもあるけど、

それ以上に、その中にローゼズがいるからだった。


 昨晩のローゼズとのやり取りが思い出される。

 不殺の誓の下にマッカランを追うローゼズと、

奴の命を狙う俺。

狙う目的は一緒だけど、結果への考え方がまるで違う。

 そこには深い溝のような、

高い壁のようなものが存在しているように思えて仕方がない


 昨日までは普通に話せていたのに、

今日は何故かローゼズと会話を交えたくない。

 俺の中にはそんな気持ちがあった。

 しかし当のローゼズは気にしていないのか、

平然としているようにみえる。

 だからこそ余計に会話をどうしたらよいか分からない俺は、

まっすぐ前を見て馬を進ませるしかなかった。


「ワッド?」


 気が付くと横には、

いつの間にか馬に跨ったアーリィがいた。


「なんだよ」

「どうかしたの?なんか今日、ちょっと様子が変だなって」

「なんでもない、心配すんな」

「そう?」

「ああ」

「……分かった」


 アーリィはそれ以上追求はせず口を噤む。

 俺とアーリィは並びながら無言で先を行く。

楽しい会話はないし、今の俺とアーリィの間には言葉一つも無い。

 でも、さっき一人で先へ進んでいた時よりも、

心が軽くなっている気がした。


――気心が知れた相手がこうして隣にいるだけで安心するものなんだ。


 そんな風に思い、

改めてアーリィの存在に感謝する俺が居た。

 長いエプロ川を渡り、

不毛のテラロッサの大地を進むと、

やがて朽ち果てた立て看板が目に入る。


【この先、スチルポット】


 そう辛うじて読み取れるほど、

看板の文字は陽の光の劣化により消えかかっていた。

 看板のところどころは崩れ、誰も手入れをせず、

時間の中で朽ち果ててゆく様が見て取れる。


【スチルポット】

数百年前の戦争戦没者墓地を管理する教会を中心に、

コーン採掘で繁栄していた比較的大きな町であった場所。

 しかし四年前、突然無法者に襲われ、町民は全滅。

街もまた廃墟になってしまったという。

そんな廃墟の街に奴は、マッカランは向かうと言っていた。


――家に火を放ち、お袋を殺した奴を絶対に許さない。奴は俺がこの手で殺す。必ず殺す!


 地平線の向こうより黒雲が流れて来て、

ゆっくりと俺たちの頭上を覆う。

 燦々とテラロッサを照りつけていた陽光は分厚い雲に覆われ、

周囲は薄闇に包まれる。

雲の中からまるで怪物の鳴き声のような雷の轟が沸き起こる。

空気は湿り、それは俺に豪雨の到来を肌で感じさせていた。

 そして、ようやくたどり着いた。

 俺たちは馬を降り、スチルポットの街へ踏み込む。


 スチルポットの地面はところどころが黒く煤けていた。

 殆どの建物は燃えてしまっていて、

炭になった骨組みが無造作に晒されていた。


「凄いところですね……」


 ジムさんはそう漏らした。

 その隣にいたローゼズは何故か目を細めていた。

真紅の瞳を刃物のように尖らせ、

氷のような視線で周囲を僅かばかり見渡している。


「どうかしたですか?」


ジムさんの問いにローゼズは答えず歩き続ける。


「うわっ!」


突然、銃撃音とアーリィの悲鳴が重なった。


「隠れるッ!」


 刹那、複数の銃撃が俺たちを襲った。

絶え間なく撃ち込まれる銃弾を避けつつ、

俺たちは命からがら近くの大きな壁のガレキへ身を隠す。

 すると、廃墟の至るところから不快な笑い声が湧いてきた。

 銃を携えた無法者、

欲のために銃を無差別に放つ、

ゴールデンプロミスの構成員が次々と姿を現す。

 数はハイボール牧場に攻めてきた数の倍、いやそれ以上だった。

そんな無法者達が突然、道を開けた。


 シースナイフを全身に取り付けた、

短い赤髪のタリスカー、そして……


「マッカランッ!」

「ワッド待って!」


 俺はアーリィの静止を振り切り飛び出すと、

銃を抜き、放った。

 銃口はまっすぐと仮面の紳士マッカランへ向き、

銃弾は一直線に奴へ突き進む。


「あは? 狙い良いねぇ! でも無駄だよぉ!」


 赤髪のナイフ使いタリスカーは規格外の速さで、

マッカランの前へ立ち塞がり、

俺の放った銃弾をナイフで真っ二つに切り裂いた。


「やはりあの洞窟で出会った少年でしたか。本当に生きていたのですね」


 マッカランは俺が突きつけている銃口など、

ものともせず懐から金貨が入った小袋を取り出した。


「正確な情報ありがとう。これは褒美です」


 そう云ってマッカランは隣にいた無法者へ、

金貨入りに袋を渡していた。


 今がチャンスだと思った俺は再度ハンマーをコックし、

引き金を引く。

シリンダーに装填されている鉛玉を全てマッカランへ向け放った。

 しかし全ての銃弾はタリスカーのナイフで弾かれてしまう。

マッカランはさも何事もなかったかのように

俺へ白塗りの仮面を向けてきた。


「しかし少年、私を追わなければ、生きていたと感づかれなかったものを」

「このぉ!」


 俺は拳を強く握り締め、勢い任せに地を蹴った。

しかし俺の前へ赤い影が立ち塞がる。

ローゼズだった。

 彼女は素早くビーンズメーカーを抜き、

マッカランへ突きつける。


「ローゼズ退け! マッカランは俺がるんだ!」

「ワッド、ダメ!」


 ガトリングガンを携えたアーリィが俺の腕を強く掴んでいた。


「離せ!」

「ダメ! ワッドに人殺しなんてさせない!」

「煩い! 黙れ!」

「黙らない!」

「少し冷静になるです! ワイルド!」


 ジムさんは俺の横でそう叫び、

ライフルを構えていた。


「おお……まさか君に再会できるとは思いもしませんでした! 久しぶりですね、【真紅の薔薇】!」


 マッカランは俺のことなど気にも留めず、

狂気じみた歓喜の声を上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ