第93話 見つかった希望! 幻影王都を作る三人の魔術兵士
第93話 見つかった希望! 幻影王都を作る三人の魔術兵士
◆◆◆魔術兵士たちの能力調査
セレスティア帝国の王宮。
アレクから命令を受けた魔術団長は、すぐに魔術兵士たちの能力調査を開始した。
「幻影王都を作り出せる者と、封魔禁呪を使える者を探す。全員の得意な魔術を確認するのだ!」
「はっ!」
魔術団長の指示で、魔術兵士たちは一人ずつ能力を調べられていった。
幻影魔術に優れた者はいるか。
封印魔術を扱える者はいるか。
そして、禁じられた術である封魔禁呪を使える者はいるのか。
調査は長時間に及んだ。
しかし、ついに三人の候補者が見つかった。
「団長! 該当する可能性のある魔術兵士が三名おります!」
「何? 本当か?」
魔術団長は報告書を受け取った。
そこには、三人の名前と得意な魔術が記されていた。
◆◆◆三人の魔術兵士
一人目は、女性魔術兵士のセレス。
彼女は幻影魔術を得意としており、広い範囲に精巧な幻影を作り出す能力を持っていた。
二人目は、ガル。
封印魔術を得意とする男性魔術兵士で、対象の魔力を封じ込める術に長けていた。
そして三人目は、女性魔術兵士のアルセリア。
彼女は非常に珍しい封魔禁呪を得意としていた。
魔術団長は報告書を読み終えると、すぐに立ち上がった。
「この三人を連れてくるのだ。今すぐに!」
「承知しました!」
しばらくして、三人の魔術兵士が魔術団長の前に呼び出された。
「突然呼び出してすまない。君たちに重要な任務を頼みたい」
セレスは真剣な表情で答えた。
「任務の内容をお聞かせください」
ガルも一歩前に出た。
「我々にできることなら、全力で協力いたします」
アルセリアも静かにうなずいた。
「私もお力になりたいと思います」
魔術団長は三人を見つめた。
「君たちの魔術が、この国を救う鍵になるかもしれない」
◆◆◆アレクへの報告
魔術団長は三人を連れ、アレクのもとへ向かった。
「陛下。お探しの魔術兵士が見つかりました」
「本当か!」
アレクはすぐに立ち上がった。
「こちらの三名です。幻影魔術を得意とするセレス、封印魔術を得意とするガル、そして封魔禁呪を得意とするアルセリアです」
アレクは三人の顔を順番に見た。
「君たちが、あの作戦を実行できる可能性があるのだな?」
セレスが答えた。
「幻影王都については、私の幻影魔術を使えば、作り出せる可能性があります。ただし、王都全体を再現するには、かなりの魔力が必要です」
ガルも続けた。
「私は封印魔術で、敵の魔力を閉じ込める準備をいたします」
アルセリアは、落ち着いた声で話した。
「最後に封魔禁呪を使い、敵の魔術を封じ込めます。ただし、相手の魔力が想定以上に強ければ、私の術だけで完全に封じられるかは分かりません」
アレクは三人の話を聞き、深くうなずいた。
「分かった。危険な任務になることは承知している。だが、今はこの作戦に望みを託すしかない」
そして、三人に命じた。
「セレス、ガル、アルセリア。君たちに幻影王都と封魔禁呪の作戦を実行してもらいたい」
「はっ!」
三人は力強く返事をした。
アレクは彼らを見送ったあと、窓の外に広がる黒い空を見上げた。
「どうか……この作戦が成功してくれ」
国を守るための、新たな作戦が動き始めた。
◆◆◆別荘のクリスマス
一方、そのころ別荘では――。
リリアとアリア王女が、雪の積もった庭で楽しそうに遊んでいた。
「ゆきしゃん、いっぱいなのぉ!」
リリアは小さな手で雪をすくい、空に向かって投げた。
「きゃははは!」
アリア王女も、リリアのまねをして雪を投げる。
「ゆき、ぽいっ!」
二人のそばには、ポポとピピのぬいぐるみ、そして黒い子猫のノクスがいた。
人間たちの目には、ポポとピピはただのぬいぐるみに見え、ノクスも普通の子猫にしか見えない。
けれど、誰も見ていないときには、四匹の仲間たちがリリアを見守っていた。
リリアは首元のペンダントが、時折小さく光を放っていることにも気づいていなかった。
今は、アリア王女と遊ぶことが何より楽しかったのだ。
「アーリャたん、こっちおいでぇ!」
「リリちゃーん!」
二人は雪の上を走り回った。
◆◆◆動く雪だるまのいたずら
しばらくすると、リリアは庭の隅に小さな雪だるまを作り始めた。
丸い雪を二つ重ねて、目と口をつける。
「できたぁ! ゆきだりゅましゃん!」
リリアは雪だるまを見つめると、こっそり小さな魔法をかけた。
ぽわんっ!
すると、雪だるまがゆっくりと動き始めた。
「うごいたぁ!」
リリアは口を大きく開けて笑った。
雪だるまは、ちょこちょこと庭を歩き出す。
リリアはそれを追いかけながら、何かを思いついたように目を輝かせた。
「いいこと、おもいついたぁ!」
リリアは雪だるまを連れて、別荘の中へ入っていった。
ちょうど召し使いが廊下の床をきれいに掃除していた。
「これで廊下のお掃除は終わりですね」
召し使いが道具を片づけようとした、そのときだった。
リリアは誰にも気づかれないように、雪だるまを廊下の隅に置いた。
そして、魔法を使って少しずつ雪を溶かした。
ぽたっ……ぽたぽたっ……。
雪だるまの体から水が流れ、きれいに磨かれた床がびちゃびちゃになっていく。
「……あれ?」
召し使いが振り返った瞬間――。
ツルッ!
「きゃあっ!」
召し使いは足を滑らせ、尻もちをついてしまった。
その様子を物陰から見ていたリリアは、両手で口を押さえた。
「きゃははは! すべっちゃったぁ!」
召し使いは床を見て、困ったように首をかしげた。
「いったい、どうしてこんなに濡れているのでしょう……?」
リリアは何も知らないふりをして、そっとその場を離れた。
◆◆◆動く絵画の秘密
リリアのいたずらは、それだけでは終わらなかった。
別荘の廊下には、昔の王族たちを描いた大きな絵画が飾られていた。
リリアはその前で立ち止まる。
「おじしゃん、いっぱい!」
絵の中には、立派な服を着た男性が描かれていた。
リリアは周囲に誰もいないことを確認すると、こっそり魔法をかけた。
すると――。
絵の中の男性が、ゆっくりと首を動かした。
さらに、描かれていた手が上がり、まるでリリアに手を振っているように動いた。
「……ふぇ?」
通りかかった召し使いが、絵を見て立ち止まった。
「えっ? 今、絵が動いたような……?」
召し使いが目をこすっている間に、絵は元の姿に戻っていた。
「気のせいでしょうか……」
その様子を少し離れた場所から見ていたリリアは、くすくす笑った。
「しーっ! ないちょ!」
リリアは人差し指を口に当て、いたずらが成功したことを喜んでいた。
7 楽しみなクリスマスパーティー
夕方になると、別荘の中はクリスマスの飾りつけで華やかになっていった。
大きなクリスマスツリーには、色とりどりの飾りがつけられ、部屋にはおいしそうな料理の香りが広がっていた。
リリアはツリーを見上げ、目を輝かせた。
「きらきらぁ! きれいなのぉ!」
アリア王女も、ツリーを指さした。
「ぴかぴかぁ!」
エレナが二人のそばにやってきた。
「今夜はクリスマスパーティーよ。おいしいお料理も、お菓子もたくさん用意しているわ」
「おやちゅもぉ?」
「もちろんよ」
「やったぁ! リリ、たのちみぃ!」
リリアは両手を上げて大喜びした。
今夜のクリスマスパーティーを、心から楽しみにしている。
首元のペンダントは、また小さく光を放った。
けれど、リリアは気づかない。
別荘の外では、世界を揺るがす戦いが続いている。
それでも今だけは、リリアとアリア王女に楽しいクリスマスを過ごさせてあげたい。
四匹の仲間たちは、そんな二人を静かに見守っていた。




