第94話 夜空に現れた幻影王都! 始まる封魔禁呪の作戦
第94話 夜空に現れた幻影王都! 始まる封魔禁呪の作戦
◆◆◆敵に知られないための準備
セレスティア帝国の王宮。
夜が訪れ、町の明かりが少しずつ消えていった。
そのころ、三人の魔術兵士は、敵国に気づかれないよう慎重に作戦の準備を進めていた。
今回の作戦で重要なのは、幻影都市を作り出すことだけではない。
本物の町や宮殿を敵の目から隠し、同時に偽りの町と宮殿を出現させなければならないのだ。
魔術団長が三人に念を押した。
「いいか。魔術を発動するタイミングが少しでもずれれば、敵に気づかれる可能性がある」
ガルとセレスは真剣な表情でうなずいた。
「まず、ガルが本物の町や城を隠す。その瞬間に、セレスが幻影都市を作り出すのだ」
「分かりました」
「私も準備はできています」
魔術団長は二人を見つめた。
「一度失敗すれば、敵に作戦を知られてしまう。くれぐれも慎重にな」
「承知しました!」
◆◆◆夜の魔術作戦
深夜。
敵軍から見えない場所で、ガルとセレスは魔術を発動する位置についた。
ガルは両手を広げ、静かに目を閉じた。
彼が使うのは、神秘の帳の術。
町や宮殿を透明にし、建物から漏れる光や人々の気配までも隠す高度な魔術だった。
ガルは深く息を吸い、呪文を唱え始めた。
「天空に輝く星たちよ、月の光を静かにおろせ、神秘の帳よ、大地を包み、町も城も、その姿を秘めよ。侵す者には真実見せず、守るものには安らぎを与えよ。神秘の帳ー!」
その瞬間、ガルの足元から淡い光が広がった。
光は地面を伝い、町の建物へ、宮殿へ、城壁へと広がっていく。
やがて、建物の輪郭が少しずつ薄くなり始めた。
同時に、町から漏れていた明かりも、外へ伝わらなくなっていく。
本物の王都が、夜の闇の中へ溶け込むように姿を消し始めた。
◆◆◆セレスの幻影都市魔術
ガルの魔術が広がるのと同時に、セレスも両手を掲げた。
彼女の周囲には、無数の光の粒が集まり始めていた。
「今よ……!」
セレスは、ガルの魔術に合わせて呪文を唱えた。
「風よ運べ、光を描け、大地に広がる夢幻の都よ、わが魔力に応え、その姿を現せ、偽りの町、城よ……敵を招き入れよ! 幻影王都、発動せよ!」
ゴオオオオッ!
セレスの魔力が一気に広がった。
光の粒は空へ舞い上がり、町並みや城壁、宮殿の形を描き始める。
やがて、そこには本物と見分けがつかないほど精巧な都市が現れた。
本物の町と宮殿は、完全に透明になって見えなくなっている。
そして、その場所には偽りの町と宮殿が、まるで以前からそこに存在していたかのように姿を現していた。
作戦は成功したのだ。
敵軍から見れば、何も変わっていない。
そこにあるのは、いつもと同じセレスティア帝国の王都だった。
◆◆◆二人の魔術は成功した!
魔術を終えたセレスは、息を整えながら周囲を見渡した。
「成功した……! 良かった!」
彼女はガルの方を振り返った。
「ガルはどうなの? 神秘の帳は成功したの?」
ガルは余裕の笑みを浮かべた。
「ははっ、俺に失敗なんかないさ」
「本当に?」
「ああ。町も宮殿も、外からは見えなくなっている。光も気配も隠せたぞ」
セレスはほっと胸をなで下ろした。
「そう。よかったわ。これで、あとはアルセリアに任せるだけね」
ガルはうなずいた。
「ああ。最後の仕上げだ」
二人は、少し離れた場所に立っているアルセリアへ視線を向けた。
◆◆◆アルセリアの出番
アルセリアは、二人が作り出した幻影王都を見つめていた。
「見事ね。これなら敵も、本物の王都だと思うでしょう」
セレスが声をかけた。
「アルセリア、任せたわよ!」
ガルも続けた。
「頼んだぞ。ここからが一番重要だからな」
アルセリアは、にっこりと笑った。
「任して!」
そして、ゆっくりと両手を広げた。
彼女の周囲に、青白い魔力が集まり始める。
「さあ、来なさい。私がすべてを封じてあげるから」
アルセリアの目が鋭く光った。
封魔禁呪。
それは、敵の魔力を封じ込め、魔術を使えなくするための禁じられた術。
しかし、相手は強大な邪悪な魔術を操るヴェルザーク帝国の魔術兵士たちだ。
果たして、アルセリアの力は通用するのだろうか。
◆◆◆天界の神々の胸騒ぎ
そのころ、天界では――。
ゼノたちが水晶の鏡を見つめていた。
「どうやら、幻影王都はうまくいったようじゃな」
ゼノは少し安心したように言った。
アテナも、セレスとガルの魔術を確認していた。
「二人の連携は見事だったわ。本物の王都を隠しながら、幻影を作り出すことに成功したようね」
「これで敵を誘導できる可能性が出てきた」
オルフェもそう言った。
しかし、ゼノの表情は晴れなかった。
「だが……まだまだ不安じゃ」
フィオナが心配そうに尋ねた。
「封魔禁呪が、敵の邪悪な魔術に通用するかどうかね」
「ああ。相手の力がどれほど強いのか、まだ分からぬ。わしには、どうにも嫌な胸騒ぎがするのじゃ」
神々は、再び水晶の鏡を見つめた。
アルセリアの魔術が成功することを願いながら。
◆◆◆クリスマスの夢を見るリリア
一方、別荘では――。
リリアが、ふかふかの布団の中ですやすやと眠っていた。
「すぅ……すぅ……」
昼間はアリア王女と雪遊びを楽しみ、雪だるまや絵画にいたずらをして、たくさん笑ったリリア。
今は、幸せそうな寝顔を浮かべている。
夢の中では、大きなクリスマスツリーがきらきらと輝いていた。
その下には、たくさんのお菓子や果物、甘いケーキが並んでいる。
「おやちゅ、いっぱいなのぉ……!」
リリアは夢の中でも、うれしそうに手を伸ばしていた。
首元のペンダントは、静かに光を放っている。
けれど、リリアはまったく気づかない。
今夜は、楽しいクリスマスの夢を見ながら、安心して眠っていた。
そのころ、セレスティア帝国では、アルセリアが封魔禁呪を発動しようとしていた。
幻影王都の作戦は、いよいよ最後の段階を迎えていた。




