第98話 新たな預言者? 天界から来た三人の魔術兵士
第98話 新たな預言者? 天界から来た三人の魔術兵士
◆◆◆パパが別荘にやってきた!
王宮で作戦の報告を受けたアレクは、すぐに別荘へ向かった。
戦いはまだ終わっていない。
船に残っている三人の上級魔術兵士について、天界の神々から知らせを受けたわけではなかったが、アレクは家族の安全を確かめたかった。
別荘に到着すると、エレナが出迎えた。
「陛下、お疲れさまでございます」
「エレナ、リリアとアリアは元気か?」
「はい。二人とも仲良く遊んでおりますよ」
その言葉を聞いて、アレクはほっとした。
そして、リリアのいる部屋へ向かった。
「リリア!」
「ぱぱぁーーーっ!」
大好きなパパの姿を見つけたリリアは、満面の笑顔で両手を広げた。
アレクはすぐに娘を抱き上げた。
「リリア、いい子にしていたか?」
「ぱぱぁ! だいしゅきぃ!」
「ははは! パパもリリアが大好きだぞ」
リリアはアレクの首にぎゅっと抱きついた。
その隣では、アリアも嬉しそうに手を伸ばしていた。
「ぱぱぁ!」
「アリアも元気そうだな」
アレクはアリアの頭も優しくなでた。
「ままね、リリちゃんとあしょんでたの!」
「そうか。二人で仲良く遊んでいたんだな」
アレクは二人の様子を見て、ようやく肩の力を抜いた。
戦争のことも、敵のことも知らず、リリアとアリアはいつもどおり笑っている。
その姿を見て、アレクは心から安堵した。
「今は、こうして二人が笑っていてくれるだけでいい」
エレナも穏やかに微笑んだ。
その日の食事は、家族そろって楽しむことになった。
◆◆◆四匹の秘密会議
一方、部屋の隅にいるポポ、ピピ、リュリュ、ノクスは、アレクが来ても警戒を解いていなかった。
人間たちの目には、三つのぬいぐるみと一匹の黒猫にしか見えない。
けれど、四匹は神々から戦争の状況を聞かされている。
船に残っているザルヴェイン、バルゼルド、クロウ。
あの三人が動き出せば、王国は再び危険にさらされる。
「どうするのだ……。アレク陛下に知らせないといけないのだ」
ポポが小さな声で言った。
「でも、リリちゃんに戦争のことを知られたら困るよねぇ」
ピピも心配そうに答えた。
「リリアが気づかないように、陛下に知らせる方法を考えないといけないね」
リュリュが考え込む。
ノクスはしっぽを揺らしながら言った。
「魔術兵士として天界から三人が送られたのだから、その者たちが陛下に伝えればよいのではないか?」
「でも、それでは手遅れになるかもしれないのだ!」
リュリュが首をかしげた。
「確かに、敵がすぐに動く可能性もあるねぇ」
すると、ポポが自信満々に言った。
「リリアが言えばいいのだよ! 預言者になって!」
「……ポポ」
ノクスがじろりと見た。
「お前は、なんにも分かっていないな。リリア様に知られたら困るから、みんなで悩んでいるんだろう?」
「分かってるよ!」
ポポは胸を張った。
「今のは、ぎゃく! おもしろくしただけだよ!」
「ギャクって……」
ピピが呆れたように言った。
リュリュとノクスは、そろって大きなため息をついた。
◆◆◆ノクスの名案
少し考え込んでいたノクスが、ふいに口を開いた。
「……私が新たな預言者として、アレク陛下に伝えてやってもよいぞ」
三匹は一斉にノクスを見た。
「それしかないか!」
「うん、ノクスお願いねぇ!」
「いい考えだと思うよ!」
三匹はあっさりとうなずいた。
ノクスは少しだけ目を細めた。
「お前ら……それだけか?」
小さな声で、ぼそっとつぶやく。
「良いアイデアだとか、褒めるとか、何かないのかよ……」
しかし、その声をポポは聞き逃さなかった。
「ノクス、褒めてほしいのか?」
「べ、別にそういうわけではない!」
ポポはノクスのそばに近づいた。
「よし、えらい、えらい!」
ぽんぽんと頭をなでる。
「やめろ! 子ども扱いするな!」
ノクスはそう言いながらも、逃げようとはしなかった。
むしろ、しっぽはぴんと立っている。
ピピはそれを見て、くすくす笑った。
「ノクス、うれしそうだよぉ」
「うるさい!」
四匹は小さく笑い合った。
そのころ、アレクたちは家族で食事を楽しんでいた。
四匹は人間たちに気づかれないよう、食事の間にノクスを新たな預言者として送り出す方法を決めた。
ノクスは、今夜のうちにアレクへ警告を届けるつもりだった。
◆◆◆宮殿に現れた三人
そのころ、宮殿の正門付近。
天界から降りてきたエリシア、ルシェル、セラフィの三人は、人間の姿で宮殿へ到着していた。
三人は魔術兵士として王国に加わるため、まずは宮殿の中へ入ろうとした。
ところが、門を守っていた兵士たちが三人を見て、警戒した。
「おい、待て! お前たちは誰だ?」
「見慣れない顔だな。所属と名前を答えろ!」
三人は立ち止まった。
エリシアは、二人に小さく目配せをした。
「どうやら、簡単には通してもらえないようですね」
ルシェルが静かに答える。
「仕方ありません。神々から授かった方法を使いましょう」
セラフィもうなずいた。
三人は兵士たちに気づかれないよう、そっと魔力を放った。
その魔法は、兵士たちの記憶に働きかけるものだった。
三人が以前から王国の魔術兵士として所属し、任務についていたという記憶を、自然に植え付けたのだ。
兵士たちは一瞬、ぼんやりとした表情になった。
そして――。
「あれ?」
一人の兵士が首をかしげた。
「さっきのは……何だったんだ?」
隣の兵士が笑った。
「団長、飲みすぎじゃありませんか?」
「そうかもしれんな! ははは!」
兵士たちは、三人のことを疑う様子もなくなっていた。
◆◆◆魔術兵士として迎えられる三人
兵士の一人が、三人に向かって声をかけた。
「そうか、君たちか。警備ご苦労だな!」
「ありがとうございます」
エリシアが丁寧に頭を下げた。
「今日はもう警備を交代してもらって構わない。お前たちも仲間と一緒に食事をして、ゆっくり休め」
「承知いたしました」
三人はそろって敬礼した。
兵士たちに見送られながら、宮殿の中へ入っていく。
そのまま魔術兵士たちが集まる食堂へ向かった。
「これで、無事に宮殿へ入ることができましたね」
エリシアが小声で言った。
「ええ。ですが、まだ任務は始まったばかりです」
ルシェルは真剣な表情で答えた。
セラフィも周囲を見渡した。
「まずは、王国の状況を把握しましょう。敵の三人がどれほどの力を持っているのかも確認しなければなりません」
三人は気を引き締めた。
◆◆◆新たな守護者たち
食堂に入ると、そこには勝利を祝う魔術兵士たちの姿があった。
温かい料理を食べ、仲間たちと笑い合っている。
三人は少し離れた席に座った。
エリシアは、食堂の様子を見ながら静かに言った。
「この人たちも、王国を守るために必死に戦ってきたのですね」
「そうだな。だからこそ、これ以上犠牲を出すわけにはいかない」
ルシェルが答えた。
セラフィは、二人の顔を見つめた。
「私たちも力を合わせましょう。邪悪な魔術から、この国の人々を守るために」
三人はうなずき合った。
そのころ、天界ではゼノたちが水晶の鏡を見つめていた。
「三人は無事に宮殿へ入ったようじゃな」
「これで、少しは安心できるかしら」
フィオナがほっとしたように言った。
しかし、ゼノはまだ険しい表情を崩さなかった。
「いや、油断はできぬ。ザルヴェインたちがいつ動き出すか分からぬからな」
一方、別荘ではリリアがアレクと一緒に食事を楽しんでいた。
「ぱぱぁ、これ、おいちいねぇ!」
「そうか。リリアが気に入ったなら、もっと食べるといい」
「たべりゅ!」
リリアは嬉しそうに笑った。
アリアも隣で楽しそうに食べている。
「アリアも、おいちい!」
「そうか、よかったな」
家族の笑顔が広がる別荘。
その平和な時間の裏側で、ノクスはアレクに警告を届ける機会をうかがっていた。
そして宮殿には、天界から三人の守護者が到着した。
王国をめぐる戦いは、まだ終わっていない。




